2026年より自転車の交通ルールが厳格化され、違反に対しては罰金が科されるということで、最近は今まで以上に運転に気を遣うようになった。交番の前などを通過する時は、特に理由もなく緊張してしまうのだが……。

つい先日の話。自転車に乗って信号待ちをしていたところ、おそらく人生初の経験をすることに。なんと、バイクに乗った警官が背後から声をかけてきたのだ。その時、私(あひるねこ)は思った。終わったと──。

・警官とエンカウント

あれは夕方5時半ごろだったか。いつも通る道を自転車で走っていると、白いバイクに乗った警察官が目に入った。といっても、『こち亀』の本田が乗っているような大型の白バイではない。


「警ら用原付」とか「警ら用スクーター」と呼ばれる小型バイクだ。白バイのようにスピード違反を取り締まるものではなく、主に地域のパトロールや移動に使われるらしい。


とはいえ、どんなバイクでも警察は警察である。何も悪いことはしていないが、とりあえず私は背筋をピンと伸ばしてお行儀よくペダルを漕いだ。この気持ち、わかる人にはわかるはず。


ところがここで、予想外のことが起きた。バイクが私のあとをついてくるのだ。マジかよ、こっちくんな……! おそらく進行方向が同じなだけだと思うが、それでも背中に強力なプレッシャーを感じずにはいられない。


おまけに赤信号に捕まってしまった。

・気まずい

いつも以上に慎重に停止線の手前で止まった私は、自分の斜め後ろに警察のバイクの気配をビリビリと感じ取っていた。何だろう、すごく見られている気がする。いや、気のせい……のはず。そう思った次の瞬間だった。


「エライねぇ……」


・戸愚呂弟のトーン

なななんと! 警察官の男性、まさかの声かけである!!

この時、赤信号で停まっていたのは私とその警官だけ。つまりこの「エライねぇ」は、どう考えても私に向けられた言葉……なのだが、それにしても「エライねぇ」とは? あまりに唐突なフレーズではないか。



・やっちまった?

もしかすると私は、知らないうちに重大なルール違反をしてしまったのかもしれない。で、それに対する嫌味や皮肉的な意味を込めた「エライねぇ」だとしたら……? うわー、こういう先生いたわー。教習所の教官とかにもいたわー。


とはいえ、警官にいきなりそんなことを言われたら普通にビビる。とりあえず謝っておこうと振り返ると、そこにいたのは思っていたよりも何というか……一言で表すなら、50代くらいの気のよさそうなおっちゃんであった。


『こち亀』の両津と寺井(メガネの同僚)を足して2で割ったような雰囲気。と書いてどの程度伝わるかは疑問だが、おっちゃんはどのような意図で私に「エライねぇ」と言ったのか?


結論から言うと、どうやら私が乗っていた自転車を見て声をかけてきたらしい。理由はこうだ。



・「エライねぇ」の真相

実はこの時、私は子供を保育園に迎えに行く途中で、後ろにチャイルドシートを取り付けた電動自転車に乗っていた。その姿を見たおっちゃんはこう言ったのだ。


「エライねぇ……。子供のお迎え? 俺の時は、そんなのまったくしなかったよ! ガハハハハ!! いやぁ、すごいね! エライよ!!」


危なく「いやいや、全然そんなことねーですって。令和7年っすよ?」と返しそうになったが、別におっちゃんも悪気があったわけではなく、純粋に私を労ってくれているようだった。

・おそらく人生初

これまで40年近く生きてきて、警察官にあんなフランクに話しかけられたのは生まれて初めてかもしれない。というか、職質以外で向こうから声をかけてくることってあるんだな。なんだか本当に両さんのようであった。


ちなみに余談だが、おっちゃんと別れたすぐ先で、今度はガチの白バイ警官が横断歩道で一時停止しない車を狩るべく、鋭すぎる目つきで睨みをきかせていた。

同じバイクの警察官でも、纏っている強者オーラがおっちゃんとはあまりに違いすぎて、保育園に向かう道すがら、少しだけ笑ってしまったのだった。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.