2024年4月15日、ペヤングで有名なまるか食品から、「ペヤング 胡麻担たかちゃんやきそば」が新発売された。名前が表す通り、胡麻の風味が効いた担々麺をやきそばで再現した商品とのことである。価格は税別236円となっている。

「当然のように『たかちゃん』という謎の人物の愛称が差し込まれているが、知らないのは自分だけか?」と思った方もいるだろうが、まるか食品サイドを除く全人類が知らないので安心してほしい。何故なら「たかちゃん」は、このたび唐突に新登場したキャラクターだからだ。

パッケージにて堂々とポーズを取る、「たかちゃん」と書かれた名札を付けた人物がまさにそれである。以降より色々な意味で気になる本商品をレビューするとともに、このキャラクターについての謎をやや解き明かしたりもするのでお付き合い願いたい。


ペヤングと言えば、定番の「ソースやきそば」で人々から絶大な支持を得ている一方、常軌を逸した大盛りやきそば激辛やきそばを定期的に発売し、やきそばを使って人間を虐げることに快楽を覚えている節のあるブランドである。

ゆえに、ペヤングのパッケージに登場するキャラクターと言えば、大体が鬼のような形相をしたインド人や、鬼のような形相をした中国人、鬼のような形相をした鬼などであった。

そんなペヤングが、出し抜けに可愛らしい造形を用いたキャラクタービジネスを始めた。何の前触れもなく、「たかちゃん」は我々の前に姿を現した。



おそらくだが、ペヤングの公式Xアカウントにポストされた宣伝画像に「子どもも美味しく食べられる!」と書かれていることから、「胡麻担たかちゃんやきそば」は幅広い層への普及を目指した商品であり、「たかちゃん」はそのためのマスコットとして誕生したと考えられる。

しかし子どもはおろか大人でさえ、もっと言えば九分九厘の人間を振るい落とす商品を創造してきたペヤングが、何故急に「たかちゃん」路線を打ち出したのかはわからない。そして今さらマスコットを出されても、我々の魂に染みついたペヤングへの畏怖はそうそう拭えない。

とはいえ、ここで本当に「本商品が万人向けである」と確かめられれば、まだ手を取り合える可能性はある。そういうわけで実物を入手した筆者は、実食に移るべく調理を始めた。

通常通り、かやくを麺の上にあけて熱湯を注ぎ、湯切りしてから麺とソースを混ぜ合わせる。かぐわしいごまの香りが漂い、筆者の警戒はやや緩んだ。

恐れを振り切って麺をすすると、まもなく心に安堵が芽生えた。ほどよくピリリとした辛さと、濃すぎず薄すぎないコク深さを併せ持った豆板醤の風味が、豊かに口の中に広がり、まろやかに舌に染み渡る。汁なし担々麵のようでいて、やきそばらしいこんがり感も健在だ。

美味しい。2、3口食べる頃にはすっかり病みつきになり、ついつい麺に箸が吸い寄せられていた。むしろ少しでも箸が止まると、口の中にこのやきそばがいないことが寂しいくらいには虜になっていた。誰も涙を流すことがない、何とも穏当かつ魅力溢れる味わいである。

これならば間違いなく、子どもであっても差し支えなく食べられる。さすがのペヤングも、「たかちゃん」に釣られた子どもに大いなる恐怖を植え付けるような鬼畜の所業には走らなかったということだ。



何なら子どもだけでなく、辛さが苦手な大人でも食べやすい仕上がりだと言い切れる。つまり、要するに、万人向けである。純粋に「担々味のやきそば」というあまり見かけないジャンルの商品として、ひたすら完成度が高い。

そもそも何故その「担々やきそば」に「たかちゃん」がアサインされたのかは全くの謎なのだが、いや、それに限らず未だ数多く謎は残されているのだが、あえて追究することはしないでおこうと思う。その方が今後に楽しみを取っておけるからだ。

これからも「たかちゃん」は登場するのか、あるいは今回限りなのか。登場するなら別の味にも顔を出すのか、それとも担々味専属なのか。「たかちゃん」のプロフィールは紐解かれることがあるのか、一切不明なままなのか。何にせよ、今は座して待ちたいと思う。

かくして、まんまとペヤングの新たな一面を見せつけられた筆者は、いつしか「担々やきそば」と、そして「たかちゃん」に親近感を覚えていた。

「何やらこの記事のせいで『たかちゃん』のことが気になってきたのだが、こんな気持ちになっているのは自分だけか?」と思った方もいるだろうが、安心してほしい、あなたの感覚は正しい。是非とも今すぐに本商品を手に入れることをお勧めする。

参考リンク:まるか食品 公式サイトペヤングソースやきそば 公式Xアカウント
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.