大人気のラーメン屋『蒙古タンメン中本』。通りがかりに見る中本はいつも大行列だ。なぜそんなに人気なのか気になる。しかしながら、これまで避けてきたのは私(中澤)が辛いものが苦手だから

ココイチでも足して1辛。ニンニクの辛みでもお腹を壊すことがある。中本の赤さはもはや怖い。のだが、ラーメン屋のご飯メニューをレポートする連載『ラーメシ通信』に以下のようなリクエストが届いた。

・通(当社比)

「是非、ラーメシ通信で蒙古タンメン中本の蒙古丼と特製蒙古丼を取り上げて欲しいです! 蒙古マーボーは米にも合うし、特製には筍が入ってて食感がいいアクセントです」


──私じゃなくとも中本にビビる人は多いと思う。だが、そんな中本に行っているだけでなく、ご飯メニューの詳細まで熟知していることに “通” の匂い(←あくまで私から見た) を感じた。リクエストありがとうございます

ラーメシって店舗で密かに展開されているだけの場合も多いので、通っている人からの情報が一番ありがたい。さて置き、どうやら行くべき時が来たようだ。男にはやらなきゃいけない時がある。

・暗黙の了解

蒙古タンメン中本渋谷店に来たところ、平日11時でオープン30分だったけどすでに20人くらいの行列が。本当に大人気である。

その人気ゆえか、食券は店に入る前に購入する形。行列の前の人が買って帰ってきたら買いに行っていいと、列整理に来た店員さんが教えてくれた。そこで店内に入り券売機を見てみたところ、隅っこに確かに「蒙古丼(920円)」というボタンが。


ボタンにメニュー写真はなく「辛5」とだけ書かれている。怖い


・やれやれ

そこで特製蒙古丼も探したところ、券売機に特製蒙古丼はなかったのだが、かわりに「特製樺太丼(860円)」というものがあった。ただし……


辛8……!


やれやれ……


私は蒙古丼の食券を購入した──。


まあ、初めてですし? いきなり特製に行くのは順序的にどうかという話である。みんな習っただろ? 基本の公式をしっかり覚えてから応用しろと。面倒くさいからとすっ飛ばしたら後々取返しのつかないことになったりするのが人生なのだ。

そう、これは41年の人生で得た教訓なのである。? 別に辛8が怖いわけじゃねーし! 中本のことちゃんとしたいだけだし



・蒙古丼

というわけで、席に座ったら蒙古丼が出てきた。大きい丼に麻婆豆腐と肉野菜炒めが盛り盛りに乗っている。860円にしてこのガッツリ感はコスパの良さは感じられるのだが、う~む……


赤い。


今からでも入れる保険ありますか



・食べてみた結果

いや、見た目だけで判断するのは失礼だ。事実、辛いものが苦手な私でも、コクと旨みで思ったほど辛さを感じず食べる手が止まらないパターンもあるし。

辛5って言っても店による。ひょっとしたらそんなに辛さを感じないからもっと上があるのかもしれない。そこで思い切って麻婆豆腐部分を食べてみたところ……


辛ッ!!!!

麻婆豆腐でこの辛さなことある? 普通の麻婆豆腐は口の中がシビシビ涼しくなるような辛さだが、中本の麻婆豆腐は喉の奥までビリビリ貫通してくる。そこに辛さを感じる神経細胞あったんだ……。

味よりも人体の仕組みについて考えてしまうレベル。豆腐とか関係あらへんでコレ。麻婆豆腐以外が辛くなくて助かった。野菜炒めがオアシスに感じる


ただ、さすがに野菜炒めオアシスだけだと喉が渇いた。もはや無意識のうちに水をグッと飲んだところ、体に電撃が走った!

水、超ウメェェェエエエ!!


まさしく、砂漠に染み入るかのように喉を通り胃に落ちていくのが分かる。HPが回復するくらいウマイ。水ってこんなにウマかったんだ。

辛さと戦った後に水を飲む度、ウマさに軽く朦朧(もうろう)とする。その辛さと水のコントラストにサウナ的なサイクルを感じた。外気浴しているみたいである。

ここまで読んでいただければお分かりかと思うが、私はギリギリだった。もはや食事ではなく勝負。もうこれ以上は無理……そんなラインでなんとか食べ終わることができた。やはり見た目通りボリュームも凄い。

ひょっとしたら中本を訪れる人は、この辛さと水による身体的な覚醒感を求めているのかもしれない。辛さ自体は苦手な私ではあるが、体が覚醒するかのような感覚は悪くなかったからである。



・アビス

ただ、やはり辛5はめちゃくちゃ辛かった。今度来る時はもうちょっと辛さ控えめなのを食べよう。そう思いながら、店を出たところ店外に「辛さおさえめ一覧表」というものが貼られているのを発見した。

やっぱり辛さおさえめのメニューがあるのか。入店する前に見ておけば良かったな。そう思いながら、一覧表をよく見てみたところ……震えた


蒙古丼が……入っている……

あんなに苦しんだ敵が実は最弱だったと言うのか……? 私ごときではとてもじゃないがその辛さの底にはたどり着けない。一番深い階層には一体どんな住人たちが住まうのか。その貼り紙に中本の闇の深さを垣間見た気がした。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.