2024年4月3日より、ケンタッキーから数量限定商品「ごま油香るパリパリ旨塩チキン」が発売されている。過去に何度か登場している「旨塩チキン」が、このたび「ごま油」を引っさげて帰ってきた。

公式サイトによれば、「春らしい軽やかなパリパリ食感がやみつきになる」とのことである。フライドチキンの食感が春らしいというのは個人的にぎりぎりピンと来るか来ないかの瀬戸際だが、色々な意味で気になる本商品を以降よりレビューしていきたい。

筆者はいてもたってもいられずUber Eatsで注文したが、本商品の店頭における価格は単品330円となっている。またオリジナルチキンやサイドメニュー、ドリンクMがついてくる「食べ比べセット」は950円だ。

ちなみにUber Eatsの注文ページには「春空パリパリ」との文言が書かれており、ケンタッキー側の揺るぎない頑強な姿勢がうかがえる。本当にそこまで春らしいというのか。

ともあれさっそく実物のパッケージを開封してみると、その瞬間にかぐわしい香りがふわりと漂った。無論、ごま油のそれである。



いよいよたまらずかぶりつくと、衣が小気味よく音を立てて破れた。芳香と食感に出迎えられる中、その奥からやってくるのは塩気たっぷりのジューシーさだ。散りばめられた胡椒のスパイシーぶりもアクセントとして快い。

実に美味しい。美味しいのだが、春らしくはない。全くない。仮に食感が春らしいことを渋々受け入れるとしても、2、3口食べれば喉が渇くほどの塩味と、唇が濡れるほどの油の染み具合が春らしさを吹き飛ばす。紙で出来た檻が猛獣にとっては無意味なのと同じことだ。

風味は違えど、本商品はオリジナルチキンとほぼ同等に濃厚かつヘビーである。何故このようなことが起きてしまったのか。



思い返せば、ケンタッキーは今年のひな祭りにオリジナルチキン9ピースのみという覇気満点のセットを「ひな祭りバーレル」と称して売り出していたし、その後も「春の集まりを彩るパック」と称してチキンやクリスピー、ポテトなどの茶色一辺倒の商品群を売り出していた。

「ケンタッキーの春にまつわる季節感はかなり危うい」と考えれば、全ての辻褄が合う。実はそういう企業なのである。

とはいえ、ここで筆を置いてしまっては当レビューが「ケンタッキーの季節感アンチ記事」という甚だニッチなネガティブキャンペーンで終わってしまうため補足しておくと、筆者は「本商品はこれでよい」、いや、「これでこそよい」と考えている。

正直な話、オリジナルチキンを愛している身としてはケンタッキーの限定品を食べてもしっくりこないことが多かったのだが、今回はむしろ見事にツボにハマっている。



何故かと言えば、本商品がオリジナルチキンのような濃厚さと限定品ならではのスペシャルさを絶妙に両立しているからで、それら2つの要素のつなぎ役を果たしているのがパンチの効いた塩味と、そして今回新たに加わったごま油の存在だと言える。

つまるところ本商品は、食べ終わった時に春らしさは微塵もないという意味で「広告に微妙に偽りがある」ものの、しかし同時に、だからこそケンタッキーファンを惹きつけうる魅力を有しているのである。

「パリパリ食感が春らしい」というより、言わば「バリバリにケンタッキーらしい」一品を、この機会にぜひご賞味してみてはいかがだろうか。

参考リンク:日本KFCホールディングス 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.