都会と田舎には文化の「体験格差」があると思う。もちろん田舎でしか得られない貴重な体験もあるが、こと芸術やエンタメやグルメに関しては、地方で生まれ育つと選択肢が圧倒的に少ない。

都市部なら見飽きるほどあるのに、地方には展開していない飲食チェーンがまさにソレだ。

それはまるで「ハイジに出てくるヤギのチーズ」のように。あるいは「日曜学校で聞きかじったブドウ酒」のように。はたまた「ハリー・ポッターの好物、糖蜜パイ」のように。聞いたことはあるけど出会ったことのない食べ物として憧ればかり募るのである。

これは修学旅行で某市に出たときに、セブンイレブンのレシートを「お土産」として大事に持ち帰ったことのある田舎っぺの筆者が、最近初めて「串カツ田中」を訪ねたレポートである。


・初めての「串カツ田中」

大阪に「串カツ文化」があることはもちろん知っている。好みの串をオーダーするとその場で揚げてくれ、ソースに浸して食べるもので、そのソースが共用なので「二度づけ禁止」なのだと理解している。

いきなりカウンターの店に行くのはハードルが高いし、ここは東京だし……という事情から、かの有名な串カツチェーン「串カツ田中」を初訪問。いつか下町の頑固な大将の店に行くための予行演習だ。

店内はお酒を酌み交わす人々でにぎわっていたが、おひとりさまの筆者も快く通してくれた。

なんと、串カツ専門店だとばかり思っていたら、名物料理がいろいろあるのか! これは楽しい。お酒のあてだけでなく、しっかり食事もできる構成だ。

テーブルには「味変」ができる調味料が並ぶ。ソースが定番だと思うが、塩もいいね。



さっそく「お通し」が到着。見ての通りキャベツである。おかわりも可能。

筆者は知っている。このキャベツ、サラダ的なものではなくソースでバリバリ食べるのだろう? しかも串揚げにソースが足りないときには「スプーンの代わりにする」という重要な任務を担っているとか。


ところが。


ない。


こういう容器が。


後から運ばれてくるのかな? と思ったが一向にその気配はない。代わりに卓上にあるのはビン入りのソースだ。

こういうこと?


まさかこうではないだろうし……


なんとコロナ禍以降、ソース容器は撤去しているのだそう! ロケットニュースに衝撃の事実が書いてあった!!



そうこうしているうちに串カツが到着。初めてなので定番5本盛り(税込910円)にしてみた。

ひとつひとつが思っていたより大きい! 実は筆者、焼き鳥くらいのサイズ感でいたので、価格帯を見たときに「10本頼んだら2000円かぁ……ちょっと高いのでは?」と思っていた。これなら5本も食べれば腹一杯だな。

ソース缶がないので、皿にソースを出して食べてみる。合っているかどうかはわからない。

サクッ!


おおおぉぉぉ、これは家庭では出せない軽~~~い食感! 油っこさや重さがまったくなく、スナック菓子のような軽快さ。サックサクで、ソースも甘くて、最高に旨い!

どんどん行けるなぁ。串カツがメイン料理になるってこういうことか。

たぶんこれは使用済みの串入れ……? それともレシート立て???



続いて「肉吸い」が登場。これも大阪ではお馴染みの味だそうで「肉うどん、うどん抜き」という食べ物。二日酔いの芸人に人気だったことから、食べると売れっ子になれるというジンクスつき。ライティングも芸事のひとつと考えると、筆者も売れっ子に……?

しっかし、デカい! これで税込580円!!


注文前にはメイン料理に添えられる「お吸い物」くらいの碗をイメージしていた筆者。ところがどっこい、主役級に巨大などんぶりじゃないか。並々と注がれた出汁に、たっぷりの豆腐。これは何人かでシェアするのが正解では。

しかし味はどこまでも優しく、身体の芯から温まる。二日酔いでも食べられるようにという気遣いなんだな。とろろ昆布が入っているのがユニーク。



さらにテーブルに届いたのは、好奇心をそそられてオーダーした「手巻き串セット」(490円)! これもどんぶりメシィィィ!!

メインのおかず、ご飯物、汁物と完璧なバランスで定食風にオーダーしたつもりが、完っ全っに注文しすぎた。ほんのり焦りを感じてきたが、ここはともかくメニューの図解に従って巻いてみよう。

まずは海苔にご飯を載せる。


そして3種類のトッピングを好きなように載せる。紅ショウガ、たくあん、わさび漬けかな。


調味料をつけた串カツを載せて巻く。


巻く……


巻く……?


串カツが大きすぎて巻けない!

出来損ないのオープンサンドみたいになっているが、とにかく口に運ぶ。これも旨い!

それにしても巻くのが結構難しい。上からソースをかけたらドバッと出過ぎて洪水になってしまった。

しかし海苔のIPX8防水性能により裏面への浸水は免れたようだ。よしよし。

食べているうちに崩壊する海苔巻き(お見苦しくて申し訳ありません)

ドロドロとソースが垂れてきて、手は汚れるし具材は崩れるしでもうメチャクチャだが、とにかく楽しいし美味しい!

初対面の印象の通りボリュームもすごい。手巻きセットは10食相当で、海苔も10枚もついている。「この後スタッフで美味しくいただきました」と言いたいところだが、スタッフなんて存在しない。

ご飯も大量に余ったので、ただの海苔巻きにして食べた。それでも余った海苔はそのままかじったら、口中の水分が吸収されて窒息しそうになったため肉吸いに投入した。



完食! やばかった……。大量の白米に加え、肉吸いの豆腐の水分でお腹がタプタプだ。ご飯粒が茶碗に張りついてしまい、取りきれなくてごめんなさい。

ものすっっっごく満喫した! メニューには「ちりとり鍋」とか「自分で作る手作りたこ焼き」とか、まだまだ気になるご当地フードがたくさん。何度かリピートしなければ味わい尽くせない。

本場の味はチェーン店では出せないという声もあろうが、「串カツ田中」は名物料理からエッセンスを抜き出し、誰もが気軽に味わえるようにした大阪テーマパークだ! これはエンターテインメント!!

なお、セブンイレブンは今では筆者の地元にも大量進出し、レシートを後生大事に持ち帰るような奇行はしなくてよくなった。いつか「串カツ田中」もそうなる日を夢みている。


参考リンク:串カツ田中
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.