とんかつ定食を想像してみてほしい。皿の上には千切りキャベツと、5~6切れにカットされた揚げ立てのカツ。あなただったら、そのカツをどうやって食べるだろうか?

おそらくほとんどの人が、衣が舌側にくるように口に入れるはずだ。逆にそれ以外あるのか? って感じだが、つい先日、とんかつをよりおいしく食べる方法がネット上で話題になっていた。

なんでもとんかつは衣ではなく、肉の断面が舌側にくるように食べた方がウマいんだとか。本当だろうか……?

・各所で話題に

この食べ方は、伊集院光さんのラジオ番組『深夜の馬鹿力』の中で、ある有名なとんかつ店の店主から聞いた話として紹介され、番組に呼応する形でSNS上でも大きな話題になっていた。


真相を確かめるべく、実際にとんかつ定食を注文。ヒレカツよりもロースカツの方が今回の検証には相応しいと思われる。

カットされたカツをそのまま箸で持ち上げたら、角度を変えずにそのまま口の中へ。きっと多くの人が意識せず同じ食べ方をしているのではないか。この場合、舌に最初に触れるのは衣の部分になるワケだが……

・断面を舌に

話題になっている食べ方は、衣ではなく肉の断面が舌側にくるように口に入れるという。それに伴い、今回は調味料も衣ではなく肉の方につけてみた。


皿の中で2番目に小さいカツに狙いをつけ、塩をぱらぱらっと。ちなみにロースカツの作法は、私(あひるねこ)が愛読する漫画『食の軍師』第5話を参考にしている。特に第1巻は珠玉の名作なので機会があればぜひ。


さて、それではいただきます。

・明確な差

なるほど……38年間生きてきて、肉の断面を舌側にして食べるのはこれが初めてだが、たしかにハッキリと違うな。なんというか、衣を舌側にして食べるよりも、肉の存在がよりヴィヴィッドに感じられるのだ。



味覚は舌で感じるものだから当然といえば当然なのだが、衣ではなく、肉の旨みが真っ先にくるのは新鮮である。とんかつは揚げ物である以前に肉料理なんだということを改めて教えられているような気分だ。


今度はソースを断面にかけて食べてみる。塩と違って変化に気付きにくいかと思いきや、舌が最初に感知するのはソースではなく肉汁だった。その直後に衣やソースと混ざり合い、いつものとんかつの味になっていくというか。


比較のため、今まで通り衣が舌側にくるように食べてもみたが、当然この食べ方だと衣のインパクトがものすごく強い。主役はあくまで衣であり、肉は2番手という感じだ。まさかこんなに違いがあるとは……。

ただ、だからと言ってどちらの食べ方が優れているということはないと思う。それぞれにそれぞれの魅力がある。だってとんかつだもの。よって私が提案したいのは以下の食べ方だ。



・二刀流で

まず最初の一切れは、先述した通り2番目に小さいカツに塩をかけて食べる。その際、塩は断面にかけ、肉が舌側にくるように口に運ぶべし。ソースの解禁は2ターン目からだ。

以降も基本的には断面が舌に触れる食べ方で攻めていくが、両端の小さいカツに関しては別である。この部分は衣と脂身が多く肉が少ないため、あえて衣にソースを鬼がけして(お好みで辛子も)ジャンクに攻めるのがいいだろう。

あるいは初っ端でソースまみれにし、終盤まで寝かせて「漬け」にするというのも手だ。

上記のハイブリッド方式なら、断面を舌側にして肉を感じる食べ方と、従来のソースが染みた衣を味わう食べ方。その両方をいいとこ取りで楽しむことができるためオススメである。

こういうのは、肉が分厚いちょっとお高めの店じゃないと効果が分かりにくい……なんて思っていないだろうか? だが実際に試してみると、チェーン店の1000円以下のとんかつ定食でも十分に違いが分かるぞ。面白いのでぜひ試してみてほしい。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子
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