立ち食いそば屋のメニューに出会いを求めている人は少ないと思う。特に駅そばなんて「サッと食べられたらいい」と思って利用する人が大半ではないだろうか。なんなら、きつね、たぬき、月見、かき揚げがあれば十分。

だが先日、京急線の駅そばチェーン『えきめんや』を通りかかったところ、店頭に「さば天そば(税込650円)」のポスターが貼られていた。さば天とはなかなか攻めている。しかも、調味料は山椒らしい。珍しいがウマそうである。と、足を止めたところ隣にもう1つポスターが貼られていることに気づいた

・取り合わせ

ウマイそば屋を求めて色んな町を放浪する立ち食いそば放浪記。珍しいそばと言えば、印象に残っているのはポテトチップスそば丸ごとトマトそば屋久島そば辺りだろうか。さば天そばの隣に貼られたポスターのそばはそれらよりはシンプルだが、取り合わせ的に「大丈夫か?」と思わずにはいられなかった。その名も……


「豚キムチそば(税込660円)」である

ポスターによると、行列ができる川崎名物キムチ専門店『おつけもの慶』の王道白菜キムチを使用しているらしいが、そんなんええねん。不安なのは質じゃなく味のマッチングやねん。


・注文してみた

気になったので、逆に豚キムチそばを注文してしまった。

豚キムチ以外にも生卵とネギが入っている。つゆは濃い色の醤油系つゆで、券売機の上に掲げられていた文言によるとかつお出汁のようだ。はたして、このつゆとキムチは合うのか。食べてみたところ……? な、なんじゃこりゃあ

めちゃくちゃウマイ!! キムチの味が溶けたつゆを飲むと、酸っぱさやピリ辛さよりもまず甘みを感じる。その上でやって来るピリ辛が七味唐辛子みたいな役割を担っていて、関東つゆのコクにあつらえたようにマッチしていた。

キムチの酸味は白菜を食べた時に感じられるが、この微妙な酸味でまたそばが進む。つゆにおいてもそばにおいてもケミストリーが起こっていた。別々に食べるよりも完全にウマイ。なんなら米よりマッチしている可能性すらある。


それにしても、そばにぶち込んでも甘みまで感じられるとは良いキムチに違いない。間接的に『おつけもの慶』のキムチ力(ぢから)を分からされた。

・つゆのこだわり

なお、他の人の注文を聞いていると、『えきめんや』はうどんの場合、関東つゆか関西つゆかを選べる様子。うどんの場合だけ店員さんが確認を取っている。つゆへのこだわりが感じられるシステムだ。

思えば、単調さがないつゆは他のメニューのウマさまで想像できるレベルの高さがある。この豚キムチそばの味はそんな2つの実力がぶつかり合ったシナジーの結果かもしれない。

キムチってそばに合うんだなあ。小田急線の『箱根そば』、東急線の『しぶそば』、JRの『いろり庵きらく』『そばいち』と駅そばは数あれど、『えきめんや』はかなり良い駅そばと言えるだろう。

・今回紹介した店舗の情報

店名 えきめんや京急川崎店
住所 神奈川県川崎市川崎区砂子1丁目 京急川崎駅構内
営業時間 月~金6:00~21:45 / 土日祝6:00~20:00
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.