今私は、南島原市の提供でプレスツアーに来ている。今日の宿は、「原城温泉 真砂(まさご)」。

南島原と言えば天草四郎が島原・天草一揆で籠城した、世界遺産の原城跡が有名。この温泉宿は、原城跡の真横にある。昼間は私もその辺を取材していた。宿についたのは夜遅く。

・宿

トップの写真は翌朝に撮った部屋の様子。まあまあ、よくある感じだろう。窓からは穏やかな有明海がすぐそこに見える。


正面からは撮り忘れたのだが、海側から撮った建物外観はこう。THE 程よいという感じというのがお分かりいただけると思う。


ちなみに大浴場もオーシャンビューだ。宿泊者以外も入浴可能なタイプのもの。内部の様子は公式HPからご覧いただきたい。


どこを見ても様子のおかしいところなど無い、普通の温泉宿に見えるこちら。しかし、私が夜中に取材を終えて帰ってきた時の様子は、こんなものでは無かった。


・深夜

私は深夜に外で撮影などを試みる(悪天候で結局無理だったが)などして、誰よりも遅くまで労働に励んでいた。

午前1時を過ぎた辺りで、そろそろ風呂(温泉ではなく部屋の風呂)に入って寝ることに。その前に、喉が渇いたのでロビーの自販機で何か飲み物を買おう。


お? もう電気が消えて真っ暗やな。


いや、何か1か所だけ明かりが……




_人人人人人人人人人人人人人人_
> 邪神ちゃんドロップキック <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


・邪神

邪神ちゃんドロップキック』とは、「COMICメテオ」で連載されているユキヲ先生による漫画。TVアニメが3期も放送され、さらに2023年冬からは新作アニメも放送予定。

実は南島原市は ふるさと納税でファンから費用を募るというクレバーな手法で市側の負担をおさえつつ、「邪神ちゃんドロップキックX南島原編」というコラボ回を実現。

アニメ第3期『邪神ちゃんドロップキックX』の第8話にて、南島原を舞台としたストーリーが放送された。いわゆる聖地化による町おこしだ。

それにしてもこの温泉宿、深夜で他はすべて電気が消えているのに、邪神エリアだけは明かりを絶やさないとは。完全に邪神を祀る祭壇である。信仰が厚い。

天草四郎さん見てますか? あなたが多くのキリシタン(減税希望の地元農民なども)たちと共に散ったこの地には、400年を経て邪神信仰が根付きました。


・コラボ

これは偶然にも「原城温泉 真砂」にて9月16日から始まった、「邪神ちゃんドロップキックX」の展示会だったもよう。ずっとここにあるわけではないようだ。

コラボに際して作られたマンホールや、サイン入りのパネルなどが展示されている。


ちなみに件のアニメは私も見ていたがクッソ攻めた内容だった。主人公の邪神ちゃんが職人に延ばされ、茹でられて他のヒロインに食べられるという、アニメ版『キン肉マン』のラーメンマンvsブロッケンマン事件を彷彿とさせるシーンは、公式YouTubeで切り抜かれている。

アニメや漫画に馴染んだ若い層なら普通に笑って見過ごすところだろうが、これを市公認でやるのは(恐らく住民の大半であろう)高齢者層から、なかなか理解され辛いのではないか……みたいな、見てるこちらが心配してしまうほどのチキンレースぶり。

しかしコラボは1話のみで放送から1年以上経っているにもかかわらず、今でもSNSで「邪神ちゃん 南島原」で検索すると、聖地巡礼等の報告があがっている。結果を見るに、成功と言っていいだろう。

我々のツアーに帯同していた市の職員の方に「市があの内容(配信サービス等で見るといいだろう)でOK出したのスゴいっすね」と話しかけたら、現南島原市長について、若い職員の感性を信じて任せてくれる方針だからこそできた……というような趣旨のことを語っていた。

万が一やらかした時は、上が責任を取ってくれるらしい。まあ地方の観光PRは、とにかく面白いことやって目立ったところがスタートラインというのはある。

同じ長崎県内でも長崎市がゴリゴリに観光に強いなか、わりと辺境ぎみなのに何だかんだで年1で何かしら名前を見る南島原市というのは、相当に健闘していると思う。


・南島原

ということで、南島原の「原城温泉 真砂」。切り口として邪神ちゃんをこすらせて頂いたが、宿としてはしごく真っ当だ! 手ごろな価格に広い温泉付きで、周囲には南島原の観光スポット多数!

ただし、アクセスはけっこう微妙だ。基本的にレンタカーが欲しい。公共交通機関の場合、とりあえず諫早まで行き、そこからは電車かバスという感じだが、スーツケースを引きながらはしんどいと思う。

あるいは、熊本からというのもいいぞ。まとまった休みをとって熊本空港から阿蘇山を回り、市内で熊本城を見たら天草五橋をドライブして天草市へ。鬼池港からフェリーで南島原入りするのだ。帰りは島原港からフェリーで熊本の新港に渡って、熊本空港でフィニッシュというやつ。

ぐるりと熊本、天草、島原を一筆書きで回れるため、九州の南寄りに住んでいる人がこの辺を観光する際に使われるルートだ。回り方は逆でもいい。のんびりした場所なので、ゆとりを作って遊びに行ってはいかがだろう。

参考リンク:原城温泉 真砂邪神ちゃんドロップキック南島原市島原鉄道
執筆&写真:江川資具

▼南島原と言えばイルカウォッチング。実は南島原だけでなく、対岸の天草でも名物にしている。

ここにも邪神。

早崎海峡(天草と島原の間あたり)にはイルカが定住しており、だいたい同じ場所に群れがいる。

小学生の頃に熊本に住んでいた私は、この海域のイルカウォッチングが3回目か4回目くらい。南島原側からも天草側からも体験済みで、今のところ100%イルカを見ている。

悪天候や、謎の事態でイルカが消えたとかじゃない限り、超高確率で野生のイルカを見られるのがウリ。ぶっちゃけ、その辺の防波堤からも見えたりする。

これはイルカの近くにいたカツオドリ。魚が豊富なんだろう。


▼宿から一番近い観光スポット「原城跡」。

絶賛発掘調査中。今でもその辺には骨が埋まっているであろうとのこと。

一揆時に天草四郎の家があったとされる場所らしい。四郎最大の聖地。


▼取材したのがバチクソに満月&曇りだったのでアレだが、よく晴れた月の無い夜なら天の川などが見えるという瀬詰崎展望台

こういう展望台的なやつと、映えそうなハート型のオブジェがある。

昼間に海から見るとこう。


▼宿から車で10分ほど内陸方面に行くと、江戸時代末期に自然石で作られたアーチ型石橋がある。

周囲はこんな感じの景色。これはこれでいい。


▼橋から少し歩くと、地元民から人気な「花と喫茶 水と木」という、可愛いものの詰め合わせみたいなお店がある。インスタもある。


▼宿からは近くないが、邪神ちゃんにも出た「鮎帰りの滝」という景勝地もある。