この世の中には、星の数ほどの職業がある。だが我々は、それら職業をよくわかっていない。


自分の職業のことはわかっているつもりだが、他人(ひと)の職業については、イマイチよくわかっていないのだ。


ということで不定期連載『気になる職業インタビュー第2回目の職業は「Amazonの配達ドライバー」である。


答えてくれたのはEさん(50歳)で、仕事内容からお給料まで、かなり詳しく全貌を教えてくれたので情報共有しておきたい。

──Eさんはどのような会社で働かれているのですか?


「アマゾンの配達ドライバーはほぼみんな個人事業主だと思うので会社には所属していません。会社員ではなくて個人事業主、ひとり親方みたいな感じです。


アマゾンドライバーの配達には大きく分けて2種類ありまして、それはデリバリープロバイダとアマゾンフレックスの2種類なんですが、自分は今両方をやっています。


デリバリープロバイダ(デリプロ)というのは、アマゾンから配達の委託を受けた配送業者と自分(個人事業主)が業務提携をしてアマゾンの荷物を配達するという仕事のやり方です。


一方、アマゾンフレックス(アマフレ)というのは、アマゾンと直接業務提携をしてアマゾンの荷物を配達する働き方です。


今デリプロで業務提携している会社ですが、家から近所だという理由で選びました。はっきりとはわからないのですが在籍ドライバーが20人くらいの小さな配送業者です」


──Amazonの荷物を配達する大手宅配企業との違いや、それぞれの特徴を教えてください。


「ヤマトや日本郵便の様な大手のことはよく分からないのですが、デリプロとアマフレの違いや特徴ですと、デリプロは間に会社が入っているので報酬がアマフレより安くなります。


デリプロと自分の間に数社挟まっていることもあるので、その場合はさらに安くなってしまいます。


あと、拘束時間もアマフレより長いと思います。例外もあると思いますが今の倉庫ですとほぼみんなが1日13時間拘束で働いています。


アマフレは直接アマゾンと業務提携をして中抜きされないのでデリプロより報酬は高いです。働く時間も自分で決められるので拘束時間は短くなります」



──なぜAmazonの配達ドライバーを始めたのでしょうか?


「40代の半ばまでずっと在宅で仕事をしていたのですが、仕事の事や家庭の事でメンタルをやられてしまいまして、ほぼ引きこもりの状態になっていたんです。


それがしばらく続いたんですが、体調のいい時にネットで求人情報を見ていたときにたまたまアマゾンの配達の仕事を見つけて、その会社が家の近所だし車の運転も好きだったので面接を受けに行って……という感じです」


──あらためて仕事内容を教えてください。


「宅配の仕事なので、荷物に書かれた住所に荷物をお届けするだけの簡単な仕事ですね。


1日の流れですと、午前中に荷物が用意してある倉庫にまず行きます。体調のチェックとアルコールチェックをして、用意してある自分の荷物を積み込んでから出庫します。で、荷物を配達して倉庫に戻ります。


デリプロの場合、これをもう一度繰り返すことが多いと思います。夕方にもう一度荷物を積み込んで配達に向かいます。自分が今やっているのは午前便7時間+休憩1時間+午後便5時間の13時間です」



──どんな勤務形態なのですか?


「今年に入ってからデリプロの仕事を週3回ほどに減らして残りをアマフレで走っているのですが、昨年までは週5日でデリプロで走っていまして、そういう人が多いと思います。


アマゾンの方針として週5日以上働けないとか、週60時間以上運転できないとかがあるので残業は自分の場合はしたことがありません


──会社としてどのような体制なのでしょうか?


「アマゾン宅配の仕事は週末も年末年始もありますので、所属会社内のドライバーでシフトの調整をしながら働く日を決めています。5連勤だと体力的にきつい人は水曜と日曜を休んだり、5連勤をして2日連休を取ったりなどシフトは比較的自由に決めています。


所属会社が同じドライバーはお互い個人事業主同士ですが、横の繋がりはとても密な感じです。荷物が配りきれなそうな時は助けに来てくれたり、バッテリー上がりやタイヤのパンクなどの緊急時などもお世話になっています。


アマフレの場合は全部自分で解決しないといけないので緊急時は不安だと思いますね」



──お仕事をする上で気をつけている点はありますか?


「まずは安全運転です。びっくりするくらい細い路地を配達することもありますし、交通量の多い場所の配達なんかも危ないです。事故を起こすのはもってのほかですが、点数が無くなったら仕事ができなくなりますし、車が壊れても同じです。


配達の際の駐車場所も気を付けています。他の家の敷地や駐車場などに止めるとクレームに繋がり易いんです。


自分も配達を始めて間もない頃に行き止まりのUターン場所の無い細い路地で、駐車場を使ってUターンしましたらその家の方に「不法侵入だ」と警察を呼ばれてしまいまして。それ以来駐車場所にはとても気を使っています。


配達に関しては誤配にはとても注意します。アマゾンの配達の場合置き配がメインですので受け取り手の方の確認ができませんので、配達時の住所確認や表札の確認には気を付けています。


あ、あと自分はお酒が好きで毎日飲んでいるんですけど、以前よりかなり飲む量が減りました。毎朝のアルコールチェックにはとても気を使っています」


──このお仕事を始めてびっくりしたことはありますか?


「新しくこの仕事を始めた際に新人研修があったんですけど、横に現役のドライバーさんが乗って3日間研修があるんです。4日目にはもうひとりでやらなきゃいけないんです。それがまずびっくりでした。アマフレから始める人は研修期間もないのでどうやって仕事のやり方を覚えるんでしょうね。


あと、クレームを付けられることが多い仕事だなという事ですかね。特にアマゾンの配達が顕著だと思います。

ヤマトさんや佐川さんは制服を着て配達していますしそんな事ないんでしょうけど、アマゾンの配達員は基本私服ですし、勝手に家の門を開けて荷物を置いて行くわけですから怪しいっちゃ怪しいんですけどね。


車の運転、駐車の仕方、配達の仕方、口の利き方、どんなことでもすぐクレームに繋がる仕事だということに驚きました。仕事を始めたばかりの頃は少しクレームをいただきましたけど、今はほぼないですけどね」



──このお仕事を始めて嬉しかったことは何ですか?


たまにお茶とか飴とか配達時にいただくことがあるんですけど、正直言って嬉しいですね!

別に何かものが欲しいわけではないんですけど、無言で荷物を受け取る方がほとんどですし、むしり取るように受け取る人もいるので、「ありがとう」や「ご苦労様」の言葉もとても嬉しいです!! 人のために働いてるなという気持ちになれますね。


あと、この仕事を始める前はメンタルをやられて引きこもっていたのですが、毎日毎日外に出て、雨でも猛暑でも体を動かし続けたことで心も体も調子がよくなったのが嬉しいです


──差し支えなければお給料を教えてください。


「今はデリプロとアマフレを両立しているので月毎にバラバラなのですが、デリプロだけの時は日給2万円で、週5日勤務でしたので、月に21日から23日稼動で報酬は42万から46万円。提携してる会社の事務費用1万円が引かれて振り込み額は月額41万から45万円くらいです。


ですが、税金や車の維持費などの経費が結構かかるのでこの額を丸々使えるわけではないんですけどね。


ガソリン代が毎日2千円くらいかかりますし、保険の月に1万近く、オイル交換は月イチ。タイヤは年イチ。その他車の故障などで経費がかなりかかります。仕事を始めた時は車をリースしていたのでリース代が月に3万円かかっていました」



──このお仕事をしてみて今率直にどう考えていますか? どんな人に向いていると思いますか? 


「ドン底の状態で今の仕事を始めて、今心も体を大変調子がいいので、この仕事をして本当によかったと思っています。


配達の仕事って出庫する時は車がパンパンになるくらい荷物を積んで出るんです。本当に配り切れるのか?って思いながら出ることもあるんです。


でも、不安になってても仕方がないので、目の前の配達先に一個一個配達して行くと少しずつ荷物が減って行っていつの間にか全部配り終わるんです。


弱っていた頃は暗い未来ばかり想像したりして目の前の事ができなかったんですけど、配達の仕事が解決策を見つけてくれたなーって感じですね。


似た様な状況にある人、何も見つからずに動けないでいる人にはとてもオススメの仕事だと思います。外に出て体を動かすのは心に効きます!


ドライバーが不足しているので始めようと思えば求人はたくさん出ていますし、黒ナンバーの車さえあれば仕事がなくなることはないと思いますよ」


──将来についても教えてください。


「アマフレの仕事は全国どこでもできるので、いろんな土地で配達するのは楽しそうですね。その土地の郷土料理なんかを食べながら点々と移動とかやってみたいです。アマゾンだけでなくネット通販はまだまだ増えると思うので、黒ナンバーの車はずっと持ち続けようとは思ってます


──詳しく教えていただきましてありがとうございました。そして、いつもご苦労様です! 安全運転で、がんばってください!!


執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24