ウチの営業担当のジュン君が「ライブ配信アプリの記事を書きませんか?」と言ってきた。「普通のライブ配信アプリとは全然違うんです!」と力説しており、こちらとしても非常に興味をそそられた。何がどう違うのか、さっそくプレゼンしてくれよ!

ジュン君の話を要約したところ「配信者と視聴者が直接コミュニケーションを取れる」「配信者が一般人ばかり」「配信者が僕の名前を呼んでくれたので嬉しかった」と、いうことのようだ。ふむふむ、なるほど。それって、つまり、要するに…………

“よくある一般的なライブ配信アプリ” なのでは!?

・担当者を直撃してみた

営業担当なのにプレゼンが下手くそすぎることが判明したジュン君。らちがあかないので、噂のライブ配信アプリ『Pococha(ポコチャ)』を運営するDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)に直接話を聞きに行くことにした。

ちなみに私はライブ配信をわりと頻繁に視聴しているが(あれって気づけば何時間も観ちゃってるよな!)、配信者に対してコメント等のアクションを行なったことは無い。タダ観は申し訳ないので “500円だけ課金する” というマイルールを設けている。

例えば私が配信者に「かっこいいですね」とコメントしたとして、運が良ければ「ありがとう」と返してもらえるかもしれない。そうすれば私は嬉しいだろうが、でも同時に「何百人も視聴者がいるんだから、私がしてもしなくても同じじゃね?」って気もしちゃうんだよな。

という話は置いといて、こちらが今回お話を聞かせてくれるポコチャの癒し系・坂本さん。ユーザー向けイベントのMCでも登場している “ポコチャの中の人” として、ユーザー間では知られた存在らしい。ときに坂本さん、ポコチャの担当になられて長いんですか?


坂本さん「はい、今年で5年目になります。サービス規模が今の10分の1ぐらいだったところから、ここまでのフェーズを見てきました。今やっている業務はコミュニティチームという形で始まったのですが、よければカルチャーデックをご覧いただくと、ガバナンスみたいなのものやプロトコルがご理解いただけるかと……」

──横文字が多いですねぇ

坂本さん「ああぁ……すみません! ポコチャは今グローバル展開をしていまして、外国の方にも伝わるように普段から横文字を使っているのです。実際は全然難しい話ではないんですが……すみません(汗)」

──いえ、逆にすみません!


・素人じゃなくて、ド素人!?

ポコチャは従来のコンテンツ型・メディア型の配信とは異なる『ライブコミュニケーションアプリ』を名乗っている。それって結局のところ、普通のライブ配信アプリと何が違うのだろう?


坂本さん「はい。一部のトップライバーさん(人気上位の配信者)だけのものではない、コミュニティ型のプラットフォームを目指しました。より一般の方向けのライブ配信です。18歳以上であれば誰でも配信できます

──一般的なライブ配信アプリだと、元々有名だった人が既存のファンを引き連れて配信を行う、というパターンが多いですよね?

坂本さん「そうですね。ポコチャの場合、本当に何者でもない方がトップライバーさんになるパターンが多くて。例えば、とあるSランク(ポコチャの最高ランク)の女性ライバーさんは、もともと地方出身の会社員の方だったんです。

それが仕事で疲れた息抜きにライブ配信を始めて、リスナーさんから応援されるようになって、どんどんランク上がっていって……他のライバーさんからも注目されるライバーさんに成長されました」

──その方の魅力は何なんでしょう?

坂本さん「彼女は至って普通の女性ですが、 “ライバーもリスナーも合わせてファミリー” という雰囲気の場作りをすることが上手いんです。リスナーさんと一緒に枠(各ライバーの配信のこと)を成長させていくという……部活みたいな結束感でしょうか」

──う〜ん……ゼロから人気者になった人もいるとして、でも結局はトップ層と下位層に分かれるわけですよね? リスナーもライバーも、新規参入のハードルって、やはり高い気がするんですけど?



坂本さん「例えばですが、YouTuberのトップの方だと、1回の配信を何十万、何百万人が観るっていう世界線ですよね? それがポコチャの場合、ランク上位のトップライバーさんであっても、同時に視聴するリスナーさんって多くても100人にも満たないんですよ 」

──え!? 少なっ!

坂本さん「先ほどお話したトップライバーさんの女性も、配信で同時にコメントする常連のリスナーさんって30人くらい。彼女のSNSのフォロワーは2000人くらいです。そんな規模感なんですよ、ポコチャって」

──それ以上の人数は、物理的に視聴できないってことですか?

坂本さん「ポコチャはコミュニティ型のライブ配信なので、一部のライバーさんに大勢のリスナーさんが集中しないよう、一定数で入室を制限する設計をしています。少人数であるからこそ、ライバーさんとリスナーさんのコミュニケーションが盛んになり、リアルタイムで快適に配信枠を楽しめます」

──人気が出すぎて小規模を超えたライバーは、卒業するってことですか?

坂本さん「それが、意外とそうでもないんです。TikTokだとフォロワーが50万人くらいいるライバーさんが、ポコチャでは2、30人のコアなファンの方向けに配信している……というケースもあります。もちろん、ゆくゆくタレントになりたいライバーさんがコアなファンを獲得して卒業されるケースもありますが。そこは住み分けといいますか。

一般的なライブ配信アプリでは知名度や企画力が問われますが、ポコチャの配信って、基本的にはリスナーさんからのコメントをもとにしたおしゃべりが中心なので。ライバーさんもあまり気負わず、毎日続けられるんですよね。そこが『ライブコミュニケーションアプリ』という所以でもあります」

──なるほどぉ……! 素人どころか、ド素人でも始められるじゃないですかぁ!

坂本さん「そうですね(笑) 最初はみなさん一般の方でも、リスナーさんの応援をうけてプロフェッショナルになっていくんです」


・で、いくら稼げるのか?

坂本さんの話を聞くうち、私の心には俄然「自分もライブ配信をやってみたい」という気持ちが湧いてきた。こうなると気になるのは「いくら稼げるのか?」という問題である。

近年では年収が億を超える動画配信者も珍しくないと伝え聞く。そのクラスを目指しているわけではないし、そんなに頑張る気もないのだが、どうせやるなら多少はお金、欲しいよね! そこんとこ、どうなんですかね??


坂本さん「ポコチャは一部のトップライバーさんが大金を稼ぐ場所ではなく、 “普通の方がライバーを職業にできる場所” かと思います。たとえばYouTuberさんが100人いたら、報酬を得られるのって3、4人くらいと言われています。でもポコチャは、100%全てのライバーさんに報酬が発生するシステムを採択しています」

──えっ? 全員が!?

坂本さん「はい。配信時間に応じた報酬、時間ダイヤが出るんですよ。1日4時間までの配信に付与される”時間ダイヤ”と、リスナーさんからのコメントやアイテムなどによる盛り上がり度合いに応じて獲得できる”盛り上がりダイヤ”の合計が1日分の報酬です」

──1ダイヤは1円ですか? 時間ダイヤって、時給みたいなもの?

坂本さん「そうですね。仮に “初めて配信して視聴者がゼロだった場合”の 時間ダイヤは1時間あたり30ダイヤです。ランクが上がるにつれて上がって、MAXで1万6500ダイヤ。あとは配信枠の盛り上がりに応じて盛り上がりダイヤを獲得できるので、配信によって変動します。決してビッグマネーではないですが、副業やアルバイトの感覚で月数万円くらいの収入を目指すなら、他のSNSで活躍するよりもハードルは高くないです 」



──それはスゲェ! ポコチャだけで生活できている層もいるんですか?

坂本さん「はい。上位ランクのライバーさんでしたら、月収100万円以上という方もいます。また、継続的にPocochaをやり続けていればCランク以上になる方が多く、その場合はほとんどのライバーさんが月に数万〜数十万円を得ています。 『上位を維持しなきゃ』ってプレッシャーを感じる人もいますけど、多くのライバーさんは、自分のペースで楽しく配信されていると思います」

──動画配信者ってけっこう大変なのかなと思っていましたが、まずは副業くらいのカジュアルさで始めてみてもよさそうですね〜


・ポコチャの世界観

坂本さんいわく、ポコチャのライバーは30代女性が最多ですが、男性ライバーさんも約4割、高齢者や地方在住者も多いらしい。なんか夢がある話だな。


坂本さん「録画・編集した動画配信と違って、ポコチャはリアルタイムでの配信・視聴が醍醐味です。だからコアなリスナーさんって、毎日来るんですよ。そうするとライバーとリスナーではなく、仲間や家族的な感覚になりますね。リスナーさん同士で会話が盛り上がることも多いです。

ただ、その反面 “長く配信すればするほどランク上位に行きやすい” という課題が生まれました。ライバーさんたちが頑張りすぎて配信が長時間化してきたので、新しい『お休み制度』を設けたんです」

──え!? 働き方改革ですか!?

坂本さん「そんな感じです。実はポコチャでは「プラットフォームというのは、一つの国や民主社会のような仕組みが必要なのでは?」と考えていまして、生活の一部として末長くPocochaを快適に、安心安全に楽しんでもらえたらなと。ユーザーさんたちと話し合った結果、今月から “月に4日は配信を休まなくてはいけない” というルールに変更しました。

以前からも『おやすみチケット』(配信を休んでもランクが下がらない)を配布したり、産休・育休制度のような『出産に伴うおやすみ制度』(休み中はランクが下がらない)を作ったりも。グローバル展開もしている新しい産業だからこそ、そのあたりは整えていきたいっていう思いがありますね」

──それはマジすごい!!!



坂本さん「あとは、プラットフォームの治安を良くする仕組み作りですね。例えば輪を乱すような行動をするリスナーさんが来た場合、最終手段としてブロックやコメント禁止機能もありますが…… ルールやペナルティだけでなく、マナーやカルチャーが大事だと思い、”素敵な行動のアイデア集”として、ユーザーのみなさんと『コミュニティハンドブック』を作りました。

基本的には “みんなで素敵な行動をしましょう” という意識で、ライバーとリスナーがその人に注意をします。そうすると、アンチとか荒らしがしたい人は居心地が悪くなるのか、いなくなる場合が多いです」

──1人ぼっちですもんね〜

坂本さん「そうですね。初めて行く定食屋さんで常連客に嗜められるような、バツの悪さがありますよね」


・ハードルが低すぎるライブ配信アプリ

“素人でもやれる” ではなく、逆に “素人にしかやれない” ことが明らかになったポコチャ。インフルエンサーなどの有名人じゃなくても、目立った経歴や一芸がなくても活躍できる……むしろ、友達同士の雑談を楽しむような一般人の感覚こそ価値があるようだ。 よくある動画配信アプリとは全く異なる、唯一無二の『ライブコミュニケーションアプリ』なのだった。

動画配信ってテレビやメディアの延長線だと思っていたが、顔出しのハードルさえ越えてしまえば、誰でも今日から始められるものだったんだな。う〜ん、私もやってみよっかな!?


──ところで先ほどの “定食屋の常連客” って、いい表現ですね!

坂本さん「そうですね(笑)。馴染みの店とか友達がやってる行きつけのお店……『そういう場所が欲しいけど見つからない』って方は、ぜひポコチャで探してみてほしいです。どんな方でも利用しやすい環境を目指していますので!」

参考リンク:Pococha(ポコチャ)
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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