「ベジタリアン」向けのお店は今でこそ珍しくなくなった。時にはスーパーやコンビニでもそれに類する商品を購入できるが、数十年前から植物性の食材だけで料理を提供してきたお店となると限られる。今回はそのうちの1つを紹介したい。

東京・中野ブロードウェイの「香林坊」は肉・魚を一切使わない料理を提供している。お店で食事をして女将さんとお話してみると、菜食でも十分に元気でいられる証(あかし)をまざまざと見せつけられた。これは納得しかない

・肉も魚も使わない

お店はブロードウェイの2階、ブロードウェイ通りの北側に位置しており、店構えから長く営業している雰囲気を感じる。以前からブロードウェイを訪ねるたびに、このお店が気になっていたのだが、いつも開いていない時間に店を訪ねてしまうため利用できずにいた。


お店の入り口にはこう書かれている。

「はじめてのお客さまへ 当店の料理は肉・魚を一切使用しておりません」


今では和食店に限らず、レストランやカフェなどでも見かけるようになったベジタリアンメニュー。なかには「ヘルシージャンクフード」なんてのを出すお店まである。

こちらの「香林坊」は古くから実践し、現在も営業を続けているのだ。のちほど、女将さんに「何年くらいやってらっしゃるんですか?」と尋ねたら、「50年」と教えて頂いた

50年! 私(佐藤)と同い年!! そんなに前から菜食メニュー1本でやり続けてきたとは、いやはや驚きである。



・素朴なやさしい味

入店すると、まず女将さんが「肉も魚も使ってませんよ」と丁寧に説明してくれた。私にはありがたいくらいだ。胆石があるので、本来は普段から肉も魚も控え目にした方が良いくらい。

近頃はその戒(いまし)めを破って、若干食いすぎている。ここの料理なら手放しで食べられるので、ありがたい限りだ。


メニューにある「忍者揚げ」「珍ピラ揚げ」が気になったけど、昼時は「日替わり定食」(税込1100円)をおすすめしているので、言われるままに定食をお願いした。


こちらが今日の定食。ご飯・スープ・ナスのみそ和え・青菜の和え物・精進ひと口カツの5品。


肉も魚もないけど内容は十分。想像した精進料理よりもかなり見映えのするものだった。揚げ物があるからさみしい感じがしないのかも。いずれの料理も、野菜の味をいかした素朴で優しい味がする。身体への負担も軽そうで何より。濃い味のものは、もう堪えるんよねえ……。


意外だったのが精進ひと口カツ。コレ、ナゲットの味がする! 実は大豆を使っているそうだ。つまりは大豆ミートで、食感は鶏肉にかなり近い。


この手の食事は毎日食べても飽きが来なくていい。実際、毎日のように通う常連さんも多いそうだ。50年もの長きにわたって営業を続けている間に、30年以上通いつめる方もいるとのこと。まさに街の食堂としてしっかりと定着している。



・女将さんのパワー

お店を切り盛りする女将さんは現在76歳である。その見た目はとても若く、立ち居姿もしっかりしていて、肌の色つやもとても良い。

女将さんいわく、精進料理のおかげなのだとか。「自分で食べて健康を維持できてるからこそ、お客さんに勧めることができるんです」という。なんて説得力! たしかに自分が良いと思うからこそ、人に食べてもらうことができる。それを実践されているわけだ。


お話をしていると、スッと右手を差し出された。握手のように私の手をとり、「ちょっと握りますよ」といってギュッと手を握った。それが尋常じゃない力だったのである。なんてパワー! あやうく「イテー!」と言いそうになったほどだ。70代女性の握力じゃない! これまたすごい説得力。肉や魚を食べなくても元気に過ごせる証だ。


お店の料理もさることながら、女将さんから1番パワーをもらってしまった。元気が欲しい時は、また女将さんからパワーを頂こう。


・今回訪問した店舗の情報

店名 香林坊
住所 東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ2F
時間 11:00~15:00、17:00~20:00
定休日 日曜日

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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