好きなとんかつチェーンといえば、皆さんはどこを思い浮かべるだろうか? かつや? 和幸? 私は新宿さぼてんを推したい。というのは、持ち帰りで利用する機会が結構あるからだ。とくにコロナ禍で我が家はずいぶんお世話になった。

そんなさぼてんの公式サイトには「とんかつの作法」というものが記載されている。それに従って食事をしてみたところ……、とても厳(おごそ)かな気持ちになったので、皆さんも参考にして頂きたい。

・さぼてん流とんかつの作法

先にも述べたように、コロナの感染が拡大する中、店内飲食ができない状況下でさぼてんの弁当を何度か持ち帰っていた。以降、我が家では定期的にさぼてん弁当が食卓に上がるようになった。

弁当はなかば習慣化されたが、店内飲食を1度もしたことがない。ということで、最寄の中野マルイにある店舗で食事をしてみることにしたのである。


お店を訪問するにあたって、事前に公式サイトでメニューを予習。余談だが、私(佐藤)は企業の公式サイトを掘り下げるのが趣味である。企業概要などをチェックしていたところ、レストランメニューのページに「とんかつの作法」という項目を発見するに至った。

作法については、後ほど詳しく触れるとしよう。


お店でメニューを見ると、ランチでもそこそこいい値段がしますねえ。しかしながら、ご飯・みそ汁・キャベツがおかわり自由であることを考えると、まあ1000円超えは納得かなあ。


ちなみにさぼてんには公式キャラがいる。とんかつをイメージした「サクサクカツモン」、海老フライをイメージした「プリプリエビミン」

そしてキャベツをイメージした「オカワリキャベモン」だ。キャベモン、マリモみたい。他の2つのキャラがそれぞれ1体ずつであるのに対して、キャベモンは複数体いるらしい。分裂して無限に増殖したりして……


キャベモンは置いておいて……。今回は「熟成三元麦豚ロースかつ(95g)と大海老フライ盛り合わせ御膳」(税別1330円)をお願いした。

料理が出てくる前に作法の予習だ。こちらが公式ページに公開(PDF)されている作法のすべて。内容が結構細かいなあ。

内容は前後半に分けられている。前半が「心支度」、後半が「幕開け」となっており、それぞれ4項目ずつ設けられている。


・心支度編

作法に従って食べるとしよう。まず「1、潤しのお茶」。さぼてんのお茶は食事に合う烏龍茶とのこと。うん、今日は暑いから何を飲んでも美味い。


最初にキャベツと取り皿、小さなすり鉢とすり棒が出てきた。ここで次の項目「2、香るすり胡麻ソース」だな。7割程度、胡麻をするとのことだけど、7割の加減が難しい。ちょっと粗く擦ったら良いのかなあ……。


自撮りしながら胡麻をするのは難しいな。


そこにソースを注いだところで、「想いを馳せるはご褒美のとんかつ」って書いてある。食べ方の指南のはずなのに、考え方まで要求してくるとは。厳しいね……。


そして「3、いただきます」。手を合わせて食材に感謝して合掌、とあるけど、自撮りだと手を合わせられんので、心の中で合掌。いただきます!


まずはキャベツを頂こう。どこにでもありそうなただの千切りキャベツなんだけど、コレが地味にすごかった。どこをどう箸でつまんでも、ちょうど良い量が取れるんですよ。キャベツが全然絡まない。

見た目にはわかりにくいけど、「束」ごとに小分けにされて盛られているのだ。ささやかな工夫だけど、これだけでちょっと感動してしまった。


感動しつつキャベツをつまんでいたら、とんかつ来た! キャベツを食べるところまでが作法の前半。さあ、ここから後半だッ!!


・幕開け編

即座に食べたいところではあるが、しばし待たれよ。「5、さぼてんの剣立ち(けんだち)」にはこう書かれている。大変重要な項目なので、全文引用させて頂こう。


「とんかつが到着したら、食べたい気持ちをぐっとこらえて、まずは愛でましょう

剣のごとく美しく立った黄金(こがね)色の衣を“剣立ち(けんだち)”と呼びます。それこそが、良い“揚げ上がり”の証。」



まずは愛でろというので、とんかつを愛でる!


ほほ~、研ぎ澄まされた刃の切っ先のごとく、天を刺さんと衣が上を向いておる


さぞ、名のある匠が鍛えた業物とお見受けした。やりおる……。


ってことでいただきま~す! 「6、楽しむ術(すべ)」でまずは何も付けずひと口食えとあるので、そのまま食う!


正直な意見として、何も付けないと味気ない。衣の歯ざわりをしっかり感じることができるけど、味的にはぶっちゃけ面白くないかなあ、うん。

ってことで、すり胡麻ソースを軽く付け……。


思い切りパクリ! うん! 絶対コッチがいい。胡麻の香りとソースの酸味が加わって、豚肉の甘さが引き立つな。


ここまで食べたい衝動を抑えて作法を遵守してきたせいで、食欲が爆発。アッという間にとんかつを平らげてしまった。早いもので残すは大海老フライ1本のみ。これは大事に食わねばならん。ということで、まずは愛でようぞ


うむ、立ってる。剣が立っておるぞ。刀身(海老)から並々ならぬ “氣” が漂っておる気がする……


剣先にタルタルソースを少量付けて……。


エイ! 成敗してやる!!


弁当で何度もその食感を味わっているのだが、さぼてんの揚げ物は時間が経っても衣がくたびれることがない。食材の水切りも、揚げた後の油切りもしっかりしているので、冷めてもサクサクのままだ。さすが創業(1966年)から半世紀を経て、全国に店舗を展開する老舗チェーンだけある。その実力はたしかである。

「7、満腹」を迎えるまで、足りなければキャベツもご飯もみそ汁もおかわりできる。私はおかわりしなくても、十分満たされるほど胃袋が小さくなった。したがって、もう「8、ごちそうさま」である。


最後は、「感謝の気持ちで目を瞑り、“ご馳走様”の合掌」とある。相変わらず自撮りで手がふさがっているので、せめて目を瞑って、ごちそうさま!


以上、とんかつの作法にしたがって食べたさぼてんのレポートである。ちょっと面倒ではあるけど、厳かに食事を楽しむことができた。ぜひ皆さんも1度、実践して頂きたい。とくに剣立ちを愛でることを忘れないようにな!


・今回訪問した店舗の情報

店名 新宿さぼてん 中野マルイ店
住所 東京都中野区中野3-34-28 中野マルイ5F
時間 11:00~22:00(L.O.21:00)
定休日 なし(施設に準ずる)

参考リンク:新宿さぼてん、とんかつの作法(PDF
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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