日曜日夜のトレンド覇者なNHK大河ドラマ『どうする家康』。今年いっぱいはこの調子が続くのだろう。

ドラマがどのように終わるかわからないが、史実における家康のラストは決まっている。駿府城にて薨去(こうきょ)したのち、その遺体は現在の久能山東照宮に埋葬されたのだ。

生前に縁の深かった静岡浅間神社の凄まじさを考えれば、久能山東照宮も相当にヤバいに違いない。静岡県内で唯一の国宝建造物があるしな。行くしかねぇ!!

・家康の墓

ということで静岡浅間神社に続き、JR東海の提供でやってきたのがこちら。久能山東照宮で立ち入り可能なエリアの一番奥にある家康の墓だ。いきなりのクライマックスぅ!! 


静岡浅間神社でも祀られていた通り、家康は死後に東照大権現として神格化された。日本各地の東照宮で祀られているのは神となった家康。家康 = 神。つまりこれは神の墓と言ってもいいかもしれない。

たいそう立派なものだが、意外にも元はもっと小さかったそうだ。


なお、ここに家康の遺体が入ったことは100%間違いないと思われるが、今でもここにあるかについては諸説あるもよう。後に日光東照宮に改葬した説も有力なのだ。

久能山の墓と日光の墓の、どちらかを開けて調べれば一発で決着がつくやろ……というのは、恐らくタブーな思考なのだろう。この問題は長らく静岡・栃木県間における紛争の種となっているセンシティブ案件。そっとしておこうと思う。



・国宝

家康の墓も見たことだし、久能山東照宮はフィニッシュ……。ここの本気はこんなものではない。

家康公の墓を前に不敬極まる発言となることを承知で正直に述べるが、久能山東照宮で真にヤバいのは国宝に指定された社殿と、収蔵品がキレてる博物館だ!

社殿からいこう。「国宝」と書かれた板が誇らしげに立っている。


まず、こちらが普通に拝観した際に見える光景。多くの方はここで終わりだろう。蟇股(かえるまた)の彫刻などは実に見応えがある。ここで参拝したのち、どこかに隠れている「逆さ葵」を探すのも定番。


それも十分に満足できると思うが、ここは是が非でも生きているうちに1度は中に入ることをお勧めする。

なぜなら、内部の造りがブルジョア極まる徳川クオリティだからだ! 


すごい金箔とすごい漆とすごい彫刻とすごい極彩色で、すごく……すごいのだ!! 他にも写真を撮ってきたので、記事のラストにまとめて掲載しておこうと思う。



・入り方

国宝の建物にそうそう入れるわけねぇだろ……と思う方もいるかもしれないし、確かに国宝指定された建物には、非公開か期間限定でしか公開されないところも多い。

しかし国宝でもアクセスしやすい建物はいくつかあり、久能山東照宮はそのうちの1つ。そして、内部に入る方法はいくつかある。

久能山東照宮の公式HPにある通り、何らかの祈祷をしてもらう(初穂料は願意1件5000円 2023年6月1日現在)か、ここで結婚式を挙げるルート。


もう1つは、JR東海「どこ行く家康」のプランから、久能山東照宮の特別正式参拝があるやつを選ぶルート。


私が調べたところ、まだ定員に余裕があるのは4800円のやつのみだった。7月9日と8月19日、9月3日から選べるもよう。


『どこ行く家康』公式HPからEX旅のコンテンツポータルに飛び、さらにJR東海ツアーズのHPに飛ばされるのは、ぶっちゃけ直感的な導線ではないと思うが、それはそれとしてお値打ちだと思う



・博物館

続いては博物館だ! 大人400円、小中学生150円という異常に安い価格ながら、ここの充実度はガチ。


内部の撮影はNGだが、それも納得の収蔵品。現在静岡県では『どうする家康』に乗っかって、各地で様々な展示が勢いづいている。

例えば駿府城そばの静岡市歴史博物館もそうだ。関連する展示が行われており、かの有名な伊予札黒糸威胴丸具足(歯朶具足)復元模造(いよざねくろいとおどしどうまるぐそく)は見応えがある。


対して、たった400円で入れる久能山東照宮の博物館では、そういった品々の本物が展示されているのだ……! その時々で入れ替えたり、他の博物館に貸し出すなどして展示物は変わるが、何にせよ徳川関連グッズの収蔵数はガチ!!

特に武具の充実度は他の追随を許さない。家康から始まり、15代目の慶喜のものまで、全歴代徳川将軍の具足をコンプ!

刀剣類も家康のものだけでなく、歴代将軍から寄進されたものなどが40口も……!! 将軍由来の装備でほぼ1小隊を編成できるとかやべぇ。

特に刀だが、ここの刀は奉納刀らしい。つまり実戦用ではなく、しかも徳川家の威光で保存環境は代々パーフェクト。そういうわけで、刃の研磨が江戸時代のままだそう。

私のような素人には、令和の研磨も江戸の研磨も区別はつかない。しかし「江戸時代に研がれた状態のままなんですよ」などと言われると、これが江戸の研磨の輝きかぁ……と、そこそこなロマンと満足感を覚える

こうも見応えに満ちた博物館だが、見ていると、拝観しても博物館はスルーしているっぽい人がわりと多かった。しかしそれはクリティカルなミステイクと言わざるを得ない。

まあ、確かに社寺仏閣に併設の宝物館やら博物館は、値段相応なことが多い。本物はどこぞの国立博物館に収蔵されていて、あるのはレプリカだけみたいなケースも珍しくない。

スルーしていく人々を前に、久能山東照宮の博物館も、安すぎる入場料のせいで見くびられている可能性を個人的に感じた。

しかし、ここの収蔵品は、家康が埋葬された場所だからこその利権が最大限に活用されているとしか思えない豪華なラインアップ。切れ味がダンチだ!

ということで、大いに素晴らしかった久能山東照宮。徳川家康関連は何かと豪勢だが、ここも実に素晴らしかった。静岡の家康系コンテンツにおける、ラスボスと言ってもいいかもしれない。

参考リンク:久能山東照宮どこ行く家康静岡市歴史博物館
執筆&写真:江川資具
ScreenShots:久能山東照宮、JR東海
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▼案内してくれた斎藤さん。


▼重要文化財の唐門。漆と金箔と岩絵の具がふんだんに使われている。


▼国宝の拝殿・石の間・本殿。畳も、縁や内部構造が現代のものとは造りが違うそう。作れる職人がおらず、どう維持していくかが課題とのこと。

拝殿から見た石の間と本殿。リアルな権現造りというのがどういうものか、初めて知った。石の間ってこんな感じなんですね。もっと低いと思っていた。赤い畳の縁に注目。

この絵の立体感。

拝殿の装飾もピッカピカずら。大小無数の葵紋。全部で何個あるのか数えたかった。この写真の中だけでも100個くらいありそうな気がする。


拝殿内部に描かれた天女には、顔の作画が崩れているものがある。逆さ葵よりレア&知られていないかもしれない。背後にあるストーリーについては……久能山東照宮に行くと良いだろう。


▼社殿を後ろから。



▼下から山を階段で登るか


ロープウェイに乗るか。


ロープウェイ乗り場の近くには、眺めが良い日本平夢テラスなる施設もある。


個人的には階段を推奨。延々と続く登りづらい石の階段。東照宮になる前は城だったが、ここがいかに難攻不落かを肉体で実感できる。


▼城だった頃の名残もある。

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