突然だが、「妖刀」と聞くと、みなさんはどんな刀を思い浮かべるだろう。私(中澤)は、とてつもなく美しい刀を思い浮かべる。それこそ、刃の輝きに魅入られるほどに。
現在、超ド級の妖刀「村正」の展示会が三重県の桑名で行われているのをご存じだろうか? ゲームやアニメでもお馴染みで「徳川にたたる……」とまで言われた伝説の妖刀。その真実の姿を見るチャンス! というわけで、三重県桑名市博物館の企画展『村正 -伊勢桑名の刀工-』に行ってきた!!
・実用性を追求している村正
この展示会は、2016年9月10日から10月16日まで開催されている。入り口を入るとすぐに、刃長70cmの太刀「無銘」が飾られていた。薄い刃先が反射する光はしたたるようでなまめかしい。
古来より武器としてだけでなく、美術品としても評価の高かった日本刀。歴史に残る名刀の中には、最初から家宝や神社に奉納されるために作られたものも多いという。そんな中、ひときわ鋭い切れ味で “実用性” を追求しているのが「村正」だ。
当時の刀剣界において「村正」はユニクロのような存在で、高級ブランドというよりはスタンダードの1つだったらしい。その証拠に、現在、国宝や重要文化財に指定されている刀に村正は1振りもない。それでは、なぜ「村正」の名がこれほど知名度と人気を得るに至ったのか?
・徳川家にたたる……妖刀伝説
その理由の1つとして挙げられるのが、前述の「徳川家にたたる」という妖刀伝説である。家康の祖父・清康が殺された刀、父・広忠が襲われた刀、家康自信が駿河宮で怪我をした刀、家康の子・信康を介錯した刀がすべて村正だったという。これは呪いかスタンダードゆえの皮肉か……どちらにせよ、徳川に嫌われた村正は不遇の時代を迎える。
そして、再び村正が時代の表舞台に登場するのが幕末。妖刀伝説もあったことで、倒幕を志す幕末志士はげん担ぎで愛用するようになる。西郷隆盛も村正を使用していたという。
全国各地から20振り以上の村正が集合した今回の企画展。冷たく神秘的な光を放つ刀身は透き通るように美しく、どの村正からも魂のようなものを感じた。
中でも、徳川美術館所蔵の徳川家に伝わる「村正」は、刀の前から動けなくなるほどの圧倒的なオーラだった。こちらは残念ながら撮影不可だったため、興味を持たれた方はぜひ生で見ることをオススメしたい。
・人を斬った刀もあり
また、村正以外にも村正の弟子たちの作品も展示されており、中には試し斬りの年月日、結果などが詳細に記載されているものも。実用性を追求している刀だけに、実際使用された展示物も多いのかもしれない。そういった部分にも、村正の妖しい魅力を感じずにはいられなかった。それでは、息をのむほど美しい村正の画像を以下で一気にご覧いただこう。
・今回紹介したイベントの情報
会場 桑名市博物館
住所 三重県桑名市京町37-1
入 館 料 一般(高校生以上) 500円 / 小中生以下 無料
開館時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(ただし祝日は開館、翌日休館)
参考リンク:桑名市博物館
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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▼美しい輝きを放つ村正
▼「徳川にたたる」と言われる伝説の妖刀
▼両刃の村正はレア
▼銘が長いのは自信作なのだという
▼刀身が黒いのは保存のために漆が塗られたから
▼短くともしたたるような光は変わらない
▼入り口に展示された無銘にが異彩を放つ
▼試し斬りの年月日、結果などが詳細に記載されている刀剣も展示
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