西九州新幹線の開通を前に、2021年6月に影響を受けそうな在来線の区間を実際に乗ってみてのレポートも、3本目のこれがラスト。1本目は予定が未定な新鳥栖~武雄温泉間を特急「みどり」で、2本目は肥前山口~長崎間を特急「かもめ」に乗ってみての感想をお伝えした。

最後は、西九州新幹線のルートと被る(走る場所は微妙に違うが)長崎から大村(新大村)間を、在来線で試してみようというヤツだ! さっそく行ってみよう。

・2021年6月

ということで、皆さんこんにちは。本日は2021年6月17日。特急「かもめ」にて長崎入りして時間切れとなったため、駅前のアパホテルで一泊した筆者。このアパホテルは中の階段から長崎駅がよく見えるので、駅のファンにはちょっとお勧めかもしれない。

そんな長崎駅は絶賛工事中。ちなみにトップに使用した写真は、まだ残されている4代目の駅のものだ。現行の5代目駅舎ではない。


まだ特急「かもめ」が現役だが、駅では早くも西九州新幹線「かもめ」をセレブレートする感じの展示が。恐らく近隣の幼稚園に協力を仰いだのだろう。

GO!GO!かもめロード” と記された紙が貼られており、そこには幼稚園児たちが “「新幹線かもめ」にのっていきたいところ” が書かれている。


筆者が幼稚園児だった頃は、この手のに迷わず「うんち」とか書いてブン殴られたり(昭和)したものだ。しかし長崎の幼稚園児は素直なのか、皆ちゃんと書いている。

今日はこれからJR長崎本線の各駅停車で浦上まで行き、そこで再び特急「かもめ」にて諫早へ。諫早からは快速シーサイドライナーに乗り換えて大村へ。大村で各駅停車に乗り換えて隣の諏訪駅に行き、そこからはタクシーで新幹線のために建設中の新大村駅を目指すというプラン。

ちなみに新幹線は新大村を出たら嬉野に向かう。既存の電車で嬉野に行くものは存在しないため、新幹線が走る予定のエリアを既存の鉄道で試すのはここまでだ。


・大村へ

まず乗ったのはこちら。その辺のモブ列車だと思っていたのだが


中がめっちゃ広くて綺麗だった。調べたら2020年に運用が開始されたばかりの最新車両だそう。びっくりするくらい誰も乗ってなかったのだが、こんなに綺麗な車両を貸し切り状態にできて気分が良かった。


そして、またしても「黒いかもめ」に乗って(結局、今回の旅で「白いかもめ」に乗ることはできなかった)諫早まで行き、青いカラーリングがクールなシーサイドライナーに乗車。


ちなみにこれは、2021年6月30日に引退するキハ66・67形の車両。この記事を書いている2022年の6月にはとっくに消えている。正面は味のあるくたびれ方をしているが


側面は正面よりピカピカだった。


このレバーを倒してロックを外すタイプの窓と銀色の窓枠も、最近は見なくなった気がする。あと、そこに彫り込まれた落書きも。


小中高生だと思うが、ここに相合傘を彫り込むのは全国的にあった風習なのだろうか。関東でも電車の窓枠の相合傘は昭和~平成の定番だったと思う。


はたしてH・KさんとY・Sさんは結ばれたのか? そして日田商の栗山さんはシーサイドライナーに名前を彫ったことを覚えているのか? 在りし日のキハ66・67形の姿と共に、彼らの思い出の片鱗もインターネット上に残しておこう。

あ、待てよ? 日田商とは、恐らく日田商業高校の略だろう。ググってみたら、それは大分の藤蔭高等学校が1954年から1985年の間に使用していた名称だと判明。しかしシーサイドライナーは1988年からだ。

そこでキハ66・67形の歴史をWikipediaで見ると、この車両の登場は1975年だが、シーサイドライナーになったのは2001年だった。その前は、福岡県の小倉から大分県の日田市までを走る日田彦山線や、福岡県久留米市から大分県大分市まで走る久大本線で使用されていたという。

フフン、日田商は日田駅前にあるので、ほぼ間違いない。栗山さんがこの車両に名前を残したのは、高い確率で1975年から85年の間だろう。今は50~60代と思われる。あとは昔のタウンページから日田市の栗山さんの家をリストアップして……。


・到着

筆者の灰色の脳細胞が、見ず知らずの栗山さんの素性を暴く勢いで活性化したところで、大村に到着。大村線に乗り換え、諏訪駅にて下車。駅前でタクシーをキャッチし、工事中の新大村駅まで連れて行ってもらった。


道すがら運転手さんに「新大村周辺って、なんかあったりするんですか?」と聞いたところ「何もないですね(笑) コンビニくらいですかね(笑)」と。まあ、見える限りでは住宅街だしな。ときどき畑。


しかし、これから何か商業施設をつくるらしい……と話してくれた。恐らくそれが、2022年3月に大村市が発表した「新大村駅前市有地開発事業」のことなのだろう。新大村駅前にデカい分譲マンションと、デカい商業施設ができるもよう。

そんな話をしながら走ること10分ほど。盛られた砂利と草しかない工事現場の向こうにハイカラなビルヂングが!


これが!


建設中の新大村駅!


さすがは新幹線用。めちゃくちゃデカい。ちなみに駅前の、将来的に商業エリアになると思しきエリアは、今は移転した「長崎県立ろう学校」の敷地だったもの。この学校は凄まじく立派な歴史を有し、あのアレクサンダー・グラハム・ベルやヘレン・ケラーとも縁があったようだ。

なんとなく見に来てみたが、まあ、普通に工事中っすね。かなり立派な駅舎であることは確かだが、立ち入ることは当然できないし、遠くから見て終わりだ。ちなみに駅を背にした時の風景はこんな感じ。


大村市のプレスリリースを見た感じ、駅前の各種施設の完成は新幹線の開業よりも後になりそう。しばらくの間は、これと言って観光客が楽しめる場所など無いと思われる。しかし、地元民的には鉄道による移動の便が死ぬほど向上するだろう

週末に日帰りで嬉野温泉で入浴し、酒飲んで帰ってこられるようになるし、仕事なり買い物なりで長崎市まで出る気軽さもダンチだろう。現状では1時間かかるところ、新幹線なら16分だ。予定されている大型商業施設も含め、何だかんだで新大村周辺の人にとっては嬉しい変化な気がする。筆者だったら嬉しい。

長崎空港がそれなりに近いのもポイントだ。空港から新大村駅へ移動するスタイルは、主に全国各地からやってくる嬉野・武雄温泉が目当てな観光客にとって非常に便利だと思う。

なお、長崎空港から新大村駅まで移動して新幹線で長崎まで行くスタイルは、あまり流行らない気がする。既存の長崎空港から長崎市内までつなぐリムジンバスは、運賃1000円で約40分。価格と時間的に、空港から新大村まで行って新幹線にて長崎に向かうメリットはあまり無いと思われる。

ということで今回はこの辺で。えっ、タイトルにシーサイドライナーって入ってるわりに、クソほどもシーサイドライナーのシーサイド感を報じてねぇって? それは後で、「たびら平戸口」という本土最西端の駅から始まる地獄の試みの記事で出そうかなって。

参考リンク:PR TIMES長崎県営バス、Wikipedia[1][2][3]、長崎県立学校
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼新大村駅は内部の見学ができるもよう。