写真撮影の合言葉「はい、チーズ」。被写体にシャッターを切るタイミングを知らせるための合図だが、なんか最近聞かなくなった気がする。
これは「はい、チーズ」が廃れたのか、それとも私(中澤)がオッサンなので集合写真を撮る機会がないだけか……どちらなのだろうか。そこで20代女子複数人に「はい、チーズ」を使うかを聞いてみたところ……
・使わない
全員から「使わない」という返事が返ってきた。でしょうね。なお、「はい、チーズ」という言葉は知っており、どういう場面で使われるかも認識している模様。子供の頃、写真を撮られる時に聞いたから知ってはいるけど使わないという感じのようだ。
つまりは、死語になっているわけだが、では「はい、チーズ」を今の子はどう言うのだろう? 撮影の合図って必要なものだと思うが。
・23歳女子の声
この疑問について答えてくれたのは、ロケットニュース24でマンガ『日々限界集落』を連載しているうどん粉先生。12話「減」でも描かれている通り、うどん粉先生は大学生である。現在、23歳の女子の撮影の合図は……
うどん粉先生「決まった掛け声などは特にありませんね! 強いて言うなら「撮るよ~」くらいでしょうか…?」
──それシャッターを切るタイミングがぼんやりしてないですか? 「はい、チーズ! パシャ!」はリズムとキレがあるから直後なのが分かりますが、「撮るよ~……パシャ!」はいつ来るのか分からない気がするんですけど。
うどん粉先生「う~ん、通りすがりで「撮ってください」的に撮影を頼まれた場合、ひょっとしたら「はい、チーズ!」も使うかも? でも、古いな~とは思いますね。「3.2.1…」とカウントダウンすることもあります」
──とのこと。どうやら「はい、チーズ」に代わる新しい言葉はないようだが、むしろうどん粉先生の話を聞いて新たな疑問が生まれた。それは通りすがりの場合は掛け声があるという点。これって何が違うんだろうか?
・新たな疑問
思い当たるのは被写体との関係性の違いである。自分も含む友達同士の集合写真と観光地とかで撮影をお願いされた場合では、親しさが全然違うだろう。っていうか、観光地は赤の他人だ。しかし、なぜ親しいとかけ声がなくても良いのか? 昔は、家族とか友達同士でも「はい、チーズ」って言ってたのに。
この疑問の答えらしきものが見えたのは、姉妹サイト・Pouchの記者あんすずに話を聞いていた時のこと。現在、27歳であるあんすずも、同じく「はい、チーズ」を使わない1人である。
あんすず「なんかかけ声がいる時は、『撮りまーす!』って言って撮ります。でも、友達同士だと何も言わないでスマホのシャッターボタンを連打する感じが多いかも」
──と、やはりかけ声は適当なのだが、重要なのはスマホのシャッターボタンの連打という点だ。
・当たり前すぎて気づかなったけど
言われてみたら、私もスマホで写真を撮る時は何枚も撮影している。そして、スワイプして写真フォルダを開き良いのを選ぶのだ。ひょっとして、かけ声が適当になった答えはここにあるのではないだろうか。
当たり前になりすぎて全く思い当たらなかったのだが、考えたらスマホは写真の取捨選択が超手軽である。例えば、これが「はい、チーズ」全盛期のフィルムカメラだったとしたら、写真を確認するのに店に現像に出さないといけない。
また、フィルムの枚数も24枚とか36枚とかだ。自然とシャッターチャンスは一期一会であり、一発勝負。ゆえにミスれない。そのため、シャッターを切るタイミングが「ここ」と分かりやすい合言葉が必要だったのだ。
一方、膨大な量が撮れて取捨選択が簡単にできるようになったスマホでは1枚ミスッても別の写真を使えばいい。無言でのスマホのシャッターボタンの連打はその最たる行為と言えるだろう。
・「はい、チーズ」が廃れた原因
そう考えると、うどん粉先生の「撮影を頼まれた時は分かりやすいかけ声を出す場合がある」という証言は、一発勝負感が高まった結果なのかもしれない。通りすがりで頼まれた記念撮影的なのって、パシャパシャ何枚も撮る感じではないし確認も適当だけどミスれないからな。
というわけで、「はい、チーズ」のような分かりやすいシャッター合言葉がなくなった原因は撮影の仕方が変わったから……かもしれない。言葉は世につれ、世は言葉につれ。流行を極めた「はい、チーズ」の黄昏に世界の変化を感じた私であった。なお、異論は認める。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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