
大きくうねる波と小舟、遠景にちらりと見える富士山。有名すぎる浮世絵「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」だが、画像にあるのは版画でもイラストでもない。素材は木!
木目を活かした半立体造形で、木彫りの工芸品のように見えるのに、実は2000円少々で手づくりした「貼り絵」キットなのだ。
・木はり絵手作りキット「神奈川沖浪裏(小)」税込2200円
木で作る貼り絵「木はり絵」といい、福島県の小さな会社で作られている。キットの中には4枚のシートと説明書が入っている。開封した途端、はっきりと「木の匂い」がする。
素材がそれぞれ違って、ヒノキ、スギ、クルミ、アサダの突板だ。作品によってはトチ、キハダ、マツ、サクラ、ケヤキなども使用。すべて国産の木だという。
驚くのが、木の種類によって色や質感がまったく違うこと。この違いを利用して、絵を描いていく。
まずは1枚目のシートを台紙に貼って、土台を作る。今回はハガキサイズのコンパクトな作品。
続いて2枚目以降のシートを切り出していく。紙のように薄いので、ハサミやカッターでOKなのだが、やはり紙とは切り心地がまったく異なる。部分的に刃が通りにくいところもあって、とくに曲線を切り出すのはちょっと難しい。
紙ほどの柔軟性はないので、力加減を間違うとパキーンと割れてしまうことも!
しかし木材を扱うのは新鮮で楽しい。「日本は世界有数の森林国家」といわれるが、少なくとも筆者にとっては身近ではない。山林が「ない」わけではなくて、周囲には飽きるほどあるのだが、できれば近づきたくない場所である。
昼なお暗く、うっそうとしており、トゲトゲした樹皮や下草も恐ろしく、決して「遊び場」にはならなかった。むしろ延々と続く針葉樹林は気が滅入るほどである。
田舎だと「山を所有している」という家は結構あるが、とにかく手がかかり「負の財産」のイメージもあるかもしれない。たぶん筆者が見てきたのは「手入れされず荒れた山林」なんだな。
キットを製造している「木はり絵工房きのわ(KINOWA)」では、針葉樹の植樹で生態系が崩れた山林や、放置された山林を憂い、国内の林業の再生を目指しているそう。
むむむ……これは難物だ! 「神奈川沖浪裏」の最大の特徴ともいえる大波。複雑な輪郭を切るのが難しそう!!
3DCGもドローンもない時代、想像だけでこのダイナミックな表現を考えた当時の浮世絵師って、なにげにすごいと思う。
ハサミの刃先だと大きすぎるので、少しずつカッターを突き立て、なんとか切り出した。少々根気がいるが、やっていることは単純なので詰まることはない。
あとは2枚目、3枚目と重ねて立体的にしていくだけだ。接着は木工用ボンドで十分。同時に作っていた別のプラモデルで、塗料が溶けたり接着剤が糸を引いたりと阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図が生まれていたので、天然素材の優しさにホッとする。
ただ重ねるだけじゃなく「スペーサー」という厚紙を挟む部分もある。厚紙が土台となって、より「浮いた感じ」に仕上がるのだ。
3Dアートのように飛び出した!
最後のパーツ。ちょっと目つきの悪い鳥。
船の舳先(へさき)に貼るのだが……こんな鳥「神奈川沖浪裏」にいたっけ???
完成である! 「ビギナーレベル」なので製作時間は2時間ほど。手軽に取り組める小品だ。
にもかかわらず木目が美しく、引き込まれるような臨場感! 木の色そのままで味があるし、印刷もきれいにのっている。やったことは「切る」「貼る」だけなのだけれど、ものすごく手が込んでいるように見える。
スペーサーを入れた部分は、はっきりと浮き上がっているのがわかる。もとの浮世絵が遠近感のあるデザインだから、なおさら複雑な構図に感じる。見応えのある1枚になった!
実は浮世絵シリーズは全体のほんの一部で、ファンシーな「おとぎ話シリーズ」や、リアル志向の「世界遺産シリーズ」、子どもが喜びそうな「動物シリーズ」など、数え切れないほどのキットがある。
けれどイチオシはやはり浮世絵シリーズ。よく酒にはその土地の食べ物が1番合う、なんていうが浮世絵×国産材の組み合わせが最強に思う。
今回の「神奈川沖浪裏」は小サイズだが、同じデザインでレギュラーサイズ(A4 / 税込6600円)もある。そちらは製作時間10時間の大作なので、興味があればぜひ!
参考リンク:木はり絵工房きのわ(KINOWA)
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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冨樫さや

















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