平成5年(1993年)から翌年にかけて、我が国は記録的なコメ不足に見舞われた。テレビのニュースは連日コメ関連の話でもちきり。政府は緊急措置として諸外国からコメを輸入したのだが、日本人の口に合わず「買い占め」や「抱き合わせ販売」などが社会問題化したのだ。
当時小学生の私ですら “米屋に押しかける群衆” の映像を見て「日本が大変なことになった」と震えたものである。しかし結局、田舎だったためか我が家では国産米が普通に入手でき、騒動の影響を1ミリも受けなかった。
この『平成のコメ騒動』が終わりかけたころ、母が「記念に」と1度だけ『ブレンド米』を購入してきたことがある。あれ、かなりウマかった覚えがあるんだけど、誰か覚えてないかな?
・今はなきブレンド米
あの素晴らしいブレンド米をもう一度……と米屋へ行ってみたところ、当時のような配合のブレンド米は現在、一般的に流通していないらしい。
それならば……ということで、アジア食材店でタイ米を買ってきたぞ。最近のタイ米は香りの良い『ジャスミンライス』が人気だが、当時の世相を考慮して一番安いヤツにしておく。1kgで500円ほどと、国産米と同価格帯だ。
タイ米は長細くパラパラの粒が特徴で、「タイ風チャーハンやカレーに添えればウマい」というのは誰もが知る事実。
ただしコメ騒動の当時、多くの人が求めたのは “日本風ライスの代用品” だった。ブレンド米を「おいしくない」とする意見は以前からあったが、ひょっとして “代用品” と捉えるから「違う」となるのではないか?
今回は日本米とタイ米をあえてブレンドし、ブレンド米そのものの味について検証してみようと思う。 “鍋で炊く” 等の手間は一切排除。普通に炊飯器で炊くこととする。
当時のブレンド米について正確な比率は不明なため、とりあえず日本米とタイ米を1 : 1の割合で混ぜて炊飯してみよう。
10分ほど蒸らし、炊飯器のフタを開けると……
ワーーッ! おいしそうな米の香り〜!!
箸で食べられる程度の粘り気もあり、パッと見は普通の日本米と見分けがつかない雰囲気だ。
・当時を知る者たち
幸いにも当サイトには、平成のコメ騒動の体験者が多く在籍している。これがブレンド米であることを隠したうえで、彼らに試食してもらうことにしよう。当時中学生だった砂子間記者は、何やら遠い目をして思い出を語り始めたぞ……わけを聞こうじゃないか。
砂子間「中学校の林間学校で食べたカレーを思い出すなぁ……」
聞けば彼の通っていた中学校では、米騒動の真っ最中に林間学校が行われたらしい。夕飯のメニューはカレー。「米を1合ずつ持ち寄るように」と各生徒に通達が出ていたのだが、中にはタイ米を持ってくる生徒が複数名いたようだ。
ちなみに砂子間記者が当時住んでいたのは埼玉県。「当時はどこの家庭も国産米を手に入れるのに苦労していた」と語る。そっか……やっぱり地域によって状況が違ったんだなァ……。
「あの時のタイ米と国産米が混ざったライスの味に似てるよ、懐かしいな〜」と、カッコイイうえに100%正解を言い当てた砂子間記者。彼にブレンド米キングの称号を与えたい。
続いては “他人が握ったおにぎりを食べたくない派” のサンジュン記者。嫌そうにブレンド米を口にして一言……
サンジュン「古米(こまい)みたいな味だな!」
パラパラとした食感がウリのタイ米を古米呼ばわりとは、国際社会の風上にも置けぬ野郎である。彼の出身は千葉県だが国産米の入手ルートを持つ家庭で育ち、当時ブレンド米をほとんど食べなかったのだという。コメ騒動ってホント、人それぞれだったんだな〜。
最後は当サイト随一の貧乏舌(びんぼうじた)の持ち主として知られる原田記者。
原田「モグモグ…………うまい!」
原田「さては新米……だね!?」
・個人的黄金比率を大発表
コメ騒動の当時、小学生だった原田記者(福岡県出身)は一応ブレンド米を食べた覚えがあるそうだ。しかし「米の細長さに驚いた記憶しかない」のだといい、やはり一様には語れないのがコメ騒動なのだろう。
私はこの後、比率を変えて様々なブレンド・パターンを検証。個人的には “国産米7 : タイ米3” の割合が「日本人が主食として違和感なく、おいしく食べられる黄金比率」であると結論づけた。
これなら日本風白米の体裁は保ちつつ、硬めで奥深い味わいが楽しめる。のり巻きやTKGだってイケちゃうほか、中華風チャーハンにも向いているぞ。各自の好みによる部分もあるかと思うので、最初は国産米多めから試してみてほしい。硬めご飯派の人には絶対オススメである。
考えてみれば、私はあのコメ騒動が人生初のタイ米体験だった。何かの代用品ではない『ブレンド米』というグルメが、28年の時を経て再び脚光を浴びる日を待つ。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.