料理は時に大いなる旅をすることがある。例えばカレーは、インドで生まれイギリスを経由して日本に伝わった。そんな日本のカレーが「ジャパニーズカレー」としてイギリスでブームになっていたことは以前の記事でお伝えした通り。食の逆輸入だ。

今、天丼においてもこの現象が起きている。シンガポールで天丼がブームになり、爆誕した新発想の天丼が、人知れず日本に上陸しているのだ。

・シンガポール発の天丼

その店の名は『天丼 琥珀』。日本橋のコレド室町テラス1階に2021年3月29日にオープンした店である。見た目は全く普通の天丼屋の顔をしているが、実はこの店、シンガポールでは行列店

メニュー看板をよく見ると、シンガポール、フィリピン、マレーシア、カナダに展開されており、この店が日本初出店であることが分かるはず。現在、シンガポールでは天丼ブームが起きており、その天丼ブームの中で生まれたのがこの店なのだ。まさに逆輸入。

・シンガポールを感じた点

ところで、食の逆輸入と言えば、カレーでもインドとイギリスと日本の味が生まれたように、旅によって変化していくケースが見受けられる。この天丼屋において、私(中澤)がまずシンガポールを感じたのはタレだった。

メニューをよく見るとタレが「オリジナルだれ」と「スパイシーだれ」の2種類から選べるようになっている。スパイシーだれってなんぞや? そこでメニューに「名物」と書かれていた『琥珀天丼(税抜き1000円)』をスパイシーだれで注文してみたところ……


マジでスパイシー


天ぷらを食べると舌にピリピリくるほどの刺激。漂うアジアンな香りは好き嫌いが分かれそうだが、とりあえずご飯は進む。

・天ぷらは本格的

それにしても、天ぷらのクオリティーが高いのは良い。サクッと軽い衣にプリッとした海老、フワッと柔らかい鶏天など、身がしっかり詰まっており、天ぷらの味にちゃんと1000円分の価値があるように感じた。それだけに、オリジナルだれを選んで注文すると海外発とは思えない。普通に高クオリティーな日本の天丼となる。

しかし、寿司ジャパニーズラーメンの例を踏まえると疑問に思わずにはいられない。それは「なぜこの店の天丼は日本人が食べてもウマイのか?」ということ。その理由の1つは、この店の源流に起因すると思われる。

・姉妹店

実は、この店、富士そばの関係会社なのである。富士そばが海外展開していることはご存じの方も多いと思うが、『天丼琥珀』は海外で生まれた姉妹店。そこでシンガポールで開店サポートも行ったという富士そば広報の工藤さんに話を伺ってみた。


工藤さん「シンガポールでは天丼がブームなんですね。文化的にチリソースなどのスパイシーなソースも根付いているため、『天丼人気+スパイシーソース』で大人気になっています。ちなみに、琥珀の天丼だれは唐辛子(チリ)&天丼タレです」

──とのこと。聞いてみると、スパイシー天丼がシンガポールで人気な理由も頷ける。要するに、天丼の最適化。それにしても、天丼って意外と柔軟性あったんだな

シンガポールで生まれ、フィリピン、マレーシア、カナダと広がり、満を持して日本初出店となった『琥珀』。その発想には食の逆輸入のだいご味を感じるが、はたして、グローバルな天丼の旅はどこまで続くのか? 天丼の今後を見守りたい。

・今回紹介した店舗の情報

店名 天丼 琥珀 コレド室町テラス
住所 東京都中央区日本橋室町3-2-1 コレド室町テラス1‐13区画
営業時間 平日11:00~15:00,17:00~20:00 / 土・日・祝11:00~20:00
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼お通しで茶碗蒸しが出てくるのも気が利いてる

▼漬物はたくあんなのだが、大根の甘みにゆずの香りが漂っており素材が生かされた味