そのグミは、ひときわ異彩を放っていた。異彩というか、もはや別物にすら感じられた。グミ売り場に並んでいなければグミとわからなかっただろう。仮にどこかの美術館の現代アートのゾーンに展示されて「生命の営み」とか深遠なタイトルがつけられていても全く違和感がなかった。

というのも、そのグミのパッケージには商品名や味に関する情報が一切載っておらず、その代わりに丸、三角、四角の幾何学模様が前面に描かれているという、あまりに芸術的かつシンプルすぎるデザインだったのだ。大いなる謎を内包したグミを前に、筆者の心が震えたことは言うまでもなかった。

そもそも何故そんな幾何学模様が描かれているのか。パッケージ裏の隅の方にひっそりと記された説明書きに、その答えはあった。どうやらこのグミは丸型・三角型・四角型の3タイプから構成されており、しかもそれぞれが異なる食感をしているらしい。

そうした特徴ゆえなのだろう、販売元であるカンロの公式HPによれば、一応このグミには「〇△☐グミ」という商品名がついている。かつてこれほど正直なネーミングがあっただろうか。正直すぎてかえって伏せ字のような字面になっているがいいのだろうか。

名前だけならまだしも、グミの形状をそのまま反映した大胆なパッケージに何より震えを禁じ得ない。同じく公式HPに書いてあったことだが、日本を代表する世界的デザイナーである佐藤オオキ氏がグミ自体のデザインも含めて手掛けたのだという。

なんでも同氏のラブコールによってカンロとのコラボが実現したとのことで、彼は商品の着想を得た経緯について「2週間、世の中にあるグミを食べまくり、自分の中のグミ像をリセットしました」と語っている。グミへの熱量が比類なさすぎやしないだろうか。

ともあれ、限界まで文字情報を省いた前衛的なグミはかくして誕生し、2020年12月1日に全国のコンビニ限定で発売され、筆者の手に渡った。ちなみに価格は216円だった。

パッケージを開けて中身を取り出すと、3種のグミたちがとうとうお目見えした。「本当に丸、三角、四角だ……!」という、絶対にここでしか生まれない妙な感動があった。

まずは丸型から食べてみる。口に含んで感じたのは、歯がふんわり沈み込むような柔らかさ。まるで小さな大福のようで、いわゆるグミの食感からは良い意味でかけ離れていた。味は甘味と酸味のバランスが取れたグレープ味。食べていて幸福感があり、実に美味しい。

他2種も同様にグレープ味だが、前述したように食感が異なる。続いて食べた三角型は、もっちりとしていながらも歯切れ良いという面白い食べ心地だった。一体どうしたらこんな食感になるのかと不思議がっているうちに、次々と口の中に放り込んでいた。

最後に四角型だが、こちらはうってかわって、歯を押し返すような弾力のあるハードな仕上がりだった。なかなか噛み切れないほどに硬い。しかしその独特の噛み応えが段々とやみつきになってくる。しっかりとグミの味が堪能できるのも嬉しい点だ。

どの形状も全く食感が似通っていない。そのおかげで食べ終わる頃になっても飽きないし、楽しい。パッケージからも中身のグミからも、こちらに新たな刺激を届けよう、グミの新境地を見せようという気概を受け取ることができた。

決して奇抜なだけの商品ではない。満足感につながる確かなクオリティがある。僭越ながらこの「〇△☐グミ」に評価をつけさせてもらうなら、間違いなく二重丸だ。

参照元:カンロ「〇△☐グミ」
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼ジッパーが縦方向についており、パッケージを横に倒して自立させた状態で食べられるのも斬新