近頃は定番商品と言われるものの定義があいまいな気がする。たとえば、不二家の「カントリーマアム」。たしかチョコチップクッキーだったと思うのだが、公式サイトを見たら期間限定で酪農ミルク・北海道チーズ・ほうじ茶ラテなど幅広く取り揃えている。日清「どん兵衛」や赤城乳業「ガリガリ君」らも同様で、バラエティが豊かになりすぎて何が定番だったのか忘れそうになる。

まるか食品の「ペヤング」もまた、 “いろんな味ありすぎ問題” に取り上げられるべき商品のひとつではないだろうか。やっかいなのは、ペヤングには廉価版の「ペヨング」があることだ。そんなペヨングに塩やきそばが出ていたので紹介したいと思う。ただでさえ貧相……いや、質素なペヨングが塩やきそばになったら中身はあるのか?

・ペヨングの声

ペヤングならびにペヨングを愛する人にとって、もっとも大事なのはあのソースのはず。ソースがあれば、麺を食いきってもソースの味だけで白飯が食えるという人もいるだろう。実際、2018年にはソース単体で販売しているだけに、まるか食品もそれだけ強い自負があるはずだ。「うちのソースは美味い」と。

それにも関わらず、ペヨングを塩で食わせようというのか? ただでさえ、本家ペヤングよりも “位(くらい)” の低いペヨングを、あえて弱い武器(塩)で戦わせようというのだから、まるか食品も酷なことをする。もしも私(佐藤)がペヨングだったなら、きっとペヤングにこう言うはずだ。


「ペヤング兄さん、助けて……。塩じゃ戦えないよ」


最強武器のソースを奪い、塩を持たせて市場に放り出すとは。まるか食品は鬼のようだ。スーパーの一角で買ってくれる人がいるかどうか、不安な心持ちで陳列されているペヨングのことを思うと私は涙を禁じ得ない。「ペヨングよ、買ってやろう。私が買ってやろう」。ペヨングの心の叫びが聞こえてような気がして、買って帰らずにはいられなかった。


・目をつむっても……

私は税別108円でペヨングの塩やきそばを購入。さっそく開封して中身を見ると、かやくと塩ソース、それに麺が入っている。パッケージがなければ、これがペヤングといっても気づかないだろう。だが、これはペヨングだ。ペヤングではない。作り方は説明するまでもないが、かやくを麺の上にあけ……。


お湯を注ぎ、


3分後にお湯を捨てる。


そして塩ソースをかけてよくかき混ぜるだけだ。目をつむっていたって作れる……。言い過ぎた。目をつむってたら作れないけど、それくらいプロセスは頭に入っていると言いたかった……


・十分戦える!

食べてみよう。まず匂いは、なかなか食欲をそそるものがある。久しく行っていない焼肉屋が脳裏に浮かぶのは、塩とニンニクエキスが理由だろう。あ~、ネギタン塩食いてえなあ

まぶたを閉じると脳裏に浮かぶ、焼肉屋の鉄板の姿。その上で、薄ピンク色のタン塩が次第に色づいていく様子を思い浮かべると、それだけで気持ちが満たされるようだ。ペヨングから立ち上がる湯気を嗅いでいると気分が良くなる。ハイになるってやつだ。


麺をすすると、ペヤング兄さんほど麺にコシがない。しかしそれがいい。それでいいのだ! フニャフニャの麺にソースがしっかりと絡んで麺を食うというよりも、ソースを食っているような感触。このやる気のない麺の感じ、嫌いじゃないぜ、ペヨングよ。人間だって、少し頼りないくらいの方が魅力的に見えるもんだよ、マジで。カッチリキッチリしてりゃいいってもんじゃねえぞ、ほんとに。


という訳で、塩のペヨングは悪くなかった。私には「塩じゃ戦えない」と嘆いているように見えたが、そんなことはないぞ、ペヨングよ。お前は十分戦える。いつまでも怯えているんじゃない。兄ペヤングの背中を追うのはもう終わりにしよう。これからは自分の足で歩くんだ、ペヨングの道を。さあ行け、ペヨング。明日が待ってるぞ!

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24