突然だが、あなたはコーヒーにはこだわる方だろうか。コンビニのセルフサービスから希少豆を扱う専門店まで、世の中には多種多様なコーヒープレイスがあるが、酒も煙草もやらない筆者にとってコーヒーは「贅沢な時間」の象徴だ。
豆の産地、品種、焙煎、さらには苦味や酸味、フレーバー……ワインや日本酒にも劣らない奥深さがあるコーヒーの世界で、もし自分にぴったりの豆に出会えたら、一生のパートナーになるだろう。
最近なにかと話題のサブスクリプションで、AIによる「コーヒー診断」で自分好みの豆を選んでくれ、毎月ポストに届けるというサービスがあるらしい。コーヒーのサブスクというのも面白いし、何より「コーヒー診断」なるものを受けてみたい! ということで定期お届けサービス『PostCoffee』を体験してみた。
・コーヒー診断とは
まずはサイトにアクセスして無料の「コーヒー診断」を受ける。回答はパソコンでもスマホでも可能だ。ランダムに出題される10の設問に答えるのだが、後半は性別や年代、砂糖の有無などに関する固定項目なので、個性が出るのは前半5問。
面白いのは「コーヒーに関する質問」ではないこと。例えば「どんなコーヒーが好き?」というような質問はまったくない。「好きな色は?」とか「友達と飲みに来たときの飲み物は?」というような、ライフスタイルに関する質問なのだ。膨大な回答の組み合わせから、AIが好みを判断するのだという。
これはもしや性格検査と一緒? YES / NOのような選択式の検査は相手を意識して回答を変えられるので、何を測られているのか被験者にはわからない投影法と呼ばれる検査があるのだ。
・意外な診断結果
そうやって、コーヒーとは一見関係なさそうな質問に答えていくと……診断結果が出た。筆者はオールマイティー、コーヒーは何でも飲む「バランサー」なのだそう! 筆者のカスタマイズでは月々1858円。個包装のコーヒーバッグにしたので少しだけ割高になった。砂糖やミルクの有無、お届け頻度などで価格は前後する。
正直いうと少し意外な診断だった。実は筆者は普段コーヒーの苦味が得意でなく、軽い味を好むし、何ならアメリカンを頼むときもあるのだ。もっと「ライトなコーヒーが好み」的な結果が出るかと思っていた。この時点で筆者は、このコーヒー診断に少々懐疑的になっていた……。
・ポストに投函
4日後、おしゃれなボックスがポストに投函されていた。そのままキッチンにあっても違和感のない、シンプルでかっこいいデザイン。しかもポストインなので留守でも大丈夫だし、宅配業者と対面しなくていいのは大変よい。
筆者はコーヒーバッグを頼んだので、3種×3袋の合計9袋が入っていた。もちろん豆のままや、ハンドドリップ用、フレンチプレス用、コーヒーメーカー用などとカスタマイズできる。
パッケージもシンプルだが、よく見るとナンバーが印字してあり、産地や銘柄がわかるようになっている。QRコードを読み込むと、すぐに商品ページが表示された。気に入って追加注文したいときも簡単だ。
・さっそく飲んでみよう
まずはPOS-0001と刻印された「ポストコーヒーブレンド」を飲んでみよう。単一産地の豆が並ぶ中、『PostCoffee』の名を冠した唯一のブレンドで、サービスを代表する自信作と見た。
「フルーティ・バランス・ビター」「ライト・ミディアム・ダーク」の2軸で分類されるチャートで、ちょうど中間、つまりバランス重視のコーヒーのようだ。説明書きによると「友人や家族とすごす時間。 笑顔で、明るい気持ちにさせてくれる」コーヒーだそうで、フレーバーイメージは……
「桃色の花の香りと、リンゴやぶどうのような赤く熟した果実味。 キャンディのように丸く甘い余韻」
とのこと。一見するとコーヒーの説明とは思えない紹介文だが、飲んでみると……
おお、確かに果実!
コーヒーの傾向でいうと「酸味」の強い方だと思う。普段であれば筆者は苦手なタイプなのだが、フレッシュなフルーツのような、軽くて爽やかな味がする。酸っぱいコーヒーにありがちな「刺さるような感じ」がないので飲みやすい。まるでコーヒーではないような、新しい飲み物!
・2種類目は……
次に入っていたのが「VIE-0201 ベトナム ローラン」で、「仕事の合間。 眠気を吹き飛ばして、仕事に集中」だそうだ。ひとつひとつのコーヒーにこうしてシチュエーションが設定されているのが面白い。フレーバーイメージは……
「香ばしく、甘く、ほろ苦いアーモンドチョコのような味わい。 あとくちは、シトラスのようにスッキリと清々しい」
だという。開封した瞬間、ちょっと焦げた燻製のようないい香りが広がる。分類は「ダーク」で「ビター」なので、かなり重くて濃い感じかもしれない。
飲んでみると……確かに、濃い! けれども嫌な苦さはまったくない。むしろまろやかと言っていい。苦いコーヒーを口にしたときの、飲み込むのに身構えるような不快感がないのだ。すっきりしていてスルスル飲める。
・3種類目は……
最後に入っていたのが「GUA-0901 グアテマラ ナランハレス」。チャートでは1種類目と2種類目の中間くらい。シチュエーションは「おやつタイム。 ホッと一息ついて、頑張った自分にご褒美」で、フレーバーイメージは……
「木の実のタルトが焼けたときの甘く、香ばしい香り。 洋ナシのように繊細で上品な果実味」
とのこと。飲んでみると確かに果実味があるんだけれど、1杯目の「ポストコーヒーブレンド」ほど華やかに主張してくる感じではない。ほんのり甘く、控えめに……。なるほど、ゆる〜く休憩したいときに合っている。一緒に食べるものを邪魔しない感じなので、お菓子と一緒に飲むのもいいかもしれない。
・診断結果に恐れ入った
3種類を飲んでみて、はっきり言って恐れ入った。筆者はコーヒーは割と好きな方で、ブラックで毎日2〜3杯は必ず飲んでいる。しかし、冒頭に述べたとおり苦いのも酸っぱいのも苦手なために「飲めない味」も多くて、初めて入った店では残してしまうことさえある。
自分が「子ども味覚」なせいだとばかり思っていたので、タイプの違う3種類が届いて、そのどれもが「美味しく飲めた」ことにびっくりした。「苦かったからじゃない、不味かったから飲めなかったんだ!」という事実を新発見。さらに「スペシャルティコーヒー」というものの美味しさにも驚き。
「これが本当に筆者の好み〜?」と疑っていた3種が、どれもぴったりハマり、かつ味の冒険をするのが楽しかった。コーヒーは何でも飲む「バランサー」という診断が、図らずもドンピシャだったわけだ。味の好みは狭い方だと思っていたので、新しい自分を知ったような気分。
・フィードバックでより好みに近づく
ちなみに届いた3種類のコーヒーについては「フィードバック」機能で「好き・普通・苦手」から評価することができる。そうするとどんどん自分好みにアレンジされていくそうだ。ただし、サイトの使い勝手はまだ発展途上というところで、フィードバックはいつから出来るのか? 一度フィードバックしたら修正できないのか? など戸惑う場面もあった。今後のブラッシュアップを期待したい。
産地は15カ国30種類とのことで、今回のベトナムやグアテマラの他、エチオピアやコロンビア、コスタリカ、そしてケニアも! オフラインストア(東京都目黒区)ではプロのバリスタとともに試飲や飲み比べもできるそう。
もっと安いコーヒーはいくらでもあるけれど、産地や品質にこだわったコーヒーを心から楽しむ時間というのもとても良いものだ。これからは「飲まず嫌い」しないでいろいろ飲んでみよう。コーヒーのサブスクリプションサービス『PostCoffee』、コーヒー観が変わる面白い体験だった!
参考リンク:PostCoffee
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.