中国といえば『パチモン天国』『著作権無法地帯』などのイメージがある。日本のキャラクターや店名を「パクられた!」とプリプリ怒っていた人も多いだろう。しかしそんな日本人の心に、最近では「それはそれで中国の個性」と逆に楽しむ姿勢も芽生えているような気がする。

欧米圏などでいう『SUSHI』の中に、日本人の知る寿司とは似ても似つかぬシロモノが含まれていることは知られた話だ。これが果たして中国の手にかかればどうなってしまうのだろうかと、私は期待に胸膨らませ上海の地に降り立ったワケなのだが……。

回転寿司屋の店先に置かれたメニューからは、おふざけ要素が全く感じ取れないではないか。あまりにもマトモすぎるネタのオンパレード。おいおいおい、逆に大丈夫かコレ? 頼むぞ中国……信じてる中国……ここは空気を読んでくれ……!


・褒めるところしかない

チェーン店とおぼしき『合点寿司』は、パッと見では外国とわからぬほど和風なたたずまいだ。今どき日本の寿司屋だってもっとケバケバしいものも多いというのに。入店すると元気よく「イラッシェィモァセ!」と声がかかって清々しいなぁ。

2段重ねが基本らしい寿司皿には「北海道産」「鹿児島産」などの説明書きが。1周する間に無くなっている皿が多く、日本以上に「回転寿司」のていをなしているのが素晴らしい。だいたい日本人は回転寿司に来といて注文しすぎなのである。まったくもう。

しょうゆとお茶は日本と遜色ない。

ガリも日本スタイル……。

フリーわさびってイイかも……。

「しょうゆはシャリじゃなくてネタにつけましょう」という細かい注意書きに日本へのリスペクトが感じられる。

・うまいよぉぉ

とりあえず回ってきた真鯛を取ってみた。17元といえば約270円なので日本と比べると割高だが、彼が空を飛んで来ていることを思えば全然安い。そしてネタが分厚い。切り方にも何ら不自然さはない。これでおいしかったら大変なことになるけど……

果たしてお味は……ああ、なんということでしょう!


メチャウマいは言い過ぎだけど、日本の平均よりは全然ウマい!


これ一番困るやつ!


ホタテも分厚くて炙り具合が絶妙……! 25元(約390円)。

茶碗蒸しと味噌汁のセット。非常にダシがきいていて懐かしい。茶碗蒸しにはタケノコ、味噌汁にはハマグリが静かに潜んでいる。自己主張が強いことで知られる中国において、この望外な奥ゆかしさよ……。セットで22元(約350円)。

「おすすめ」と書かれた炙りのセット(48元 / 750円)に、ようやく期待できそうな寿司を発見した。得体の知れぬ「鳥の肝」の寿司と、ウナギには謎の白い物体が乗っている。マヨか? マヨなのか? マズそう! ドキドキ!


クソっ、ウマい!


焼きたての鳥肝はまるでフォアグラ……意外にも米と合う。白い物体は恐らくクリームチーズで、ウナギの甘いタレと不思議な一体感を生む絶品……みんなも試してみてくれよな!

胃袋が限界に近づいてきた。メニューの中で異彩を放っていた「やきとり」を最後にオーダー。

メチャ辛いのが出てくるかと期待していたが……

日本の心・照り焼き味でした。


・複雑な気持ち

ちなみに合点寿司の店内で流れていたBGMは「つじあやの」。内装からメニューに至るまで、これは恐らく日本人の指導が入っているとみて間違いない。しかし驚くべきはこの真面目すぎる日本スタイル回転寿司が、異国の地でそのまま受け入れられているという点だ。

最近じゃ日本の回転寿司のほうがよっぽど奇をてらったり、外国人の好みに寄せた寿司を提供しているなんて皮肉な話である。中国人店員の包丁さばき、寿司を握る手さばきは見事なものであった。日本人が忘れかけている回転寿司の原点を中国の地に見たり……!


……と、いってもこれはあくまで大都会・上海に限った話である。中国はとっても広いのだ。いつかビックリするような寿司に出会えると信じて、今後も各地を巡っていきたいと思う。頼むぜ中国……!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

・今回ご紹介したお店の詳細データ

施設名 合点寿司 久光店
住所 上海市静安区南京西路1618号久光百货B1F
時間 10:00〜22:00
定休日 無休

▼「サーモン」だから「三文」なのかな?

▼「キングサーモン」は「帝王三文」!

▼おふざけなしのメニュー

▼使い捨ておしぼりは使用すると1元取られるしくみ

▼これが中国とはなかなか想像しづらい店内

▼ホテル近くのスーパーで売られる寿司もあまりに真面目な内容だ

1618 Nanjing W Rd, Jing An Si, Jingan Qu, Shanghai Shi, 中華人民共和国 200051