JASRACが悪い! JASRACが日本の音楽を衰退させる!! 音楽著作権の管理団体『JASRAC』が何か動く度にネットではそういった声があふれる。

事実、現在日本の音楽業界は衰退していってるように見えるが……我々一般ピーポーよりも音楽業界と深くつながっている人達はそこら辺をどう見ているのだろうか? 音楽業界に勢いがあった時代から老舗ライブハウスで店長をしている人達に聞いてみた。

・新宿LOFT

聞いた質問は「音楽が廃れたのはJASRACのせいなの?」というもの。まずは、新宿LOFT

出演者のみ知る情報として、新宿LOFTの控室からステージの間の通路には、スピッツやeastern youthなどレジェンド級バンドのセットリストが貼ってある。そんなLOFTの店長を2006年から2018年まで務めた大塚さんの回答が以下の通り。

大塚さん「音楽業界が衰退したのはJASRACのせいでは無いと思います。もちろん問題点は多少なりともあると思いますが、それが音楽業界の衰退に繋がったとは思いません」


・四谷アウトブレイク

次に訪れたのは、四谷アウトブレイクだ。まさにイメージ通りのライブハウスのアングラ感を地で行くこのハコは、ダイヤモンドも石コロも同じ鍋に入れて煮込んだような雰囲気。

だが、いつだって新しい表現は、意味不明なものの中から生まれる。そんなライブハウスシーンを14年間見守ってきたのが、現店長の佐藤 “boone” 学さん。佐藤店長の回答は……

佐藤店長あまり関係ないように思います。衰退というよりは他のエンターテイメントや楽しいことが爆発的に増えて、音楽に使える時間とお金が減ってきているだけ。

SNSをはじめ個人が発信力を持って来てる今だからこそ、新しい音楽や表現も生まれていて面白くなってきていると思います。話はそれますがJASRACの包括契約に関しては個々のアーティストに、公平に分配されるなら喜んで払いますが不透明なままなら払いません


・下北沢CLUBQue

最後に、話を伺ったのは下北沢CLUBQueの店長・二位徳裕さんである。氣志團、エレファントカシマシ、くるり、フジファブリック、ハイロウズ、フラワーカンパニーズ、怒髪天、ミッシェルガンエレファントなどなど、これまで出演したバンドはそうそうたる顔ぶれ。

バンドマンの間では言わずと知れた下北沢のレジェンドライブハウス・CLUBQueで20年以上シーンを見てきた二位さんは、以下のように語った。

二位徳裕「率直にJASRACが音楽を衰退させたとは思いません。それより2000年以降レコードメーカー、各事務所、ロックがうるおいすぎて、勘違いしたのでは?

もちろん、僕らの周りには音楽愛があるプロダクションやメーカーの方々が、沢山いらっしゃって日夜身を削って音楽に従事している姿を見る。けど、一部の人による青田刈り状態もヒドイ。

当時、ロックがうるおうキッカケは街の小さなライブハウスと、そこで純粋に、時に激しく、奇想天外に音楽を奏でたバンドマンたちだった」

「ところが、ビジネスに明け暮れる業界人がその面白さに気が付いた頃から今まで、小さな芽を刈りまくって酷い有り様になってる。輸入禁止の生き物を連れて来て高値で売るような商売と同じ。そんなことが続けば、その生物は絶滅するだろう。

例えれば士農工商で言う『農』に当たるのがライブハウスと下層バンドたち。その末端を大事にしない業界が廃るのは当たり前だと思う

──なんと、長くシーンを見て来たライブハウスの店長たちは全会一致で「JASRACは関係ない」という答えだった。また、二位さんによると現在は逆にチャンスでもあるのだとか。

二位徳裕「2019年以降、音楽が金を生まない時代だからこそ、しばらくは業界人に見つからずにこっそり進化を遂げるチャンスがあると思う。そして『ある日大発見!』……そうなることを望んでる

そんな中で、JASRACが私利私欲で運営せず、本来の音楽家の権利を守ることに従事すればいい。そのために決死の覚悟で働くなら日本の文化の未来は明るい。ガラパゴスのイグアナからまで、市民税を取るようなことはしなくてよいのでは?

──とのこと。なお、全てのコメントは店長たちの個人の意見であり、ライブハウスを代表するものではないのでご留意いただきたい。

なお、今回、答えてくれた店長たちは、2019年6月17日に下北沢CLUBQueで行われるトークイベントに出演予定である。ライブハウスの歴史や裏事情などを話すこのイベント。質問コーナーなどもあるので、最前線の裏側を知りたい人はぜひ。

「ロックは死んだ」と誰かが言った。しかし、最前線では、それぞれが今も戦っている。これを「JASRACが悪い」で終わらせていいものだろうか? 最後に二位さんがつぶやいた言葉をお伝えして筆を置きたい。

「ノーフューチャー……それもロックだけど、ジョー・ストラマーが生きてて、今物言うなら『ロックこそ生き残って未来へ繋げ』と、そう言うと思う」

・イベント情報

イベント名 ライブハウスの秘密を暴く!“ロックライブハウス and イベントヒストリー” トークショウ!! at 下北沢CLUBQue
住所 東京都世田谷区北沢2-5-2ビッグベンビルB2F
問い合わせ番号 03-3412-9979
入場料 無料(1drink+1food付き1000円)
時間 開場18:30 / 開演19:00

佐藤店長の波乱万丈インタビューはこちら

二位徳裕さんのインタビューはこちら