私(hirazi)はゴリゴリの男だ。縦横無尽に生えしきる体毛。身長だって179センチと決して低くない。似ている有名人は、狩猟生活でおなじみのYouTuber・カメ五郎さんである。

こんな可愛いらしさとは対極にいる私が、まさか痴漢にあうなんて微塵も思っていなかった。念のため書いておくが、痴女ではない。痴漢である。

・埼京線にて

たまに埼京線を利用する私。痴漢が多い路線であることは何となく風の噂で聞いていたが、それまで特に気に留めたことはなかった。なぜならゴリゴリの男だからだ。しかし私は、その埼京線で悲痛な体験をすることになる。

1年ほど前だろうか。平日の昼下がり、私は埼京線で池袋駅から渋谷駅に向かっていた。満員ではないものの席には座れないくらいの混み具合で、ドア付近ならユッタリと電車ライフを過ごすことができそうだ。

私はドアの前に陣取り、吊革につかまりながら YouTubeの画面をボーっと眺める。数分後には人生で5本の指に入るほどの恐怖を味わうことになるとも知らずに……。

・距離が近い大男

経由駅の新宿に停車。私が陣取るドアとは反対側のドアがプシューっと開き、なだれ込む人の群れ。そこへ……乗り込んできた。これから私に根深いトラウマを植え付ける、その男も……。

男は私よりも身長が高く、190センチ近くはあっただろうか。ちなみに『グラップラー刃牙』の花山薫が190.5センチだ。年齢は30代半ばくらいで、B系風のファッションを身にまとい、とにかく威圧感がハンパない。

そんな大男が、吐息を感じるほどの至近距離に乗ってきたのである。もう体臭だって匂っちゃうくらいの超至近距離。スペースがあるんだからもう少し離れてくれよ……! と、私は心の中で叫んでいた。

・触れてる?

ガタンゴトン……ガタンゴトン……。揺れる車内。いつになく静かだ。しかし新宿駅を発車してしばらくすると、違和感は突然やってきた。悪夢の時間の始まりである。

ん……あれ? 私の大切なところにソフトな感触。それも、電車の揺れに合わせて何度も何度も……。ま、まぁ電車は揺れてるし、多少のボディタッチは仕方ないか。なんて最初は甘く考えていたが、いや違う! コイツ……絶対わざとやっている……!!

そう、なんと例の大男が、私の大切なアレを わしづかみにしていたのである。モミモミ! モミモミ!! 「こいつ何も言えないヤツだな、ニヤリ」とでも思ったのだろうか? その行為はどんどんエスカレートしていく。待て待て、さすがにフィンガーの動きは不可抗力じゃすまされねぇぞぉぉぉぉぉ!!

・まさに金縛り

だがしかし、動けない。相手は190センチの大男だ。そんな圧倒的な強者に痴漢をされた時の、背筋が凍るほどの恐怖。これは体験しないと分からないであろう。金縛りのごとく何も言えない、動けない。声を上げれば良いだけじゃんとか、移動すれば良いだけじゃんとか、そういう次元の話ではないのだ。 

そして苦しかったのが周囲からの視線である。いや、実は恐怖で周りは見えていなかった。しかし、これは完全なる被害妄想かもしれないが、他の乗客から「こいつ痴漢されてるよ、ぷぷぷ」なんて蔑まれている気がして恥ずかしいのなんの! もう、怖さと恥ずかしさのダブルパンチ!!

渋谷駅までの5分間。じっと恐怖と恥ずかしさに耐えていたせいか、その時間が永遠のように感じた。埼京線コワイ……。男の人コワイ……。

・逃げるように降車

ドアが開くと同時に最大限の大股で降車する。振り返ると、なんとあの男も電車から降りて来たではないか! ヤバイヤバイヤバイ!! 私はとにかく早足で逃げることだけに集中した。まさにリアル青鬼である。

現場からの脱出に集中するあまり、気付くと私は予定とはまるで違う改札口に降り立っていた。ハッと周囲を見渡してみると……どうやらあの大男はついて来ていないらしい。ふーーーーーーーっ。安心感で一気に体の力が抜けた。冬だというのに、体は汗でびっしょりになっていた……。

・痴漢されたから

ゴリゴリの男である私がこれほどの恐怖を味わったのだ。女性の視点になって痴漢をされた時のことを想像すると、身の毛もよだつ思いである。だからだろうか? この体験をしてからというもの、電車に乗る際に私はできる限り女性から離れるようにしている。

『我が身をつねって人の痛さを知れ』と言う ことわざがあるが、まさに女性の気持ちを理解するには十分すぎる強烈な体験であった。今なら心の底からこの言葉が言える。痴漢はダメ! 絶対!!

執筆:hirazi
Photo:RocketNews24.