先立ってRICOHの「GR Ⅲ」についてお伝えしましたが、「CP+2019」の見どころは他にも沢山! 正直多すぎて記事にすると10本くらいいきそう。しかしそれはアウトということで、急きょこの1本にまとめることに!

紹介するのは世界的に注目度がぶっちぎりなNikonの「58mm F0.95 Noct」と、世界初公開となるSONYの「135mm F1.8 G Master」。予想をはるかに超える出来だったパナソニックのフルサイズ機「LUMIX S1R」。そしてNikon、SONY、OLYMPUS三社のちょっと面白い自動認識システムの進化についてだ!

・「F0.95」とは

最後までひたすら行列ができていたのが、Nikonブースのヤバいレンズ「Noct」の体験コーナー。Zマウント用レンズのロードマップに掲載されていた本レンズのスペック、特に「F0.95」という明るさに、プロからアマチュアまで世界中のカメラ好きがザワついたのはまだ記憶に新しい。

レンズは明るければいいというわけではない……それはわかっているものの、それでも明るいレンズが気になってしまうのがカメラ沼に落ちた者の宿命……ではないだろうか? そもそも「F0.95」という明るさのフルサイズ向けレンズは、ライカの伝説的なレンズ「Noctilux F0.95」の独壇場。余裕で140万円くらいするヤバい奴である。

数値的なスペックでは、中一光学からソニーEマウント向けに「Speedmaster 50mm F0.95」というのもあり、筆者も過去に購入。感想としては、正直開放での撮影は難しい感じだった。なんだかんだでF2.8くらいまで絞らないと写りがイマイチなのだ。結局使わなくなって二束三文で売ってしまった。

「F0.95」をそのまま数値どおりに開放で使用して、満足する結果が得られるのは実質ライカの「Noctilux」だけというのが実際のところな気がする。そんな領域にあのNikonが参戦したのだ。

言うまでも無いことだが、Nikonはレンズメーカーとしても一流。どのメーカーのユーザーだろうと、Nikon製の「f0.95」が気にならないカメラ好きなんて、ソイツはモグリに違いない。


・価格未定、発売時期未定のマニュアルレンズ

ちなみにNoctの体験は出来たものの、データの持ち帰りなどはアウト。三脚に固定されていたので持ってみた感じなどはわからないが、見た目的に結構重そうだ。サイズは大三元レンズのズームレンズ並みだが、これでも単焦点のマニュアルレンズである。

そして肝心の写りだが……ヤバい。本当にヤバいとしか言えない。「F0.95」の明るさでここまでシャープな写りの世界など、今まで一度も見たことが無いのだから許して欲しい。

ピント面は紙どころかシャボン玉の膜並みに薄く、かなり慎重に焦点を合わせる必要がある。しかし程よい硬さのピントリングのおかげで、慎重を要する作業ながらもストレスは無くむしろ楽しい。

開放でのシャープさは半端ない。恐ろしいのは、開放で既にシャープなので絞っても余り変らないところ。絞りは被写界深度の調節のためだけにあるとでも言わんばかりである。お値段は未定とのことだが、きっとお高いんだろうなぁ。さすがに諭吉3ケタ人未満だとは思うが……。

他にも色々調べたかったのだが、見とれているうちに制限時間が終わってしまった。言うまでもなく体験ブースは大盛況で、筆者が列に並んだ時は30分待ちくらいだったと思う。恐らくこの土日は一般来場者も増えるため、もっと混むと思われる。それでも並んで体験する価値はあるだろう。間違いなくこのレンズ越しでなければ見ることのできない世界が広がっている。


・SONY「135mm f1.8 GM」

お次はSONYの「135mm f1.8 GM」。こちら、そもそもプレスリリースがあったのは CP+ 前日の2019年2月27日。タイミング的に「これ絶対CP+に持ってくるだろ」とニヤッとした方もいるのでは?

まさにその読みどおり、SONYが持ってきてくれました! しかも! 発表翌日かつ世界初公開だというのに、手持ちのα7シリーズに装着して撮影していいという太っ腹な対応!! まあカウンターの前だけなので撮影できるものは限られてくるが、それでも操作できるというのはうれしいもの。

写りやAF速度に関してはもはや説明の必要も無いかと。おなじみGMクオリティな最高の性能が保証されています。発売日は4月19日で、お値段は23万5000円。時期的にもお花見のお供にいいのではないでしょうか? 金欠が加速する


・フルサイズミラーレス界のダークホース

次に紹介したいのが「LUMIX S1R」。パナソニック製のフルサイズミラーレス機だ。ここで少し、失礼かつぶっちゃけた話をしよう。長い間パナソニックのカメラというと、画質面でも性能面でも特筆すべき点はなかった。そこまで熱心ではない人が使うカメラというイメージのあったLUMIXブランド。

少なくとも筆者はそんなイメージを持っていたし、同じような人は多いと思う。そんな雰囲気が、GH5のビデオ性能でちょっと流れが変った気がする。それでも静止画撮影はまだまだ……なんて思っていたら、まさかのフルサイズかつプロユースを想定した「S1」および「S1R」をぶちこんできた。

とはいえそんなに期待はしてなかったし、最初のモデルだからどうせ荒削りだろうと思っていた。のだが……体験してみた結果いい意味で裏切られることに。


・描写クオリティはガチ

こちらもかなりの人気かつ、体験時間がNikonブースなどよりも長くとられているため待ち時間がとても長かったので、触れたのは「S1R」の方だけ。なお、筆者が体験したのは「50mm F1.4」と「70-200 F4」の2本。描写に関してはかなり作り込んできたなという印象。

正直NikonやSONYの大三元と普通に勝負できるクオリティだと感じた。カメラの使い勝手も非常によく、ボタンの配置なども気が利いていた。手に取ったばかりにもかかわらず、20秒くらいの説明で何の疑問も感じず扱えた。インターフェースの造りが優れていないとこうはならないものである。

ボディの剛性も相当しっかりしたもので、握った瞬間に造りの良さが伝わってくるレベル。ファインダーの見え方も非常に鮮明。厳格にテストできたわけではないが、動くモデルさんを前に遅延などは感じなかった。こちら、直前までNikon Z7やSONY α7RⅢのファインダーを覗いていたうえでの評価である。

動画はよく分からないが、静止画の描写に関しては「S1R」も全然アリだなと思う。ただ唯一欠点を挙げるとすれば……重いのだ。正確に何キロだったのかはわからないが、たぶん50mm単焦点をつけた状態で2キロ位あったんじゃないかと思う。でもいきなりこのクオリティとは、パナソニック恐るべしである。


・自動AFの進化先

最後にちょっと面白いなと思ったのが、SONY、Nikon、OLYMPUS三社の、自動AF機能の進化について。今回の CP+ で初めて知ったのだが(もしかしたら発表自体初だったのかもしれないが)なんとNikonのアップデートで瞳AF(瞳にオートフォーカスする機能)が来るというではないか。

そもそも筆者がSONYのαユーザーなのは、別にSONYファンだからではない。というか筆者は、SONYもNikonもCanonも、メーカーのロゴはクソダサいと感じており、ぶっちゃけカメラの軍艦部から消してほしいとすら思っている過激派である。メーカーに誇りを感じているNikonファン、SONYファン、Canonファン全ての敵といってもいいレベル。

そのうえでα7シリーズを愛用している唯一の理由が、SONYの「瞳AF」なのだ。なお、Canonの「EOS R」を使っていない唯一の理由は、α7シリーズより発売が遅かったからというだけのこと。メーカーそのものに愛着は無く、瞳AFが使えてフルサイズセンサー搭載なら大体どこでもいい。

Nikonの瞳AF実装の話を聞いて「買い替えにはNikonも候補に入れるか」なんて思っていた矢先、SONYブースで「動物の瞳AF」が実装予定だという。動きが人間よりも読めない犬猫の瞳にAFとは、かなり魅力的ではないだろうか。

「キリンもAFできます? 僕キリンな気分なんですよ」と頭の悪い質問をしたところ、現在は犬と猫だけ、かつ両方の目が写っていないと認識できないと教えてくれた。しかし、いずれは多くの動物を……という答えだった。

かたくなに瞳AFを取り入れなかったNikonがついに参入。SONYは動物までカバー。そんな話を聞いた後に、OLYMPUSの「OM-D E-M1X」の体験コーナーにて今度はまさかの情報をゲット。なんと、E-M1Xはあらゆる乗り物の「運転席」にAFし続けるという。

思わずそこで、「Nikonは瞳AF導入で、SONYは動物でしたが、OLYMPUSさんは運転席ですか。何でまた?」と聞いたところ


OLYMPUSブースの人「乗り物は、ロマンですから」

筆者「戦闘機のコックピットとかもいけるんですか?」

OLYMPUSブースの人「戦闘機もテストをクリアしました」

筆者「出来ない乗り物ってあります?」

OLYMPUSブースの人「テストしたので、ほぼ全ての乗り物でイケるとおもいます!」

筆者「どうしてそこまで」

OLYMPUSブースの人「乗り物は、ロマンですから」


あえて言おう、こいつ等(良い意味で)馬鹿である。なんというか情熱の注ぎ込み方が変態的だ。コックピットAFを語るブースの方の目のギラつき方もアブない感じだった。

しかしこの三社三様の瞳AF(コックピットAF)の技術進化はなんだか面白い。ここのところ、どのメーカーも技術的に完成度が上がりまくった結果、メーカーごとの特色のようなものが薄れつつあるように感じていた筆者。それはそれで別に構わないのだが、すこしつまらなく思っていたのだ。

しかし今回 CP+ で知った自動AF機能の進化には、カメラの未来に多様化を感じずにはいられなかった。恐らく人間も動物もコックピットも、根幹にある技術は全て同じだろう。進化の方向性は、メーカーがどういった顧客にアピールするのかによると思われる。ポケモンで言うところのイーブイみたいな感じだ。

実際にSONYの瞳AFが初めて出たとき、一度体験しただけで他の選択肢が霞むほどの便利さだった。きっとOLYMPUSのコックピットAFも乗り物撮影においてはかなりの武器になるのだろう。

また動物の瞳AFも、ペットが主な被写体という方だったり、あるいは猫や犬を専門とする写真家なら垂涎の機能なはず。そしてNikonも瞳AF導入を機に何か独自の進化をみせてくれるかもしれない。

おっと、他にも語りたいことはいっぱいあるが、そろそろ時間的に終わりにしなければならない。とにかく、めちゃくちゃ楽しいので全てのカメラ好きは「CP+」にGO!

参考リンク:CP+2019
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼「Noct F0.95」三脚にZ7と共に固定されているのを操作しながら、スマホでモニターに出力された映像を撮影したもの。左手でカメラを操作しながら右手でスマホ……という感じなので、斜めになっていたり途中でずれたりするのはご容赦を。