島国の宿命なのか? 日本はなにかと「ガラパゴス化」しているらしい。独自の文化が発達しやすい反面、あとから「ええーっ、そうだったの!?」と世界の流行を知ることも。まさにそんな事案が発生していたので紹介したい。

ここ数年、中国のある老舗ブランドの靴が「カッコイイ」と欧米でチョイ注目。それを受け破産寸前から華麗に復活、むしろ「持ってる人はオシャレ番長!!」くらいの勢いだというのだ。その名は「回力(フイリー)」。またの名を「WARRIOR(ウォーリアー)」である。

・レトロブランド「回力(フイリー)」、破産寸前からの華麗な復活

1927年、魔都・上海で産声をあげた「回力(フイリー)」。すでに90年以上の歴史がある老舗靴ブランドだ。ブランドヒストリーによるとその名は「回天有力」という言葉を意味するそう。

「回天」とは「天下の形勢を一変させる」という意、それほどの力を持ってほしい……そんな意味が込められた名前なのだという。ちなみに英語名は「Warrior」、戦士である。

70年代、80年代は中国人なら誰もが履いていたというが、『アディダス』や『ナイキ』など海外ブランドの中国進出にともない一気に「ダサい」扱いに。破産しかり、長らく世間から「失踪」していたが、あることをキッカケに世界で注目! その人気が中国に逆輸入され、いまや若者の間で「レトロ可愛い」と人気であるという。華麗な復活のキッカケとなったのは……

・ハリウッドセレブが履いて火がつく / ファッション誌や映画にも登場!

それはハリウッドセレブが履いていたという噂! 『指輪物語』でブレイクした俳優オーランド・ブルームが映画『ニューヨーク、アイラブユー(2008年)』で着用したと話題に。実際は別の上海老舗ブランド「飛躍(FEIYUE)」の靴だったのだが、これがキッカケとなり回力に世界の目が向けられたのだという。

その後、レトロファッションブームが来ていたフランスで雑誌『ELLE』が特集を組み、さらに映画『ゼログラビティ(2013年)』ではアルフォンソ・キュアロン監督が「映画本編に映りこんだかはわからない」としつつも、中国宇宙ステーションの中に回力の靴を忍ばせたのだとか。

そんなこんなで世界で「カッコええやん」と話題に。確かに力強く「回力」と漢字が刻印されたシューズは、新鮮でクールだ。そんな話題になっていたなんて情報、日本に入ってきていただろうか。

・履きやすくてかわいい!! 

気になったので、現地・上海へGO! 店をめぐって回力を購入してみた。コンバース風の布製の靴である。色柄もシンプルな単色系からチェックやゼブラ柄、はたまたアジアンテイストなものまでさまざま。履きやすく、見たところ縫製もしっかりしている。これが現地価格だと80元前後(約1400円)というのは、コスパも優秀だと言えるだろう。

また他メーカーだとなかなか見つからない小さめサイズがバッチリなのが嬉しい。なかなかレアな22.0cmをゲット。履いてみたら、まぁ「私のために作られたのでは?」と思うほどピッタリで履きやすかった。こりゃエエわ!

街の人、誰に聞いても「回力」の存在を知っている。たいがいの靴屋さんで取り扱いがある。しかしどうせなら専門店を見てみたいじゃない。旗艦店に行きたいじゃない。ようやくザックリした住所を手に入れたのだが、旗艦店というには、ふさわしくないというか下町すぎる場所だ。

・旗艦店を探して

ということで半信半疑で、上海をバイクで走り回った結果、ついに旗艦店にたどりついた! ブランドの歴史などの石碑があるあたり旗艦店風味であるものの……世界に羽ばたいていったブランドのわりには、非常にこぢんまりとした店であった。

試し履き用の椅子の愛しさと切なさといったらない。

いや、そんな飾らない姿も味わいなのかもしれない。ちょっと有名になったくらいでは浮かれない。この90年間で、酸いも甘いも両方を経験したブランドなりのプライドなのだろうか?

それはわからないが、回力イイ! 履きやすくて、レトロデザイン&サイズが豊富なのがイイ!! ……が、ひとつ注文をつけるなら、もっと「回力」のロゴを推してもいいんじゃないかということ。

よく見ると、すべてのモデルに「回力」刻印が入っているわけではないのだ。正直、「WARRIOR」だけだとちょっと背中がムズ痒い……漢字ロゴの方が断然個性があっていいじゃない。んもぉぉぉぉ、そのあたりわかってくださいよー!

中国といえばパクリ、低品質というイメージが強烈すぎて見落としがちだが、なかには世界も認める好(ハオ)なものだって存在するのだ。何も考えずに手に取ってみると新しい世界が広がるかもしれない。

参考リンク:人民網新浪財経赢商网新浪時尚新浪娯楽(中国語)

Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

▼回力(フイリー)の旗艦店


▼創始者、商標の取得、デザイナーなどなど歴史が詳しく説明されている

▼マイ回力(フイリー)、100元くらい(約1700円)

▼台湾の「花布」を思い起こさせる大胆な花柄がイイですね

▼でも何よりもイイのはこの「回力」の刻印! ロゴもレトロで素敵。欧米で注目されたというのもわかる気がする

▼こういうモデルもあるよ! 日本の通販サイトで8900円で売っててビックリ。現地だとやはり80~100元前後だ

▼好(ハオ)、好の一言です

Ping Liang Lu Pai Chu Suo, Yangpu Qu, Shanghai Shi, 中華人民共和国 200085