どんな仕事でも長く続けていくことは大変だ。特に飲食店の場合、開店後に10年続くお店は稀で、ほとんどが何らかの理由で閉店してしまう。東京・中目黒で18年間続いたお好み焼き屋も、2018年1月末で閉店するという。
その店先に書かれたメッセージがとても切ない……。この先、日本中でこんな言葉を目にすることになるかもしれない……。
・昨夏のバイト募集はかなり奇抜だった
そのお店「八じゅう」は、中目黒銀座の中ほどにあるお店だ。私(佐藤)は2017年2~9月までの約半年間、毎週かかりつけの歯医者さんに通っていたので、このお店の前を何度となく行き来していた。
振り返ると昨年夏に、今に至るきっかけがあったように思う。アルバイトを募る文言には次のように書かれていた。
「アルバイト大募集 助けて下さい!! おじさんばかりで死にそうです(笑)
【待遇】
毎日お好み焼きを食べれます
週4日以上、自転車支給(中古)
嫌だったらバックレ可
help me」
面白いお店だなあ、なんて軽い気持ちで見ていたけど、この時にはかなり瀬戸際に立っていたのかもしれない。夏場のお好み焼き屋は、かなりしんどいはずだ。私自身もおじさんなので、その辛さは想像がつく。
それにしても、嫌なら「バックレ可」とは思い切った条件だ。それくらい切羽詰まっていたのだろう。
・それから半年を経て……
それから約半年が経った。私は歯の治療が終わり、最近は月に1度のメンテナンスで中目黒に通うのみ。2018年最初のメンテナンスのために、歯医者さんに向かう途中にお店を見ると、アルバイト募集は行っていない。人員の問題が解決したのか? と思ったら……
「18年間ありがとうございました
1月31日をもちまして従業員高年齢化のため 八じゅう中目黒店を閉店することに決めました。長く愛していただき本当にありがとうございます!
中目黒のみなさん 愛してます」
切ない、切なすぎる。あの好条件、中古とはいえ自転車まで支給してもらえて、嫌ならバックレOKだったのに、それでも若い人は来なかったのか……。
東京のど真ん中の中目黒で、「従業員高年齢化」が理由で閉店してしまうとは……。日本の高齢化が確実に見える形で忍び寄っていると言えそうだ。今後、日本中で似たような問題が起きるのではないだろうか?
そういえば、3年前にも新宿御苑の中華料理店の店主が、夏に熱中症にかかって料理場に立てなくなり閉店したことがあった。
・入店してみた
話を「八じゅう」に戻そう。上のようなお知らせがあったということは、1カ月後に私が歯のメンテナンスでここに来ても、すでにお店はなくなっているということだ。今回が最後のチャンスか……。そう思い、ランチで入店してみることにした。
店内に入ってみると、昼はお好み焼きではなく、尾道ラーメンのみを提供していた。ラーメン単品(700円)かご飯・キムチのついたセット(750円)。私はラーメン単品をトッピング全のせ(1050円)でオーダーした。
しょうゆベースのスープは澄んでおり、見た目にあっさりした印象を受ける。
しかし飲んでみると、背脂の旨味とコクが効いており、見た目を裏切る深い味。
平打ちの細麺とスープの相性はバツグンにいい。寒い日にこのラーメンをすすると、腹の芯から温まって、お腹も心も満たされる。この味を再びここで味わえないと思うと残念だ。
・渋谷店は継続
なお、渋谷区宇田川町には姉妹店があり、そちらは営業を継続するとのこと。八じゅうのお好み焼きが食べたかったら、渋谷の店舗に行ってみよう。
・今回紹介した店舗の情報
店名 こなもん屋 中目黒 八じゅう
住所 東京都目黒区上目黒2-16-14 シャトーネオクムラ1F
営業時間 11:30~15:00、17:00~01:00 / 土曜17:00~01:00 / 日祝16:00~24:00
定休日 不定休(2018年1月31日をもって閉店)
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24