テレビのバラエティ番組を見ていると、よく耳にする言葉のひとつに「スベる」がある。お笑い芸人のネタやトークがウケなかった場合に用いられる言葉で、会場がシーンとなってしまう場面を指す。この言葉を聞けば、多くの日本人は即座に状況を理解できると思う。

では、この言葉を英語で表現する場合、なんと言うのだろうか? 笑いの文化が異なる海外で、「スベる」に当たる言葉は存在するのだろうか? そう思い、日本在住のアメリカ人の話を聞いたところ、思いもよらない答えが返ってきた!

・ボケとツッコミ

そもそもアメリカと日本では笑いそのものが違う。たとえば、日本の「漫才」に相当するものがアメリカにはない。当然「ボケ」と「ツッコミ」という役割もなく、主流はスタンドアップコメディ(1人によるパフォーマンス)である。「ツッコむ」という文化がないようだ。それを踏まえて、当サイトの英語版ライターでアメリカ人男性のケーシーさんに次のように尋ねた。


佐藤 「日本ではお笑いの世界で「スベる」って表現がある。ギャグとかがウケなくて、空気がシーンとしてしまう感じ。そういうの、アメリカでもあるのかな? あるなら、なんて言うのか教えて欲しい」

ケーシー 「アメリカはあまり2人で漫才するシステムがなくて、「ツッコミがないからシ~ン……」って雰囲気は作りにくいかも。アメリカのお笑いは大体1人芝居(stand up comedy)。そのために「シ~ン……」となると、「あれ? 芝居が止まっちまった?」と受けとられて、あまり笑ってもらえないかもね」


やはりツッコむという文化がないので、「ボケっぱなし」になったとしても、それが「スベッた!」と受け止められないようである。その上で、彼はこう続ける。


ケーシー 「たぶん「スベる」っていう笑いの概念がないので、特に英訳が思い浮かばない。何か思いついたらまたメールします」


なんと! 「スベる」という概念がないらしい!! となると、今になってふと思い出されることがある。それはお笑いコンビ『ピース』の綾部祐二さんの渡米だ。突然渡米を宣言して、1年近く日本に居て、ようやく本当にアメリカに渡った彼

アメリカンドリームを掴みに行ったと思うのだが、先のケーシーさんの意見を聞くと、別の理由が想像できる。それは、アメリカでは何をやっても、「スベる」心配がないからなのでは?

とにかく笑いの文化そのものが根本から違うアメリカで、どこまでやっていけるのだろうか? 影ながら綾部さんの活躍を応援したい。

執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24