ひとくちに家庭料理といっても、その家だけに代々伝わる “なんだかよくわからないオリジナル料理” というものが、たまにある。誰でも食べてると思っていたのに、大人になってからハッと気づくのだ。「え、ウチだけ?」……と。

そんな “ウチだけだったんだ” 的な家庭料理を紹介するのが、1年ぶり4回目の「誰も知らない伝統レシピ」のコーナーだ。今回、私・沢井メグがお伝えするのは、ある中国青年のお宅に伝わる家庭料理だ。メニュー名は『ジャーニュウロウ』。衝撃的にウマかったので、ご紹介したいと思う。

・料理上手のケンちゃん

この料理を作ってくれたのは、中国の「青海省」から来日した青年だ。チベットに隣接と言えば、結構な内陸部である。サッカーの中村憲剛選手にソックリだったので、仮に “ケンちゃん” と呼びたい。

ケンちゃんは日本語が絶望的に苦手だったのだが、料理の方はかなりの腕の愛されキャラ。ある日、みんなで家庭料理を持ち寄って食べようという話になり、彼がその場で作ってくれたのが、この料理である。

【材料】


牛肉の薄切り:250グラム
玉ねぎ:1個
ニンニク:1かけ
塩:適量
コショウ:適量
孜然粉(ズーランフェン):大さじ3~4
※量は好みで調整。いわゆるクミンのことだが、中国産の「孜然粉」を使った方が風味が増す気がする

【作り方】

1.牛肉は食べやすい大きさに、玉ねぎはくし形切りにする

2.アッツアツに熱したフライパンに油をひき、孜然粉(クミン)を大さじ1入れてよくなじませる

3.ニンニクを入れる。香りが立ってきたら、肉も投入し塩コショウで味付け

4.肉にある程度火が通ったら、一度、皿にあける。そして玉ねぎを炒めよう!

5.4の肉をフライパンに戻し、残りの孜然を入れてよく混ぜる

──以上! 完成!!

食べた瞬間、ハオチィィィィィィィッッッ(好吃 / おいしい)!! 非常に中国的ウマさだ。味を一言でいうと「中国屋台の羊肉串みたいな味」だ。節操なくクミンをブチこむので、もはや牛肉の風味なんかしない。ただのスパイシーの塊である。

だがそれがいい! 食中毒を恐れ、中までガッツリ火を通す中国。鮮度の低さに負けないように、過剰なまでに味付けする中国。しかしそれでいてクドくなく、大草原を思わせる爽やかな風味がする。日本のレシピサイトで「牛肉のクミン炒め」と検索してもこの味は出てこないだろう。

ほぼ日本の食材でこの味が出せることに、涙しそうになった。

・オリジナルの名前

材料だけを見ると非常にシンプル、どこにでもありそう。だが、この料理を「誰も知らない伝統レシピ」にカウントしたいのには訳がある。それは料理名だ。ケンちゃんはこれを「zha niurou(ジャーニュウロウ)」と呼んでいた。「niurou(ニュウロウ)」とは牛肉のことだが、「zha(ジャー)」って何? 「炸(zha / 揚げる)」のこと? そんな私の疑問に彼は中国語でこう言ったのだ。

「漢字はありません。ウチではそう呼んでいます」

ケンちゃんちの料理だった。

・オッサンのワキの香りという声も

あまりにも美味しいので、いろんな日本人に勧めているがそのうち何人かは「ウマすぎ! なんかオッサンのワキの香りがするけど、激ウマ。この白飯泥棒ッ☆」と評価していた。調べたところ、「クミンの香り=ワキガのニオイ」に感じる人もいるそうだ。

もしかしたら、香りが苦手な人もいるかもしれないが、味は間違いない。羊肉串に似ている気もする。羊肉串が無性に食べたくなったとき……中国に無性に行きたくなったときに作るのもオススメだ。

Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

▼こちらが孜然粉(ズーランフェン)、クミンのことだ


▼白飯が異常に進む

▼「ジャーニュウロウ」の漢字や意味に心当たりがある人がいれば教えてほしい。方言なのかな……

▼中国の羊肉串が好きな人には

▼とくにオススメだよっ☆