突然だが、皆さん! 中国料理と聞いてどんなものを思い出すだろうか? 餃子? 麻婆豆腐? チンジャオロースー? ……だけじゃないのが中国!! 長~いお付き合いがありながら、中国には日本人にあまり知られていない激ウマ料理が、まだまだ山のように存在するのだ!

ということで、沢井メグがそんな中国料理を粛々と紹介するコーナー『現地日本人にも超絶愛されているのに、なぜかイマイチ日本でメジャーでない中国料理』。第2回は「魚香肉絲:ユーシャンロースー」。これ、魚って言っておきながら実は肉料理! 日本料理にはない発想にハマる日本人が多いのである。

・魚って言ってるのに魚は入ってない

たいていの中国料理は、料理名に「材料」や「味」、「調理法」が入っているものだ。たとえば『炒飯』は文字通り「炒めたご飯」だし、『青椒肉絲(チンジャオロースー)』は「ピーマンと細長く切った肉」の料理という意味。

では『魚香肉絲:ユーシャンロースー』は魚が入っているのかというと……否! 豚肉と野菜の炒めものである。この食感が独特! お肉が日本では食べたことがないほどプリンプリン! 適度な酸味と豊かな甘味、控えめな辛さが軽いアクセントになり、ご飯が進む進むゥゥウ! そんな料理なのだ。

しかし、なぜ肉料理なのに「魚」とつくのか。知り合いの中国人が、こんな話を教えてくれた。

『中国の内陸部にある四川省。ある日、一人の子供がこんなことを言いました。

子供「カーチャン、お魚が食べたいよう」

母(ううッ、うちはいま魚が買えないのよ……せや! 肉をつかってナンチャッテ魚料理作ったろ!)』

マジか。調べてみると、ほかに同じストーリーで登場人物が全員大人だったり、「余った魚料理のタレで肉を焼いたら激ウマだった」など諸説あるよう。だが、とにかく「肉を使って、魚料理風に仕上げた」だから「魚香」なのである。

そんな、肉なのに魚の味!? 魚香肉絲の作り方は以下のとおり。

・作ってみよう!


【材料】2人分
豚ヒレ肉:200g
タケノコの水煮:適量
キクラゲ:3~4枚
ショウガ:ひとかけ
ニンニク:ひとかけ
トウガラシ:1本
トウバンジャン:小さじ1/2
※本来なら「泡椒」というトウガラシの漬物を使うが、日本では入手が難しいので乾燥トウガラシとトウバンジャンで代用

(肉の下味用)
塩:小さじ1
片栗粉:小さじ1
酒:小さじ2
卵白:1個分

(味付け用のたれ)
黒酢:小さじ3
砂糖:小さじ2
塩:少々
片栗粉:小さじ1
水:適量(片栗粉が溶け切る程度)

【作り方】

1.豚ヒレを細切りにし、「下味用の調味料」に5分ほどつけておく。

2.待っている間に、ショウガ、タケノコを細切りに。ニンニクとネギ、トウガラシはみじん切りに。キクラゲはもどして、乱切りにしよう!

3.「味付け用のたれ」の材料を全て混ぜておく。

4.フライパンに油を多めにしき、1の肉を投入。肉がバラバラになるように、箸でほぐしながら炒める。

5.肉が白っぽく色づいたら、一度、お皿にあける。

6.フライパンに油を足し、トウガラシを入れる。香りが立ってきたら、ニンニクとショウガを投入。

7.続いて、キクラゲ、タケノコを炒めよう!

8.野菜に火が通ったところで、肉をフライパンに戻す。

9.ネギとトウバンジャンを入れ軽く炒めてから、3のたれで味つけ! 汁気がなくなったら完成だ。

・なぜ日本で有名になりきれないのか

出来上がったものを早速食べてみると……あああああ、この食感がたまらん! 肉はしっかり火が通っているのに、まるで新鮮なお刺身みたいにプリップリ!! 中国人シェフによると、卵白に漬けて多めの油で焼いていることがポイントだという。炒めるのではなく、油通しにすれば、もっとプリプリになるそうな。

そして、このぽってりとした甘酸っぱさがイイね! 香る程度の控えめなトウガラシの香りが、鼻孔をくすぐると、食欲も倍増。ご飯にかけると最高である。

うむむ、こんなにウマいのに、なぜ日本で有名になりきれないのだろう。似た名前のチンジャオロースーは完全に市民権を得ているというのに……。

それは、日本では「肉料理を魚料理風に仕上げる」という発想が理解されにくいためではないだろうか。四方を海で囲まれ、魚が豊富な日本では、そもそも肉を魚風にという発想自体が意味不明。

さらに、なまじ漢字が読めるため「魚香肉絲」という名前が、かえって何料理か伝わりづらく敬遠されているのかも? 美味しいのにねえ! スルーするのはもったいない!!

なお、この作り方は、私・沢井が中国で食べたものを勝手に再現したものであり、もしかしたらあなたの知ってる魚香肉絲とは違うかもしれない。そもそも、中国でも店によって、酸味甘味辛味のバランスも違うし、入れる野菜も変わってくるしね!

適当にアレンジして好みの味にしてもらえれば、これ幸い。私は、日本にいながら中国風味を味わえたら、それだけでまぁまぁ幸せだ。そして、それを誰かと共有できたなら、これ以上の幸せはあと5~6個くらいしかない。それではまた次回まで! 再見、88~!! 

Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

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