映画は、もっとも気軽に楽しめるエンタメだ。その一方で、近年、映画館に足を運ぶ人が減っているという。県庁所在地から映画館が消滅した地域もあるというが、そんな状況下で100年以上の歴史を持つ現役シアターが存在するのをご存知だろうか?
そう、明治生まれの105才! もちろん日本最古級!! 3Dや4Dが流行するなか、ほぼ当時のたたずまいで営業中なのだ。一見、時代に逆行しているようにも聞こえるが、一体どんな映画館なのか。実際に行ってみた!
・日本最古級! 城下町の映画館
日本最古級の現役映画館の正体は、新潟県上越市にある『高田世界館』。ナビにいざなわれ進んで行くと、目の前に広がるのはコンパクトで落ち着いた街並みだ。
看板を見つけたものの、映画館のような大きな建物があるようには見えない……と思ったら! 通りから少し奥まった場所に、パッと白亜のお屋敷が現れたではないか!!!! これが日本最古級の映画館なのだ。
・レトロで素敵な外観 / 劇場 → 映画館という歴史
同館は、1911年(明治44年)に劇場としてオープン、1916年から映画館として営業を開始している。幾度か名前を変え、現在は『高田世界館』として「NPO法人 街なか映画館再生委員会」が運営しているそうだ。
そんな歴史ある建物は、一見すると洋風だが、よくよく見ると屋根は瓦ぶき。「擬洋風建築」と呼ばれる和洋折衷なたたずまいで、当時のハイカラ文化そのまんまである。
そして、中も超ノスタルジック!! ロビーには古めかしい掛け時計にインベーダーゲーム。レトログッズがいっぱいだ。さらにスクリーンがあるホールのドアや天井も、明治~大正を思わせるモダンな細工がちりばめられ、一般の映画館では見られない窓、2階席、そしてステージまである。さすがは元劇場。その名残なのだろう。
支配人の上野迪音(うえの・みちなり)さんによると、さすがにロビーの壁などは修繕されているそうだが、基本的に当時のままなのだという。
・映画館で映画を見るという文化
レトロ建築好きとしては、その場にいるだけでテンションがあがってしまうが、実際に映画を鑑賞してみると更なる発見があった。同じ映画館でもシネコンとは随分と印象が違うのだ。
シネコンはどこの地域に行っても大体同じつくり。“話題作” がまんべんなく上映されており、どの席でも著しく見え方が違うこともなく、保証された安心感がある。いわば、映画を快適に見るための「ハコ」。
だが、同じ映画館でも高田世界館は違う。結論から言うと、単なる映像鑑賞の場ではなく、「映画館で映画を見るという文化」を楽しむ場所だったのだ。
美しいレトロ建築のなかで上映される支配人厳選の映画、DVD化されないものもあり、まさにここでしか出会えない作品も多い。
座席は場所によって見え方が異なるが、それが演劇を見るようでいい。1階席も2階席も両方座ってみたが、日常を切り取ったような邦画なら1階がいいし、『オペラ座の怪人』なら絶対に2階席で見たいものだなぁ。
一方、ロビーではお客さんとスタッフが熱く感想を語り合っていたり、私(沢井)が訪れた夏場には、幕間に甲子園のビール販売みたいに座席までアイスクリームを販売しに来てくれたりと終始ワクワクしっぱなし! 帰る頃には、作品も雰囲気も全部ひっくるめて、とても豊かな気持ちになれたのだった。
・ライブ感がプライスレス!
よく「映画館で1800円も払うなんてもったいない。レンタルなら300円くらいで見れるのに」という声を聞くが、高田世界館のあの空気感、ライブ感はプライスレス! 映画館で映画を楽しむのに最高の場所である。
シネコンでは1本見ればお腹いっぱいな私(沢井)も、あまりの居心地の良さについ連続で2本見てしまった。贅沢したなぁと思うが全く後悔はない。
全国からわざわざ高田世界館を訪ねる人が多いというのも納得。ほかでもない高田世界館でこの映画を見たいんだ、と思う気持ちにも納得だ。
・今回ご紹介したスポットの詳細データ
名称 高田世界館
住所 新潟県上越市本町6丁目4-21
Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
▼現存する日本最古級の映画館に行ってみた!
▼入口を抜けると、奥にはこんな立派な建物が!!
▼なんと文化財だ
▼ロビーはとっても味わい深い
▼内装は昔ながらの劇場。この雰囲気がたまらない
▼……! この机は!!
▼インベーダーゲームだ!
▼スクリーンはこんな感じ。ステージと2階席があり、ライブなどのイベントも行われている
▼ステージから見た客席。
▼天井もきれい。360度、どこを見てもワクワクする
▼支配人の上野さん。上映作品の選定は支配人が行っているそうだが、その選球眼はソムリエと呼びたくなるほど! 1日中、世界館で映画を見ていたくなってしまう
▼ちなみに、現在は『この世界の片隅に』を高田世界館の雰囲気で味わいたいと、多くの人が訪れているそうだ。その気持ち、納得である(上映は1月15日まで)