いくらテレビが大きくなっても、いくら配信サービスが充実しても、劇場で映画を見ることの素晴らしさには到底敵わない。この感動を早く我が子にも味あわせてあげたいと思うのだが、映画館に小さい子供を連れていくのって難易度高いよなぁ。暗いし、音はデカいし、絶対泣くし。

という世のママパパに教えてあげたいのが、現在公開中の『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』だ。なんとこの映画、「真っ暗じゃない照明。やさしい音量。泣いても大丈夫。」という、我が子の映画館デビューにはうってつけの作品なのである!

・『シナぷしゅ』が映画化

民放初の0~2歳児向け番組『シナぷしゅ』(テレビ東京系列)。その劇場版の全国公開が2023年5月19日よりついに始まった。メインキャラのぷしゅぷしゅと、新しい相棒キャラ「にゅう」が宇宙への冒険を繰り広げる──。というのが本作の基本ストーリーだ。

と言っても、この作品は普通の映画とはだいぶ趣を異にしている。まず上映時間。たっぷりじっくり120分……もあったら子供がブチギレるため、約40分とコンパクトに抑えられているのが特徴だ。通常の『シナぷしゅ』が22~23分であることを考えると、そこまで長くは感じないはず。

料金も変則的で、座席の利用有無に関わらず、0歳から大人まで一律1000円となっている。赤ちゃんもかかるの!? と思われるかもしれないが、仮に家族3人で行ったとして3000円なら、まあ妥当な金額ではないか。

私(あひるねこ)の子供「あひるねこジュニア」は現在2歳半。年齢的に実はそろそろ『シナぷしゅ』を卒業しつつあるのだが、0歳の頃からお世話になってきた同作は私にとっても、そしてジュニアにとってもやはり特別な存在だ。これはテレビではなく、できれば映画館で見せてあげたい!



・ネタバレなし

というワケでさっそく入場。先着でもらえるプレゼント「ぷしゅぷしゅタンバリン」に早くもご満悦の様子のジュニア。場内に入ると、あちこちからタンバリンを鳴らす音が聞こえてきて微笑ましかった。もちろん上映中も鳴らしてOKだぞ。

そしてラッキーなことに、本日の座席はプレミアシートである(先着で追加料金0円だった)。人生初の映画館がワンランク上の独立シートとは、我が子ながら “持っている” と言わざるを得ない。ジュニアよ、先に言っておくが、間違ってもそれが普通だと思うなよ。

とここで、照明が暗くなった。さあ開演だ!

・暗すぎない

本来なら真っ暗になるところだが、先述したように『シナぷしゅ』は赤ちゃんにもやさしい上映環境なので心配ご無用。周りの人や物がハッキリ分かる程度の薄暗さである(映画館によって異なる可能性あり)。

もちろんそれでも泣く子は泣くが、ママパパの顔が分かるので、小さい子供でもある程度は安心できるのではないか。ジュニアはというと、びっくりして固まっていた。



いつものオープニングテーマと共に、みんな大好き ぷしゅぷしゅが登場すると、いよいよ子供たち(&パパママたち)のテンションはMAXに。初の映画だけあって、初っ端から “可愛いアクセル” を踏みに踏みまくる ぷしゅぷしゅ。悔しいけど、狂おしいほど可愛い。

新キャラクター「にゅう」の声を務めるのは、なんと俳優の玉木宏さんである。いかにも子供向け作品らしい声のトーンで「にゅう」を熱演する玉木さんだったが、そのどうしても隠しきれない玉木成分に軽く笑いが起きる場内。

でもそれも最初だけで、すぐに『シナぷしゅ』の世界観に溶け込んでいたのは流石の一言だ。物語はぷしゅぷしゅと「にゅう」が宇宙を冒険しながら、次々と登場する番組おなじみの仲間たちと交流する様子を描いていく。まさに『シナぷしゅ』オールスターズ。

・うるさすぎない&泣いてもOK

上映中は照明だけでなく音量も控えめで、ドカン! みたいな大きな音は出ないから安心してほしい。この日は0~1歳くらいの子が多く、常にどこかで誰かが泣いているような状態だったが、個人的に泣き声はほとんど気にならなかった。「あー、泣いてんなー」くらいの感じ。

見ていると、子供が泣き始めたら誰もいない端の方に連れて行って、落ち着いたらまた元の席に戻ってくるという人が多かったように思う。前の席の人は何回も往復していて大変そうだったが、それでも外に出るよりはだいぶマシだろう。肉体的にも精神的にも。



さらに上映終了後は写真タイムが5分ほど設けられており、座席から記念撮影ができるようになっていた。二人だと撮るのがけっこう大変だが、おそらくジュニアにとって一生の思い出になったはず。劇場を出た後も「たのしかったねぇ」とニッコニコで、私まで嬉しくなってしまったよ。


以上、至れり尽くせりな内容に大変満足したのだけど……実を言うと、一つだけ大きな不満もあるのだ。ただそれは『シナぷしゅ』に対してではなく、映画館に対する不満である。簡潔に申し上げよう。


_人人人人人人人人人人人人人_
> 予告が長すぎるんだよ! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


・マジ勘弁

ここまで読んだ方は、照明が暗くなった後にすぐ本編が始まったように思ったかもしれないが、そんなことはない。最初に始まったのは、なんと『トランスフォーマー / ビースト覚醒』の予告である。いやガチャガチャうるせぇ! いきなり出てきて好き勝手に変形するなと言いたい。

『シナぷしゅ』とは真逆のドンパチぶりだが、その後もスーパーマリオ、スパイダーバース、プリキュア、ピクサー新作といった話題作の予告が、約10分間にわたって流れ続けた。繰り返す、約10分である。この件に関しては本作の公式Twitterアカウントも告知をしており、その上映時間は劇場によって異なるそうだ。



もちろん映画館側の事情は痛いほど分かるし、個人的には本編前の予告もけっこう楽しみだったりする。だがしかし……! だが、しかし……!! 映画館よ、よく聞いてくれ。あのなぁ……乳幼児の集中力の短さナメんなよ……!! 10分も始まらなかったら泣くに決まってんだろうが……!!

実際、私はジュニアに何度も何度も「もうすぐだからね」と言い聞かせ、次の予告が始まるたびに「いやまだあるんかーーーい!」という空気が場内を包んだ。10分経ってようやく本編がスクリーンに映った瞬間、どこからか「やっと始まった……!」という安堵の声が聞こえてきてちょっと笑ったぞ。

・懇願

映画館、いや映画館さん。予告を流すなとは言いません。でももし可能でしたら、あと少しだけ短縮して、音量ももう少しだけ下げてもらえないでしょうか。あんなにほのぼのとした作品なのに、最初の10分間だけ異様な緊張感で死ぬかと思いましたよ。

子供たちのためにもご検討のほど、何卒よろしくお願いいたします。今度は妻と子供と3人で行きます。

参考リンク:シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド、Twitter @synapusyu_movie
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.