1

『ゴッドファーザー』、『グッドフェローズ』、『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』など、多くの映画やテレビドラマなどで描かれてきたマフィア。詐欺や恐喝などの犯罪に手を染めるイタリア系の男たちが “ファミリー” の一員として生きる……なんてイメージがあるが、さて実際はどんな人生を送っているのか?

ということで今回は、海外サイト『Reddit』で元マフィア幹部、マイケル・フランゼーゼさんがネットユーザーに対して行った質疑応答 43選をご紹介しよう。

フランゼーゼさんといえば、ニューヨークの五大ファミリーの1つ「コロンボファミリー」に所属し、若くして大成した人物。しかし80年代半ばに恐喝の罪に問われたのをきっかけに、マフィアの世界から足を洗うことに。服役後は人の役に立つために様々な活動を行っているそうだ。著書『最強マフィアの仕事術』などでも知られている。

Q1:ロシアのマフィアや日本の暴力団、メキシコのギャングなど、他の “反社会集団” との交流はあったんですか?

A1:たくさんあったよ。ガス関係のビジネスで交流のあったロシアのマフィアは、最高のビジネス・パートナーだったよ。どうやって多額の金額を脱税するか教えてやったんだ。今では彼らは、医療詐欺をよくやっているようだ。こんな話を始めたら、何時間だって経ってしまう。

Q2:マフィアの一員になるためには、どんな儀式が行われるんですか?
A2:とても厳粛で真剣な儀式が行われる。私のときはこうだった。両手で包んだ聖人の写真に火がつけられ、その後、ナイフで片方の親指が切られ、血を床にたらした。“血の掟(おきて)” は決して破られてはならないんだ。

Q3:有名なマフィア映画やドラマの描写は正確ですか?
A3:とても正確なのが、映画『グッドフェローズ』と『フェイク(Donnie Brasco)』だ。『グッドフェローズ』では私の名も出てくるよ。私はあの時代のマフィアだから、作品に出てくる登場人物をよく知っているんだ。

『グッドフェローズ』の主人公ヘンリー・ヒルの命を助けたことがあるし、ポール・ヴァリオ(ポール・ソルヴィノが演じたポーリー・シセロのモデル)も、ジミー・バーク(ロバート・デ・ニーロが演じたジミー・コンウェイのモデル)もよく知っていたよ。『フェイク』でアル・パチーノが演じた “レフティー” ベンジャミン・ルッジェーロとも仲が良かった。

ただ、ヘンリー・ヒルは映画みたいに立派な男じゃなかった。ただのアソシエーテ(準構成員)で、ポール・ヴァリオとも映画で描かれているような親しい間柄ではなかった。でもそれ以外は正確だ。

Q4:『グッドフェローズ』でジョー・ペシが演じたトミー・デシモン(作品にはトミー・デヴィートという名で登場)は、あんなにイカれた人物だったんですか?
A4:ジョー・ペシがちょっと大げさに演じた感じはあるが、それでもあの演技は最高だよ。確かにトミーはイカレタ人物だったけれど、ジョー・ペシの演技で、実際よりも迫力がある人物に描かれている。ジョー・ペシが演じるマフィアは最高だ。

Q5:『グッドフェローズ』には、あなたがモデルになっている役も少しだけ登場しますよね? 確か “フランチェーゼ” という名前で紹介されていたと思います。どうですか?
A5:そう、私だよ!

Q6:1番怖かった瞬間は?
A6:殺されることを知りながら部屋に入っていったときだ。ある晩、ガス関連のビジネスで得た金に関して、ボスから呼び出しがあったんだ。本当にヤバいときは生きて帰ることは出来ない。

結局は自分の身の潔白を証明して、その場を切り抜けたが、心臓がバクバクいって、膝にも力が入らなかった。今でも、なんで自分があの部屋に入っていたのか分からない。多分、それが当時の私の生き方だったのだろう。

Q7:これまでに何人の人間を直接的、間接的に殺してきましたか?
A7:難しい質問だな。何人かは分かっている。暴力が私の人生の一部だったんだ。

Q8:マフィアの世界で最悪なことはなんですか?
A8:残念ながら、暴力が人生の一部なんだ。マフィアになれば、暴力を目撃することになる。私は十分見てきた。醜いものだ。

Q9:マフィア時代に目撃した、最も残酷だった行為はなんですか?
A9:殺し屋集団 “デメイオ・クルー” の行為だ。彼らは死体を切り刻んで、セメントのドラム缶に埋めていた。私も目撃したが、もう十分だ。この話はここまでにしておこう。

Q10:マフィアから足を洗うとき、すんなり受け入れられましたか? それとも脅されたりしたんですか?
A10:マフィアと手を切った後の数年間は、とても大変だった。父からは勘当され、ファミリーは私を殺そうとし、 FBI は私を証人にしようとしていた。あの時期はとてもツラかった。私は誰も傷つけなかったけど、自分自身の掟(おきて)に背いたという考えにもずいぶん苛まれたよ。神と時間だけが、それらを解決してくれた。

Q11:マフィアにまつわる面白話はありますか?
A11:たくさんあるよ。マフィアは面白い奴がたくさんいるんだ。そういった話は私の本を読んでくれれば分かるよ。

Q12:今でも、身の危険を感じることはありますか?
A12:気軽にニューヨークに行くことは出来ない。すぐに殺されてしまうだろう。私は何かを恐れながら生きてはいない。今では強い信念を持ち、神が守ってくれている。いいかい。私は、幹部になりながらも生きたままマフィアの世界を堂々と去った、ただ1人の人間なんだ。証人保護プログラムだって受けていない。これは単なる偶然ではなく、神の力なんだよ。

Q13:今のアメリカにも、マフィアは存在しているんですか?
A13:ああ。私が身を置いた70年代〜90年代ほどの影響力はないが、それでも存在している。彼らはとても賢いから、甘く見てはいけない。

Q14:今のマフィアや他の犯罪集団をどう思いますか?
A14:かつてのマフィアと、今のマフィアは別物だ。今の組織には入りたいとは思わないだろう。私たちはマフィアであることに誇りを持っていた。今は違う。

また彼らは人間に対する敬意に欠けているように感じられる。ある犯罪集団が私の住む地域に入り込んできたから、追い出したこともある。

Q15:今後の、アメリカの犯罪集団はどうなっていくと思いますか?
A15:犯罪は決して無くならない。政府が人々の自由を制限しようとしない限り、マフィアがかつてのように力を持つことは二度とないだろう。でも私たちの自由は制限されつつあるように感じられる。

……さらなる質疑応答は、次ページ(その2)へ GO!

参照元:Reddit(英語)、紀伊国屋書店
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.