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伝統芸能の街・浅草。中でも、劇場などが立ち並ぶ浅草六区は、今なお芸能が盛んな地域の一つ。食べ物屋の軒先に立つ客引きにも、ビラをまくお笑い芸人にも、どこか威勢の良さがにじみ出ている。この街を歩いているだけで粋な気分になるのは、私(中澤)だけではあるまい。

ウマいそば屋を求めて色んな街を放浪する「立ちそば放浪記」。今回訪れたのは、そんな浅草六区の中でも老舗の『翁そば』である。創業は大正3年。なんと100年以上この街を見守り続けているそば屋だ。

・昔ながらのそば屋

この店は六区通りから小道を入った狭い路地にある。周りには食べ物屋がひしめき合っており、瓦屋根で1階を店舗用に改造しているような店が多い。この昔ながらの雰囲気とすし詰め感がすでに香ばしい。暖簾をくぐり、背の低い入り口を入ると、右手に座敷、左手に机が並べられており、両方ともすでにお客さんで一杯だった。

客層はおじいちゃん、おばあちゃんが多く、みんな柔らかい笑顔だ。長く愛されている店独特のゆるさと温かさを感じる。座敷で相席させてもらうことに。
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・カレー南ばんを注文

私が注文したのは、おいしいと評判の「カレー南ばんそば」。お値段は650円(税込)。ほとんどのメニューがリーズナブルな値段で提供されているのも嬉しいところだ。

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・生命のバトンタッチ

向かいの席に座っていたおじさんが席を立ち、新しい客の女性が座った。おじさんから受け取ったバトンを相席の客に渡して、永遠とつないでいくゲームをしているようだ。「生きる」というのはそういうことなのかもしれない。生命のバトンタッチ。そばが来た
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・神の割り箸

器には表面張力一杯にカレーのルーが入っており、そばの姿は見えない。いつだって真実というのは覆い隠されている。私は慎重にルーに箸を差し入れた。そして、そばを掴み引っ張り出す。真実を掴む神の割り箸だ。
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・心が冷えてしまいそうな時にオススメ

さっそく一口すすってみると、もっちりとしたボリュームが口の中を支配する。どこか懐かしさを感じるそばの風味に濃厚でコクのあるルーがしっかり絡んで、私の心はピンボールのように跳ね回る。体も心もじんわり温かい。
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店内は依然笑いに満ち、そこかしこで生命のバトンタッチが続いている。この店はこうやって、100年間いろんな人たちのバトンを繋いできたのだろう。そして、これからも繋ぎ続ける。

心が冷えてしまいそうな時は、この店を訪れてみてほしい。下町気質に溢れながらも歴史を感じる内装と、庶民の贅沢と言うにふさわしいメニューに心がじんわり温かくなることだろう。きっと生きる意味を感じることができるはずだ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 翁そば
住所 東京都台東区浅草2-5-3
営業時間 11:45~15:00 / 16:30~19:30
定休日 日曜

Report:立ちそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼下町気質に溢れながらも歴史を感じる
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▼どのメニューもウマそうだ
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▼「カレー南ばんそば」を注文
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▼表面張力一杯にカレーのルーが入っている
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▼生命のバトンタッチ!
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▼神の割り箸!!
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