飛行機が遅れに遅れ、台湾の玄関口・桃園国際空港に着いたのは夜11時過ぎ。空港の現地シムカード売り場はすでに閉店。
真夜中、台北駅前の微弱な公共Wi-Fi電波「Taipei Free」でホテル予約を試みるも、普段の行いが悪いせいかブチブチ切れまくり。クソーっと顔を上げると目の前に煌々と輝く不夜城のような台北長距離バスターミナルがあった。ここから台湾南端にある第二の都市・高雄までは高速バスで約5時間半の道のり。
時計は深夜1時過ぎをさしていた。今バスに乗れば高雄に着くのは朝6時ごろ。競争が激しい台湾のバスはリーズナブルで超豪華ともっぱらの噂。それが本当ならホテルと新幹線代を効率よく節約できそう。てなわけで台湾の深夜バスに乗ってみたところ、昔のトラウマと遭遇してしまったお話。行きましょうか……。
・真夜中なのに15分に一本バスがある!
高雄行きは数社のバスがあるが、今回は定員14人の二列配置・ビジネスクラス顔負けの真新しい豪華シートで有名な「和欣客運」のプラチナムクラスにチャレンジしてみっか! とチケットカウンターに駆け込んだが、残念ながら朝の便まで満席。仕方なく、和欣バスより車体は古いが、やはり豪華シートで有名なアロハバス(阿羅哈客運)の窓口に滑りこみ、席をゲットした。料金は715元(2900円)。新幹線の半額以下だ。
・心癒される女性添乗員
しばらく待って脳天気なネーミングのアロハバスに乗り込む。和欣バスより古びているが、どっかの中小企業の社長イスを彷彿とさせる立派な座席だ。
シートは電動でかなりの角度まで倒れ、同じく電動のフットレストと併用するとフラットに近い状態で眠ることができる。また、各自専用のテレビもあり、さらにうら若き女性添乗員がひとり同乗する。
コーヒーやらお菓子やらおしぼりやらくれる添乗員のお姉さん、フレンドリーかつ他の客に気を遣って耳元でささやきかけてくるものだから、胸の鼓動は高まりっぱなし。
そんなお姉さんが耳元で「マッサージしますか?」とささやいてきたりして、変に誤解した私が顔を赤くすると、椅子のスイッチをパパッと押して電動マッサージ機能をオンにしてくれた。そ、そういうことね……。
・そして、ヤツが!
バスが高速道路に入り、景色に変化が無くなってきたので座席のテレビをオンにする。台湾のテレビしか映らないが、スイッチをいじくっていたところ、ある瞬間、どこかで見たことがあるようなないようなゲームメニューが現れた。
き、君はソニック! そして上部中央には「セガ・メガドライブ」という驚きのクレジットが……。これまさに、洞窟の奥深くで古代人の象形文字を発見したような衝撃。知らない人のために申し上げると、スーパーファミコンのライバルだった25年前のゲーム機だ。さて、ここで大いなる謎がもうひとつ。このテレビにはゲームパッドらしきものが何処にもない。
試しにチャンネルボタンや音量ボタンを押してみるも、チャンネルが変わったり音量が上下するだけ。あちこち押しまくってみたものの、どこをどうしてもセガの名作ゲームはプレイできなかった。添乗員さんに質問するという手もあるが、他のお客さんはすでに爆睡状態。私ひとりメガドラをプレイするのは気が引けた。
結局、謎は謎のまま私の瞼も重くなり、ハッと目を覚ますとそこは高雄。自分の中では瞬間移動したような有り様で、他の乗客が続々とバスを降りるなか、私ひとりレトロゲームをプレイするわけにもいかず、後ろ髪を引かれる思いで外に出た。どなたか、台湾の長距離バスでメガドラをプレイした人がいたら、どうやってコントロールしたのか教えて欲しい!
参考リンク:台北無料公衆無線LANサービス「Taipei Free」
Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.
▼一階には各バス会社のチケットカウンターがならぶ
▼これが噂の超豪華プラチナムクラス
▼けど満席だったので、これも豪華系のアロハバスに
▼深夜1時半だけど、お客さんでいっぱい
▼台北〜高雄のチケットは約3千円
▼しばらくして、目の覚めるような色合いのバスが来た
▼とにかくイスがでかい。これぞ社長イス!
▼椅子はフル電動。マッサージ機能もあるよ
▼これが座席に備え付けのテレビ
▼ええっ!?
▼メッ……メガドライブ!
▼ふと我に返ったら、朝だった!