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本日、9月4日(水)は世界バレーアジア最終予選女子「日本 VS チャイニーズタイペイ」だ。

チャイニーズタイペイ? これは台湾チームのことを指すのだが、国際試合では、なぜ「台湾」と表記せず、わざわざチャイニーズタイペイと表記するのだろうか?

・「二つの中国」の問題

チャイニーズタイペイは、漢字で表記すると「中華台北」だ。なぜ、台湾と書かないのだろうか? なぜ、中華人民共和国(中国)とは別のチームとして出場しているのだろうか? それにはいわゆる「二つの中国」問題が絡んでくる。

・中華民国と中華人民共和国

1912年、清朝が倒れ、中国大陸には「中華民国」という国が成立した。しかし、第二次世界大戦後、蒋介石率いる中国国民党と毛沢東率いる中国共産党が対立し内戦が勃発。そして1949年10月、中国共産党は「中華人民共和国」の建国を宣言した。

中華人民共和国に実効支配された首都・南京を追われた蒋介石らは、最終的に台湾に逃れ、台北を臨時首都とした。そのまま、大陸と台湾は切り離されたままだ。中華人民共和国は台湾を「中華人民共和国の一部である台湾省」だとしているが、台湾は「中華人民共和国の一部」とは名乗っていない。

・国連が中華人民共和国を承認 → 中華民国は中国の代表ではなくなる

その後、1971年に国際連合が「全中国を代表する主権国家」として、それまで代表だった中華民国(台湾)ではなく中華人民共和国を承認。中華民国は中国の代表としての立場を失った。現在は多くの国が中華人民共和国と国交を結び、中華民国(台湾)とは国交がない。日本も民間交流という形で行き来はあるが、正式な国交はない。

この承認以後、中華民国はオリンピックなどのスポーツ大会や国際機関で「チャイニーズタイペイ(中華台北)」を名乗るようになったのである。

・WBCでは日本メディアは「台湾」と表記 → 台湾ネットユーザーが歓喜

その結果、多くの国でスポーツの国際試合で台湾チームのことを「中華台北」「Chinese Taipei」と表記している。現在開催中の世界バレーでも「チャイニーズタイペイ」表記であるが、野球の世界一決定戦 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)開催時、日本では多くのメディアが台湾チームのことを「台湾」と表記していた。

このことに多くの台湾人がネット上で歓喜の声をあげていたことは記憶に新しい。テレビ放送時の画像がネット上で拡散し、そこには

「日本は私たちのことを“台湾”と認めている!」
「ありがとう、日本」
「画像が消されないうちに拡散して!!」
「私たちは台湾人だ!」
「日本でさえ “台湾” と表記するのに、我々の政府は何をしているんだ」

などのコメントがよせられていた。

・台湾人に聞いてみた
現在、台湾には、経済や地理、軍事的な要因から、「中華人民共和国の台湾」、「中華民国の台湾」、「台湾としての台湾」など、さまざまな立場の人がいる。「チャイニーズタイペイ」という呼称は、どの立場にも矛盾はしていないが、ピッタリはまるものでもない。苦肉の呼称なのだろうか? いずれにせよ、彼らのアイデンティティに深く関わる問題であることに変わりはない。このことについて、ある台湾人の若者はこう話していた。

「私たちは別々になって何十年も経ちます。大陸とは完全に文化も違うし、自分たちの政府も通貨も軍もある。税金だって自分たちの政府に払っている。大陸には払っていない。なのに、どうして “台湾” は “台湾” じゃないの?」

執筆:沢井メグ

▼こちらは台北市内にある松山空港
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▼中華民国の国旗が揚げられている
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