先月、当サイトで「【鬼畜検証】ダイエット中の意志が弱い先輩を「鳥貴族」に誘ったらホイホイついてくるのか? 軽い気持ちで試してみたら地獄だった」という世にも恐ろしい記事が公開された。

そこには後輩の あひるねこ記者から「救いようのないクズ」と書かれる私(原田)がいて地獄すぎる内容だったが……もう過ぎたことは仕方ない。今では気にしないよう、前を向いて生きている。


さて、あの悪夢からしばらく──そういやトリキの席で あひるねこ が「公営競技をほとんど見たことがない」と言ってたのをふと思い出した。世の中、何事も経験することは大事だぞ!


ってことで「救いようのないクズ」がボートレースに誘ってみたところ、行ってみたいとホイホイついてきた。そうこなくっちゃ!

10月某日、東京は府中市是政にある「ボートレース多摩川」へとやってきた。あひるねこには遠足気分で5000円だけ握りしめて来なさいとだけ伝えているが、はたしてどんな展開が待っているのだろう。


約束の時間より少し早めに到着。そこから あひるねこ を待つことしばし。おっ、来た来た!


何わろてんねん


ワクワクが止まらないのか? えっ、そうじゃなくて「どうしたんですか、今日の服装は」だって……?


そんなの見ての通り……


正装に決まってるだろうが!!


出走表にペン、そして舟券を購入するためのマークシートとか持ってると結構手が塞がるもんなんだ。

ボートレース場じゃ、ポケットはあればあるだけいいんだよ。理にかなっているから、あとで言ってる意味が分かるぞ。使いたくなったらいつでもベスト貸すからね?


って、人の話を聞けーい!!


どこか緊張したような面持ちで場内を歩くあひるねこ。聞けば思っていたより遥かに広く、開放的な空間に驚いているらしい。

そして水面に出ると、テンションのギアが入るしかなかったようだ。というのも、大の大人が……


あひるねこ「すげぇぇぇぇぇぇ!! めちゃくちゃ広い!!!!」


あひるねこ「ボートのエンジン音ってこんなにデカいんすね!! めちゃくちゃ迫力あります!! しかもこの距離……! 近い近い!!」


カシャ! カシャー! カシャッー!! カシャッーー!!!


水面を見た瞬間、少年のように走り出して林家パー子ばりに写真を撮りまくり。興奮という言葉じゃ生温いくらい大興奮していたのである!


でも、まったくもってその通り。現地でエンジンの音とかボートの速度を肌で感じる迫力は画面越しじゃ味わえない。これが非日常ってやつなのだ……!!


連れてきてよかったなぁ──この時点でそう思ったものだが、ここから急転直下の展開を迎えることになった。次の瞬間、あひるねこ は私の気持ちをぶち壊すような発言をしてきたのである。


あひるねこ「どうやって賭けたらいいんですか? さっそくやりましょうよ!!」


今……なんと……?!


あひるねこ「もうレースやってるじゃないすか、マークシートってどうやって記入するんですか? はよ! はよ!」


お前、それはな……


全然ッ分かってない!!


場内に入っていきなりギラついてどうするんだ。今回は初めてだから目を瞑るが、まだまだ時間あるんだぞ。


まったくもう……今日はボートレースの本当の楽しみ方ってやつを教えてやろう。俺についてこい!


最初に買うべきは舟券じゃなくて、まずは売店に行ってだな……



ビールなんだよ


おいおい、昼間から酒飲んでいいのかみたいな顔をするんじゃないよ。せっかくボートレース場まで楽しみに来たんだ。


ここで飲まないでいつ飲むんだ? い……? い……? いま……? いまで……?


あひるねこ「……」


言ってくれないのは百歩譲るとして、でもこれで本来あるべき姿の一歩を踏み出せたな。今日は初めてボートレース場に来た記念で俺のオゴりだ!

やっぱり昼間から飲むビールは最高だなぁ! とりあえずガソリン入れたことだし、次に行くとしようか!


ボートレース場にはね、いろんな売店や飲食店が入ってるんよ。験担ぎでカツ丼とかカツカレーなど「カツ」を食べる人も多いかな。


俺もたまに食べるんだけど、カツカレーの方が好きかな。カレーはどこで食べてもそう外さないしね、ていうか……2杯目もビールでいいか?


うむ、やはり太陽の下で飲むビールは最高としか言いようがない。

青い空(曇ってるけど)、白い雲……で、ここからが本番でだな。


腹が減っては戦できんってよく聞くだろう。まだまだ次に行くぞ!


どこのボートレース場、というか公営競技をやってる施設は大体と言っていいほど名物的なものがあるんだ。現地に行ったら絶対に食べた方がいいぞ。


そしてここ多摩川は「レストランウェイキー」の……


「牛炊(1000円)」がそうなんだ。シンプルな見た目だけど、これがまたいいんだ。キムチや付属の唐辛子、ニンニクで味変できるのも最高よ。


あひるねこ「確かにこれウマいっすね! お米が中に入ってて、ねこまんまみたいで味も優しいです。名物っていうのも分かります!」


そうだろそうだろ。そして大体こういうのは美味しいって決まってるもんなんよ。他の違うところに行っても、ちゃんと名物を探すんだぞ。


──とすっかりお腹も満たされ、気持ちもよくなった私たち。ここからはボートレースで真剣勝負していこう。

ひとまず あひるねこ にボートレースは3周勝負(600m×3)、フライングスタート方式(大時計が0秒から1秒を指す間にスタートラインを通過するスタート)といった基礎知識をここで伝授。買い方は任せることにしたのだが……

何かヒントが欲しいとのことだったので「基本的には内側から回るからイン(1号艇)が強い」と伝えた。そうしてあひるねこが購入した3連単の舟券は……


「1-23-23」の3連単でボートレースの基本中の基本である。締め切り前のオッズは「1-2-3」「1-3-2」ともに10倍前後。500円ずつ賭けたから、もし当たれば5000円くらいになる計算だ。


ボートレースの勝負所はスタートしてからの1周1マーク。そこでほぼ決まると言っても過言じゃないが……


キタァァァァ!!!! 1号艇がトップスタートを切って、早い段階で2号艇と3号艇が2着を争う理想的な展開……!


あとは何事も起きずに3周……これは当たるぞ! そのまま! そのまま!! そのままぁーー!!!! そして結果は……


「1-2-3」で確定。初勝負で勝つなんて持ってるなぁ! って、オイオイ……


結構長い付き合いだが、こんなにも嬉しそうな あひるねこ は初めて見たような気がする。


3連単は9.6倍。払い戻しは4800円で3800円のプラスになった。


あひるねこ「原田さん! 賭けると楽しいっすね! でもこれはビギナーズラックってやつですかね?」


そう謙遜しつつも大興奮の あひるねこ だったが、払い戻しを受け取った足で売店へ。そしたら……


なんとビールをオゴってくれた! 「救いようのないクズ」呼ばわりされたけど、我ながらイイ後輩を持ったものである。


その後、あひるねこは勝ち額全部ぶっこむ……なんてことはせず、1000円分の舟券を買ってハズレ。


あひるねこ「僕はこのまま勝ちで終わりたいのでもうやめときます。っていうか……」

あひるねこ「原田さんは一切舟券買ってないですけど、今日はやらないんですか?」


俺はまず正しいエスコートをすることに集中していた(酒ばかり飲んでたけど)から大丈夫……と言いたいところだけど、今日は初っ端から最終レースの優勝戦で勝負すると決めていたのよ。つまり次のレースがそうだ!


ガチ予想するとだな、4号艇のモーターがチルト3度のスゴく伸びる仕様で前節G1優勝モーター(菅章哉選手)のやつなんよ。そして今節も優勝戦に駒を進めるくらい伸びてて、当然ながら人気を集めてる。

でも、これは罠やと思っててね。というのも、乗ってる選手がすでにフライング持ちで絶対に2本目は切りたくないのよ。フライングには罰則があって、走れなくなる(収入がなくなる)期間が課されるんだ。

もし2本目を切ってしまうと……あぁ怖い! そういうのを踏まえ、ボートレースの基本はインで内側有利。でもって展示航走を見た感じ、4号艇はおそらく本番も大外……そうそう、3号艇もフライング1本持ちだから……

自分から攻めることができそうな「5」で勝負なのよ。見とけよ!!


俺の渾身の3連単は “トイレと3着は流せ” で「1-5-全」。あとは順当に逃げて1-2の形になった場合、保険で「1-2-5」だな。

1点あたり1000円で合計5000円。正直、もうそれ以外に未来は見えない。


もし当たったとしたら、「1-2-5」を除けば高配当でおよそ50倍から上だと100倍以上。とどのつまり10万円オーバーだから、帰りにウマい焼肉でも食って帰ろうぜ!


そして迎えた本番、展示通りの進入でまずは一安心。あとは外枠から青い4号艇が飛んでこなければ……逆に黄色の5号艇が前にきたらゴクリである。


よし、インはしっかりスタート行ってる! 外からも来ない……って……ほら見ろぉぉぉ!! 5! 5! 5!!!!!


1号艇が逃げて、5号艇が2着争いしてるぞ! ほんとに1-5じゃないか、これ!! ある! ある!! あるぞ、おい!!!!


オラァァァァ! 1-5キタァァァァ!!!! ヒィィィィィハァァァァーーー!!!!!!


いや……


うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


お願いします! お願いします! お願いします! お願いします!


予想通りの展開に自分でもビビったが、結果は惜しくも「1-3-5」。めちゃくちゃ夢を見ることができた3周だった……って、くやしぃぃぃぃ!!


しかしながら、勝負の世界では勝者がいれば敗者もいる。きっと あひるねこ も絶叫して膝から崩れ落ちる先輩の姿を見て、何か感じ取ってくれたに違いない──こうしてボートレース多摩川での1日が幕を閉じた。


あひるねこ「それにしても1日早かったです。選手の年齢も倍くらい違うのに同じ舞台で戦っているし、体重も52キロ(男子選手の制限体重)の選手ばかりでとにかく細かった!

ここに女子選手も入って戦うなんて信じられないですよ。いやぁ〜速い乗り物が目の前を走ってるだけでワクワクしました!」


帰り際には興奮冷めやらぬままこう話してくれたから、私も連れてきた甲斐があるというもの。新しい世界を知るだけじゃなく、楽しんでくれてこれ以上ない1日だった。

ましてやプラスでの帰宅。これは救いようのないクズが最高のエスコートをしたからこその結果と言えるだろう。

執筆:原田たかし
Photo:RocketNews24.
取材協力:ボートレース多摩川

▼ この記事はいかがでしたか? ご感想をお待ちしています

▼我々が観戦した優勝戦

▼菅章哉選手のチルト3度の破壊力を確認できるのは1:40あたりから