今年の夏は暑い。例年通りであれば暑さの本番は8月。ということは、少なくともこの先1カ月は暑い日が続くことが予想される。今までと同じ心構えでは、夏を乗り越せるか心配だ。そこで私(佐藤)は、1日中外にいる浅草の人力車夫に、「暑くても快適に過ごせる服」を尋ねたのだが、結局そのアドバイスを無視してしまった……。
ただ、その時におすすめのお店で「鯉口シャツ」と「ダボズボン」を購入している。祭りで着られる服なら、暑さにもそれなりに有効のはず。ってことで、戸外を30分歩いてみたら、それぞれの良いところに気がついた。
・祭り用品
話を聞いた車夫の方は、Tシャツと「半ダコ」と呼ばれるハーフパンツをはいていた。彼いわく「鯉口はベッチャリするので、エアリズムっぽい素材のTシャツを着てます」とのことだった。
そうなんだ、鯉口はベッチャリするんだな。そのご意見に素直にしたがってもよかったけど、実際どうなのかを確かめてみたかった。そこで彼がよく利用するという、祭り用品店の「絆纒(はんてん)屋」を訪ねて……。
「刺しゅう入り鯉口」(税込9800円)と「本ダボゴムズボン」(税込4300円)を購入したのである。
彼のように1日中屋外にいるなら、鯉口がベッチャリするほど汗をかくのもわかる。しかし、私のように限られた時間しか戸外にいないのであれば、それなりに使えるのではないだろうか。
・アレもつけていかないと!
ってことで、今日はこの出で立ちで出陣することにした。鯉口は肌着なので、タンクトップやTシャツを着ずに直に着ている。
念のため着替えを用意している。というのは、ダボが汗でびしょ濡れになったら、パンツが透けてしまうので、替えのズボン。それから予備のTシャツを、カバンに詰め込んだ。
このカバンは群馬の自販機食堂で買った、うどん・そば自販機柄のトートだ。この格好にこのカバンはしっくり来る。菅笠は被らない時に、カバンの持ち手に結わえておく。
首元のタオルは日本が世界に誇るロックバンド「人間椅子」のものである。2017年のライブアルバム発売時のツアータオル。「威風堂々」、これまた今日の格好にお誂(あつらえ)え向き。
菅笠を被るとこうなる。笠なしだとテキ屋っぽいけど、笠ありだとオフのお坊さんみたいだな。八十八カ所巡礼中の「お遍路(へんろ)さん」みたいでもある。
では、出かけよう~! ……いや、ちょっと待った!! 家を出て歩き始めたところで、私は慌てて引き返した。アレがない! 何か物足りないと思ったら、アレがなかった!
「アレ」とはコレだ!!
やっぱこういう格好には、数珠ブレスレットがないとね! テキ屋風・坊さん風、どっちにも共通して使えるアイテム、それが数珠ブレスレットだ!!
・唐獅子牡丹
今日のスタート地点にやってきた。東京・小平市立中央公園である。この公園には陸上競技場があり、夏休みということで近隣の学校の生徒が部活動に勤しんでいる。そんななか、半チンピラ風情の菅笠おじさんがあらわれて、生徒の皆さんの気を散らしてしまっては申し訳ない。撮影が済んだらすぐに立ち去らねば。
背中には唐獅子牡丹の刺しゅうが入っている。堅気ではないと思われても仕方がないかも……。
「義理と人情を 秤(はかり)にかけりゃ 義理が重たい男の世界
幼馴染の観音様にゃ 俺の心はお見通し
背中(せな)で吠えてる 唐獅子牡丹」(高倉健 「唐獅子牡丹」より)
さて、行く先はここから徒歩約26分の第一パンの工場直売所である。
いくら涼し気な格好をしているとはいえ、過信して熱中症になってはシャレにならんので、しばらくは徒歩移動は30分程度にとどめておきたい。
・鯉口・ダボで30分歩いた感想
鯉口とダボを着用して歩いた率直な感想をお伝えしよう。
上下ともに綿素材で肌ざわりがよく、着心地はバツグンである。とくに鯉口は紺の地布に黒の刺糸を入れた「広巾(ひろはば)刺子」加工を施しており、サラリとしている。
だが、車夫の方が言っていたようによく汗を吸うので、次第に濡れてくるのがわかる。脇や背中は、肌に生地がまとわりつく感じ。幸い、生地が厚いので透けることはないが、濡れている実感はある。
風が吹くと濡れたところがひんやりしてくるので、山や海などで着ると気持ち良さそう。風の吹く夕方以降も良いかもしれない。街中を歩くには適してなさそうだ。
一方のダボは、その名前の通りにダボっとしていて、生地が足にまとわりつかない。足と生地との間に常に空間があるので、不快になることはなかった。
これは街中で歩くのにも良いかも。ただ、腹当てのところにあるポケットが意外と小さく、開け閉めしにくいので、スマホを入れると取り出すのにやや手間取ってしまう。
したがって、鯉口は風があれば気持ち良い。ダボはポケットが思ったほど使えないけど、普段使いにいけそう。約30分歩いてみて、そんな感想を抱いた。
・鯉口 + ペルチェベスト
そのままではイマイチな鯉口に、熱電冷却(ペルチェ)デバイスのついたベストを合わせると良いかも? ってことで、持参したベストを着てみた。
汗で湿った鯉口に、冷却デバイスが当たるとめっちゃ冷える! 表面冷却温度は最大7度。接触面とその周辺が全体的に冷やされて気持ちイイ!
古くからある和の下着と、最新技術の冷却デバイスが組み合わさることによって、「令和の熱中症対策」の完成だ! まさに時代を超えた組み合わせである!!
ただし!
これを着ると、自慢の唐獅子牡丹が背中(せな)で泣くことになってしまった……。
とにかく! 鯉口は風のある環境で使用する方が良さそうだ。ダボは場所を選ばずに快適に過ごせる。少なくとも、洋服では味わうことのできない “涼” を感じることができたぞ!
参考リンク:絆纒屋
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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