本日3月24日は『人力車発祥の日』だ。日本で最初に人力車の営業が始まったのが明治3年3月24日で、場所は東京の日本橋だったらしい。当時は交通手段として活用されていたが、もちろん現在は観光がメイン。レトロな見た目が、古都や下町の雰囲気にピッタリである。

実を言うと、筆者は大学時代に人力車を引いて鎌倉の観光案内をするアルバイトをしていたのだが、とにかく自分の人力車にお客さんを乗せるまでが大変だった。車夫(しゃふ)たちはそれぞれ個性をフルに発揮し、観光客の目に留まるよう日々努力・研究していたのである。

・人力車

きっと多くの人が、観光地で「人力車いかがですか?」と声をかけられた経験があるだろう。鎌倉では主に「鶴岡八幡宮」周辺で車夫たちがスタンバイしている。彼らは全員、運転技術や鎌倉に関連する知識はもちろん、巧みな話術も鍛えられた精鋭たちだ。

彼らに任せれば、観光バスが通れない抜け道を通り、雰囲気抜群のスポットで記念撮影 & 今一番ホットな観光地・お土産情報等も聞くことができる。なので、人力車に乗るオススメのタイミングは、旅行の締めではなく始まり。乗車後のスケジュールが超濃密になるからだ。

・強いハートと個性的な魅力が必要

そんなわけで本当に乗って損はナシ……だと思うのだが、なかなか車夫の熱い気持ちは相手に伝わらない。車夫には人力車の運転技術や観光知識よりも前に、乗車を断られ続けても観光客に笑顔で声をかけ続けられる強いハートと、相手を引きつける「武器」が求められるのだ。

つまり商品となるのは、人力車ではなく車夫そのもの。わかりやすく例えれば、イケメン車夫は「爽やかな笑顔」が武器になり、ザ・体育会系車夫は「足腰の強さ」や「礼儀正しさ」が、相手に安心感を与える武器になる。観光客にPRできる自分の魅力とは……う~ん難しい。

・車夫の努力

では、客観的に分析した「自分の強み」を、通り過ぎていく観光客に一瞬でPRする方法とは何なのか? 現場では様々なアイデアが試されていたが、とくにデビューしたばかりの車夫は、攻めの姿勢が強く、想像力も豊かなため、周りの仲間に衝撃を与えることも。中でも強烈だったのは……

デビュー直後に「チョンマゲ頭」にした車夫だ。信じられないスピードで頭皮が日に焼けてダウンし、死にそうな顔で頭にクリームを塗り続けていた。陽気なサムライ車夫なら人気が出たかもしれないが、暗すぎる落ち武者には誰も近寄らない。ただの悲劇だった。

また、観光客への声のかけ方もそれぞれ。笑顔で「今日は観光ですか?」と話しかけるベテラン車夫がいる一方、ドヤ顔で「地球上には人力車という乗り物がございまして……」と話しかける一発狙いの新人車夫もいる。すべては相手に振り向いてもらうための工夫なのだが、面白いと気持ち悪いは紙一重であった。

・機会があれば

なかなか人力車に乗る機会はないかもしれないが、少しでも車夫を身近な存在に感じてもらえたら幸いである。一度体験するとやみつきになる面白さがあるので、観光地に行った際はぜひ人力車を利用していただきたい。想像以上に車夫がカッコ良く見えるだろう。

イラスト・Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼ちなみに筆者の鎌倉オススメスポットは報国寺だ