X(旧Twitter)の「いいね欄」が非公開になった――。


2024年6月12日、X公式アカウントが「今週中にいいね欄をプライベートにする」ポスト。早くも翌13日には措置が開始され、ほどなくして実際に他人のいいね欄が見られなくなってしまった。

X社はその理由について、同ポストの中で「プライバシー保護のため」と説明している。確かにプライバシーは大切だし、より安心して様々なポストにいいねを付けられるといった利点はあるかもしれない。


……が、「人が何にいいねしたか見る」って、TwitterおよびXにおいて かなり重要な部分じゃなかっただろうか……?

友達のいいね欄を見て、「この子こんなものが好きなんだな」と新しい一面を発見したり、「何これ面白い!」と刺激を受けたり、共感したり。そういった緩やかな「感情の繋がり」みたいなものが起きづらくなる気がして、個人的には寂しく感じている。

しかしXのシステムはもう変えようがない……仕方がないので、家族で「いいね」を共有してみることにしたぞ!


・いいね発表会

朝、家族(父・母・妹)を集めて概要を説明。Xをやっていない家族もいるため、「いいね」という概念の定義も込みで こんなルールを設けた。


・今日一日の生活の中で「いいね」を付けたくなった事柄をメモしておき、夕食時に発表

・「いいね」とは「心動かされたこと」「覚えておきたいこと」。くだらないことでいいし、ネガティブなことでもいい。何個あってもいい


この説明でわかってもらえるかな? と思いきや、意外にもみんなノリノリで快諾。というわけで1日過ごし……夕食時に出揃ったみんなの「いいね」が、こちら!



・砂付近(私)「散歩に出たら蚊取り線香の匂いがして、夏だなと思った」

なかなか共感されないのだが、筆者は夏が大好き。空気の質感や匂いに季節の移り変わりを感じて、ちょっと嬉しくなったので共有させてもらった。


・母「JAで買った茄子の形」


イイ。


これは良い。こういうのが欲しかった。もしこの画像がタイムラインに流れてきたら、筆者も「いいね」を押すと思う。



母の「いいね」はこの他、「朝食べたハチミツが美味しかったこと」と、「昼寝してたら怖い夢を見たけど夢でよかった」こと。なんだか全体的に可愛らしい いいね欄である。



・父

「昼にテレビをつけたら、NHKの朝ドラ『虎に翼』の裏話をやっていた。ドラマ内のとあるエピソードが史実であることを知って、へえ〜と思った」

本当はエピソードの内容まで語ってくれたのだが、ネタバレ防止のために ここでは伏せておこう。

ドラマ好きで社会問題にも関心の深い、父らしい「いいね」である。父はXをやっていないが、もしアカウントを持っていたら有益な考察記事とかリポストしてくれるんじゃないだろうか。


・妹

「3限の授業出たくなくてサボろうかなと一瞬思ったけど、頑張って教室に行って、どうせなら積極的に授業受けようと思ったら最後まで頑張れたので自分の成長を感じた


……いいね100回押したい。


大学に入ったばかりで、毎日半泣きで課題に追われる妹の姿を見ているので、これには家族全員から「いいね〜〜」の声が。何よりこうして自分の頑張りを認めてあげられるのも成長だよね。



・幸せなコミュニケーションツール

いかがだっただろうか。

当然読者の皆様は筆者の家族などご存知ないと思うが、それでもそれぞれの性格が垣間見える内容ではないか。「いいね」から透けて見える相手の人間性に ほっこりする感覚は、まさにXの「いいね欄」を見たときと同じものだった。

加えて、やはり対面だと思いやりの気持ちが働くのか、「ネガティブなことでもいい」と指定したにもかかわらず 挙がったのはどれもポジティブな内容。みんなの「いいね」にみんなが共感し合い、結果として夕食の場がものすごく優しい空気に包まれた。

家族をちょっと深く理解できるうえ、みんなで優しい気持ちになれる この企画。家族のコミュニケーション手段として とても良いと思うので、皆様も試してみてほしい。


執筆:砂付近
Photo:Rocketnews24.