兵庫で “麺” と言えば揖保乃糸、つまり素麺やえきそばが有名だ。麺に力を入れている県とお見受けするが、兵庫県らしいうどんもあるかなと、探していたところで発見。

『ぼっかけうどん』があるではないか。名前は聞いたことがあるが、そう言えば食べたことがない。初ぼっかけうどん、いってみますか! 


・もとは、まかないの汁もの

ぼっかけうどんは、兵庫県は神戸市長田区あたりの名物だ。「ぼっかけ」は牛スジ肉とコンニャクを醤油やみりんなどを使った出汁で甘辛く煮込んだもので、地元では「すじこん」と呼んだりもするらしい。

ある時フッと現れたイメージだが、どのようにして生まれたのだろうか。長田区、新長田地区のまちづくりに取り組む、新長田まちづくり株式会社に問い合わせてみた。

『神戸・新長田 鉄板こなもんMAP スピンオフ』冊子にも載っている、と前置きをしつつ、


「午前中で仕事が終わる食肉市場では販売せずに廃棄していたスジ肉や切れ端などを大鍋で炊き薄口醤油で味付けし、まかないの汁ものとして食べられていた。

それをご飯やうどんなどにぶっかける者が現れたのが “ぼっかけ” の発祥」


と教えてくださった。長田区には大正8年(1919)に、食肉を加工する神戸屠場(現市中央卸売市場西部市場)ができたのだという。

もともと肉を解体し加工する場所があったからこそ、生まれたもののようだ。今で言うSDGs(エスディージーズ)に配慮したメニューのようでである。



・牛スジの旨味が出汁に溶け出ている

ルーツを理解したところで、ぼっかけうどんを食べてみるとしよう。地下鉄海岸線和田岬駅から歩いてすぐの、「立ち食いうどん 味沢」にお邪魔してみた。


看板商品はもちろんぼっかけうどん(税込450円)。厨房を覗くと、たくさんの牛スジ肉が積まれている。うどんのほか、ぼっかけラーメンやぼっかけそば、ぼっかけ丼などもあるらしい。

まずはスタンダードに、うどんをいただくとしよう。しっかり効いた出汁に、柔らか目の麺、そして甘辛い牛スジとネギがたっぷりだ。見るからに美味しそうである。

食べてみると、やはり。牛スジそのものも申し分ない美味しさだが、そのコクが出汁に溶け出して、さらに旨味がアップしている。麺との相性も悪いはずがなく、完璧だ。

思わず出汁をすべて飲み干し、あっという間に完食してしまった。冷凍されたぼっかけの販売もあり持ち帰ることができたので、ひと袋購入。家に帰り温めて食べると、これもまた美味しかった。

そしてその後、同店以外のぼっかけうどんもいくつか食べてみたが、それぞれに特徴がありいずれも美味。どこもそもそも牛スジの質も良いのだろうなあ、と感心する次第である。

数ある兵庫名物だが、うどん食べたいなという気分の時は、神戸市あたりで『ぼっかけうどん』を探してみると良いだろう。記者もまだ見ぬぼっかけうどんとの出会いを楽しみに、また神戸の街を歩く予定だ。

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.