米国キャンピングトレーラー文化の代名詞、AIRSTREAM(エアストリーム)。クルマに興味がなくとも、ハリウッド映画などに出てくる「シルバーに輝く宇宙船のようなトレーラー」と言えばピンとくるだろう。

日本でも見ることができるが、乗り物というよりは店舗や宿泊施設として、あるいは個人宅の離れとして目撃することの方が多いかもしれない。なにせクイーンベッドを搭載してもまだ余裕がある多ルームモデルや、高級家具で囲まれたハイエンドモデルなど、日本の車検は通らないような桁外れのクルマがごろごろあるのだ。

ところが、ジャパンキャンピングカーショー2024では、国内の公道をラクラク引けそうなマイクロサイズのトレーラーを発見。小さなボディの中に夢とロマンが詰まっていた!


・エアストリーム「Basecamp 16X」

タマゴ型のユニークなシルエットに、エアストリームらしい近未来的なシルバーのボディ。全長4880mm×全幅2190mm×全高2760mmという商用バンと変わらないサイズ。その名も「Basecamp(ベースキャンプ)16X」だ。

ボディ側面にエントランスがあるほか、リアにも荷物の出し入れに便利な開口部がある。

内部はまさに宇宙船のような小空間。流線型のボディとアルミの金属感がかっこいい。

リア方向には対座ダイネットにもなるベッドが。スリムに見えるが車幅は2190mmあるので、横方向にシュラフを設置できるのがわかる。大人2名が就寝可能。



オプションにはなるが、ルーフエアコンの搭載も可能で、室温調整に対応する。

余談だが、寝具はシュラフが圧倒的に似合う。高級キャンピングカー市場ではスプリング入りのマットレスやホテルライクな読書灯など、いかに住宅のベッドルームに近づけるか、というひとつのチャレンジの方向性があるけれども、このクルマでは真逆。

自分だけの秘密基地のような空間で、あえてシュラフを敷いて寝る! 寝転んだまま晩酌したり、クラフトしたり、本を読んだりして、気が済んだらそのまま寝落ち。最高だ。

シート下収納を除いて、キャビネットのような家具はないため、収納は壁面をフル活用。吊るす、浮かせる、ぶら下げるなどしてギアの定位置を決めていく。この無造作感もまた、たまらない。

ワイルドな野営を連想させる趣味全開のディスプレイが、Basecampのコンセプトを如実に示している。

居室の無骨さに対し、反対側を振り返ると一転して本格的なギャレー(キッチン)が広がることに驚かされる。

電子レンジ(オプション)や冷蔵庫がビルトインされ、LPボンベで使う2口コンロも完備。これはガチで “毎日自炊して暮らす” 用のキッチンだ。

この辺りも国産キャンピングカーとはだいぶ様子が違う。全国どこにでもコンビニやファストフード店がある日本。普通に旅していると民家や商店から何百キロも離れてしまう、なんて経験はそうそうないし、そもそも貴重な休暇を使っているのだから土地の名店を訪ねたりもしたい。



あくまで旅先では外食やテイクアウトがメインで、車内キッチンは「予備的な設備」というユーザーは多いだろう。構造要件を満たすためだけに存在しているような、実用的ではないレイアウトも多い。

しかしこの広い作業台ならボウルもまな板も広げられるし、本当に料理をすることが想定されている。

本場では何週間も旅したり、到着地のRVパークに逗留したりするのだろう。欧米にはキャンピングカー(モーターホーム)が長期滞在できるRVパークが至るところにあるという。

ベッドルームとギャレーとのあいだには気になる扉が。


飛行機のトイレのような特徴的なドアを開けると……


トイレルーム兼シャワールームが登場! 給水79L、排水90Lの大型タンクを搭載し、ガス式温水シャワーを可能としている。

部屋全体が防水仕様になっていて、頭からシャワーをかぶることが可能。

壁には海外ホテルのバスルームなどによくある、物干しロープも発見。本当に「生活する」ことが考えられている。

すべてが見せかけだけの “間に合わせ” ではなく、本当に使うことを想定して搭載された本格設備の数々。



日本のキャンピングカーでは「あれもこれも付いてます!」という宣伝文句に踊らされがちなのだが、実用性があるか、という視点がついつい疎か(おろそか)になってしまうことを反省する。

エアストリームのデザインのルーツは、西部開拓時代の幌馬車にあるという。厳しい気候や長旅に耐えうる強度を誇り、また永続的に乗り続けられるよう、後から内装を簡単にリフォームできる構造を持つ。

趣味に生きる人の夢とロマンを詰めこんだ、冒険のための「一生もの」のトレーラー。これぞ究極のバンライフである。


参考リンク:エアストリームジャパン
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.