「かたやき」というお菓子をご存じだろうか。

かつて三重県伊賀市に潜んでいた 忍者の非常食として生まれた食べ物で、一説には日本一硬いせんべいともいわれている。

そんなかたやきに “柔らかいバージョン” が新登場したらしいのだが……それって大丈夫なん? アイデンティティ崩壊してない??

・柔らかいかたやき

やってきたのは三重県伊賀市、名阪国道沿いにある伊賀ドライブイン。

お目当ての品は土産物店のかたやきコーナーにあった。

「生かたやき」税込660円。


ちなみに「かたやきコーナー」と言っただけあって、かたやきは多くの地元製菓店が作る伊賀土産のスタープレイヤー。伊賀ドライブインでは棚ひとつ丸ごとをかたやきが埋めているほどだ。


右も左もかたやきに囲まれながら、生かたやきは完全に浮いていた。

そりゃそうだ。本来ここに柔らかいお菓子があってはいけないし、何よりたった5文字の商品名の中で「生」と「かたやき」っていう矛盾をはらんでいるんだもの。



・かたやきを食べ比べてみよう

今回生かたやきの食レポをお送りするにあたって、皆さんには通常版のかたやきも知っておいてもらいたい。


ってことで、まずはお手本として通常版の硬さをお見せしよう。

かたやきを買うと、多くの場合付属しているのがこちらの木づち。小さくて攻撃力も低いため 実は役に立つか微妙なのだが、無いよりはマシだ。



かたやきは水分が極端に少ないため、手に持つと軽石のように軽くてカリカリとした手触り。


木づちで叩いて割ってみると……


えっ、ちょっとコレ本気で割れないっ!


あまり大人を舐めるなよ!!


ぬあぁぁ~っ!!!!



断面はミッチリと詰まっていて、ところどころにカラメルのような鈍い光を感じる。


木づちで叩いてようやく割れるほどと思うと仕方ないのだが、かじってみても歯が立たない。

一部分に歯が食い込むことはあっても、ただ「ボリッ」と大きな音を立てながら口の中で細かいクズが散るだけなのであった。

素朴な甘さがあって美味しいんだけど、そんなことどうでもよくって今にも歯が割れてしまいそう。メーカーによると「口の中で唾液をしみ込ませながら食べてください」とのことである。



──ここまでで十分 かたやきの威力が伝わったと思うので、ここからは生かたやきを見ていこう。

生かたやきはかたやきよりも二回りぐらい大きく、ずっしりとした質量がある(ただし、かたやきはメーカーによってサイズが異なります)。


手に持つとビート板(水泳の授業で使ったアレだ)ぐらいの弾力のある硬さで、パサパサとした質感には意外と水分が感じられない。

木づちで叩いて確かめるまでもなく、歯で噛み切れるし手でちぎれる確信を持った。


躊躇(ちゅうちょ)なく口に運ぶ。

ハグッとひと噛みで生地が裂け、ひと口分が切り取られた。


通常かたやきの分類が保存食だったのに対し、生かたやきは和菓子と言ってよいだろう。

というのも、生かたやきには乾燥したこしあんが入っている。

例えるならば、お饅頭をつぶして焼いて乾燥させた感じ。

なんて書くとマズそうに聞こえるかもしれないが、小麦粉と砂糖と小豆の組み合わせは約束された美味しさを持っている。



もとが忍者の非常食だっただけあって、日持ちは1カ月ほどと普通の饅頭よりも大幅に長く、常温保存可能でそれなりに美味しい。

持ち歩きが必須な時、例えば登山用の行動食なんかにピッタリなのかもしれないね。

ただ……食べて改めて実感したのは、「やっぱりアイデンティティは崩壊してるよなぁ。柔らかいし」

【完】

執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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