長崎でイオンのアイスケースを見た瞬間、私は「えっ!」と小さく叫んでしまった。

東京では「幻」といわれる「ある商品」が大量にあったからだ。いつもなら九州のご当地アイス、ブラックモンブランやミルクックを真っ先に手に取るのだが……私は真っ先にそれをむんずと掴んでレジへと直行した。

それは井村屋の「こしあんバー」。我らがロケットニュースの佐藤記者が血眼になって探し、井村屋に問い合わせても見つけられなかったあの商品が、長崎のスーパーで投げ売りされていたのだ。

・マジで見つからなかった

2023年8月28日から、「あずきバー」でおなじみの井村屋が「こしあん派のみなさんおまたせしました」と満を持して発売した「こしあんバー」

かくいう私もこしあん派であり、「こしあんバー」を血眼になって探し回ったハンターのひとりである。

近所のセブン、まいばすけっと、こんなとこにいるはずもないのに……と発売日からずっとアイスケースを見て回ったのだが、本気で見つからなかった。

それが、長崎のイオンでは山と積まれ、1本68円の激安価格で投げ売られているのだ。

かつて、江戸から明治の時代に日本画が二束三文で売られ、国宝級の絵画がアメリカやイギリスに大量に渡ったことをふと思い出した。ところ変われば、評価も変わるってやつなのか?



・口にしたお宝

というわけで、お宝の味をば。これが憧れのこしあんバー。

冷凍ケースから出したての「あずきバー」は、釘をも打てる硬さであり、強度を測ったらサファイアよりも硬かったという逸話もある。

「こしあんバー」が食べごろになるまで15分ほど放置して、断面をカットしたらこんな感じ。

うむ、とってもこしあん。薄鼠色の上品な色合いが地味……じゃなかった、粋である。

ドキドキしながらひとくち食べてみると……上品な甘さと、アイスらしからぬあんこそのものって感じの食感が口いっぱいに広がった。甘みを引き立てるために、ほのか〜に塩気が入ってるような気もする。

それにしても、これはなにかの味に似ている……「あ、水ようかんだ」

まさに水ようかんのような、あんこのさっぱり感だ! あずきの粒が入っていないぶん、シンプルだわ……。こしあん派の私はすごく好きだけど、なんで井村屋がこれまで「こしあんバー」を作らなかったのかも、ちょっと納得してしまうような味である。あずきの粒がないと、シンプルすぎてちょっぴり物足りないのね。



・なんで九州に「こしあんバー」があるのか考えてみた

さて、気になるのがなんで東京では全然見つからない「こしあんバー」が九州では普通に売ってるのかって話である。食文化などの観点から、いろいろと推察してみた。


① 九州は先行販売が多いから説

昔からよく言われる話だが、九州は全国に先駆けて新製品の実験販売が多いらしい。たしかに帰省すると、東京よりも早くお菓子の新製品が発売されていることが多い。これはテストマーケティングといって、ここでの売れ行きを見て、商品の生産数などを調整するそうな。

「こしあんバー」も地方でテストマーケティングをしてから、今後、満を持して関東で大々的に売り出すパターンかもしれない……という説。


② 西日本はつぶあん好きが多いから説

さまざまな調査によると、つぶあん派、こしあん派にも地域性があるそうな。静岡新聞の記事によるとセブンイレブンの「あんまん」の中身は愛知と静岡の県境で、西日本はつぶあん、東日本はこしあんになっているとのこと。

九州は西日本なので、つぶあんが好まれた結果、「こしあんバー」が売れ残った可能性がある……という説。


③ 九州は「あいすまんじゅう」文化圏だから説

九州では同じ あんこものアイス でも、九州のアイスメーカー丸永製菓の「あいすまんじゅう」がアイスケースに置かれている確率が高いのだ。

九州ではさっぱりした井村屋の「あずきバー」よりも、濃厚な甘さの丸永製菓「あいすまんじゅう」が好まれている可能性がある。

実際、甘いもの好きの私も「あいまん派」である。あいまんが人気なので、「こしあんバー」は九州で苦戦を強いられた可能性がある、という説。


……と、いろいろ説を考えてみたが、個人的に有力なのは①テスト販売説 ではないかと思う。話題になったとはいえ、グルメライターたちが足を某にしても東京で「こしあんバー」を見つけられなかった……というのは不自然。今後、東京のスーパーでも安定して供給される可能性があると思いたい。

というわけで、関東在住のこしあん派のみなさん、諦めずに首を長くして待ちましょう……。


参考リンク:井村屋「プレスリリース」
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.