群馬県大泉町は「リトルブラジル」と言われており、町人口の約20パーセントが外国人で、そのうち半数がブラジル人が占めているという。

実は神奈川県横浜市の鶴見区もまた、南米人の在住者が多く占めている。その割合は地域人口の4割というから、大泉町よりも比率が高い

そんな鶴見区には美味しいブラジル料理を食べられるお店が存在し、「ユリショップ」もそのうちの1つ。お店を訪ねて、人生で初めて「パステル」なるブラジルフードを食べてみたら激ウマ! 可能ならメニューを全制覇したくなっちゃったよ!

・南米からの移住者

大泉町と鶴見区はいずれも工業地域である。バブル期(1990年代)に製造業を中心に人手不足が深刻化し、その頃「出入国管理および難民認定法」が改正されて、日系外国人が日本に移り住むようになった。日本への「出稼ぎ」で来日した人々が、不足した労働力の担い手となり、これらの地域に自国の文化を根付かせたのだ。


ちなみに鶴見には、南米と沖縄の文化が定着している。というのも、鶴見は大正時代に大規模な埋め立て事業が行われており、その頃に沖縄出身の労働者が定住するようになったそうだ。沖縄出身で南米に移住した人々の子孫である日系人が、沖縄出身者を頼って鶴見に移住するケースも多くあり、南米と沖縄の文化をそれぞれ今に継承しているという。

海外からの移住者が多く生活していることから、多文化共生の考えが進んでいることも、2つの街の特徴と言えるだろう。



・品数多い!

さてお店は、JR鶴見駅から徒歩で約20分の「仲通り商店街」にある。この地域は別名「沖縄南米タウン」とも呼ばれており、飲食店や食品・生活雑貨を扱うお店が点在している。ユリショップも同じく、店内に食品や雑貨を取り揃えており、奥に食堂を併設している。


販売商品はほとんどがポルトガル語で表記されている。商品自体には日本語表記があるものの、見慣れない品が数多く並んでいるので、まるで外国のお店に入った気分だ。奥の食堂はフードコート方式で、先に注文・あとで会計。料理の受け取りとお水はセルフサービスになっている。

何を食べよう。あまり南米の料理は知らないんだけどなあ。とりあえず写真を見て選ぶとしようか。え~と、これは「サルガード」と呼ばれる揚げパンみたいなものらしい。その下にはテイクアウトのお弁当もあるな。


これは「パステル(パステウ)」。聞いたことあるぞ! 揚げクレープみたいなヤツだったはず。


その場で決められなかったので、席についてメニューを見ると……、品数多い! メニューの最初にあるのがセットメニュー、定食みたいなものかな。ライス・フェイジョン(豆の煮込み)・フライドポテト・サラダが付いている。


肉がメインなんだけど、魚のカテゴリーにティラピアやナマズもあるな。ナマズって食ったことがないかも。タンパクな味がするのかな? これはまた次の機会に頂くとしよう。


揚げ物もいろいろあるね。どれも美味そうだなあ、こんなに美味しそうなものがたくさんあると知っていたら、ご飯を食わずに来たのに。悔しい、全部食いたいのに今日は無理や……


まだあるよ、ハンバーガーもサンドイッチも全部美味そう。絶対美味いだろ、コレ!



今の自分の腹具合でもっとも食えそうなものはパステルと判断した。「スペシャルパステル」(税込600円)と「サトウキビジュース」(カルド・デ・カナ:税込550円)を頼んでしばし待つことに。

呼び出すブザーが鳴るのを静かに待った。


待っている間にお客さんの様子をうかがうと、利用している人たちはみんな常連さんと見えて、慣れた調子でお店の人に注文を伝えていた。このお店が街の食堂として、愛されていることがよくわかる

スピーカーから流れるサルサ調の軽快な音楽を聞いていると、ここが日本であることを忘れてしまいそう。聞こえてくる会話もポルトガル語が中心で、何を話しているのか私にはわからない。まるで海外旅行にでも来た気分である。



・人生初のパステル

ブザーが鳴ったので料理を受け取る。コレがパステルとサトウキビジュースです


喉が乾いたので、サトウキビジュースを頂くとしよう。絞り過ぎちゃったのかな、ジョッキ + コップで出してくれた


これ、ウマ! サトウキビにレモンを絞っただけのジュースなのに、悶絶するほど美味しい! ミネラルやビタミンも入っているのかも。汗で失った何かが猛烈な勢いで身体に吸収されている気がするぞ。シミるわ~!


そしてパステル。思ってたよりもデカいんだけど、そこそこお腹いっぱいなのに食えるかな~……


パステルとは、小麦粉を練って薄く伸ばした生地に具材を挟んで揚げたもの。スペシャルパステルの中身は、挽き肉・チーズ・ソーセージ・ゆで卵・オリーブである。


これも激ウマ! ほどよく塩気のきいた生地と、とろけるチーズの相性がとても良い。ザクザクとした食べ応えが心地よく、オリーブの酸味が食欲をかき立てて、アッと言う間に全部平らげてしまった。ブラジルではおやつとして親しまれているようだが、たしかに軽く食べられるファストフードに打ってつけだ。


さっきまで完食は難しいか? と心配していたのに、おかわりしたいくらいだ。これウメえ、近所に1軒専門店が欲しいレベル。せめて新大久保あたりにでも1軒できないかなあ。

それにしても、なぜメシを食ってここに来てしまったのか? 完全な空腹で来店するべきだった。次に訪問する際には、前日からお腹を空っぽにして、コンディションを整えておきたい。そして、いずれメニュ―の全制覇を成し遂げたいと心に誓った……


・お土産にお菓子

せっかくなのでお店でお土産にお菓子を2つ買ってみた。1つは「BISCOITO DE POLVILHO CEBOLA」(右:たまねぎ味のビスケット:税別400円)。それと「BOLACHA DE NATA COM GOIABADA」(左:ミルクグアバビスケット:税別470円)である。


たまねぎビスケットは、いわゆるオニオンサワー味で生地はサックサク。ビスケットというよりスナック菓子のような歯ごたえ。ビールのつまみに良さそう。


ミルクグアバビスケットはココナッツの風味がきいてて、コーヒー・紅茶によく合いそうである。

そんなわけで鶴見区は不思議な魅力にあふれた街。本格的なブラジル料理を味わいたいなら、鶴見へGO!


・今回訪問した店舗の情報

店名 ユリショップ
住所 神奈川県横浜市鶴見区仲通2-60-15
時間 12:00~22:00
定休日 なし

参考リンク:大泉町観光協会、横浜市(PDF)、鶴見国際交流ラウンジ
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24