失恋はつらい。最後に失恋した時は本気で死ぬかと思った。相手のことは忘れても、あの暗く鬱々とした日々を忘れることは生涯ないだろう。

最近イケメン見つけたけど、失恋するのが怖すぎて行動に移せない自分がいるよね。大人になるってこういうこと。

ある意味で少子化の要因ともいえる失恋の破壊力であるが、そんな恐怖にあえて正面から対峙している人たちがいるのをご存知だろうか? 私、他人の失恋話聞くだけで泣いちゃうんスけど……思い切ってちょっとだけ対峙してみることにしたぞ。

・クロアチアにて

『Museum of Broken Relationships』なる施設の存在を知ったのは、滞在先のクロアチア(ザグレブ)で観光マップを眺めていたとき。直訳すると「壊れた関係の博物館」だが、オシャレに「失恋博物館」と読ませるらしい。

何か気づきを得られるかもしれないと踏んだ私は、ザグレブ中心部から徒歩で博物館を目指した。

道中には有名な聖マルコ教会もあって見応え満点。ちょっと坂道が急だけど、歩く価値アリ。

坂を登りきった先が失恋博物館。けっこう混み合っていて、30分後なら予約が取れると言われた。

入館料7ユーロ(約1050円)払って手渡されたチケットには「forevermore(永遠に)」と書かれていたが……

開くと「nevermore(2度と無い)」に変化する仕掛けなのだった。シャレとんな〜。



・展示品は世界から寄贈

30分たって博物館へ戻る。

日本語のガイドブックを手渡された。ありがたい。

物販コーナーが充実していて、併設されたカフェもある。このTシャツを買わなかったことを今でも後悔している。

客層は女性が中心。館内には一見ガラクタのようなものが多数展示されているのだが、実はそれらは全て、世界中から集められた “誰かの失恋にまつわる思い出の品” だ。それをガイドブックに書かれた説明文と照らしながら館内を巡るのである。

中でも印象的だった展示品をいくつかご紹介しておこう。『私の初恋の人の27年前のかさぶた』と題された展示品は、なんと本物のかさぶた。寄贈したオーストリア人の女性は、初恋の人がバイク事故に遭ったことに大きなショックを受けたのだそうな。

それ以降、愛するものを失うかもしれない不安にさいなまれた女性は、彼のかさぶたを取っておくようになった。もしかすると将来、彼のクローンを作れるように……ってイカれてるけど私もそれちょっと考えたことあるぅぅぅうううう!!!!!

日本からの寄贈品もある。『父の羽織』と題された古い羽織は寄贈者の父親が結婚して以来ずっと手放さなかったもので、彼の死後は家族が大切にしていた、とのことだ。それを失恋と呼ぶかは個人の主観によるが、なんとも日本っぽい綺麗なお話だよね。

対してアメリカ人女性が寄贈した『父の結婚式の壊れたビデオ』はヤバい。父親が不倫したことで家庭がメチャクチャになった女性は父親の死後、なんと彼の結婚式(不倫相手との)のビデオを発見してしまう。そして妹と共謀し、車で、ライフルで、斧で、そのテープをズタズタに破壊した……という狂気の残骸だ。登場人物全員クレイジーすぎるだろ。



・そして気づきを得る

帰り道、私はこの日の空のように晴れやかな気持ちでザグレブの街を見下ろした。過去の失恋の記憶に塩をぬる覚悟で向かった失恋記念館だが、実際は失恋から立ち直り前を向こうとする人たちの決意が詰まった空間であった。

そもそも恋をしなけりゃ失恋しないワケで、つまり人は前を向いて生きてるからこそ失恋するのであって、要するに幸福にはリスクが伴うのだが、じゃあリスクが怖いから一生 “中の下” でいいのかっつーと、そんな人生はやっぱ嫌だな、と思うワケで……。

うまく言えないけど、とりあえず日本に帰ったら恋しよ☆ と誓ったザグレブの昼下がりなのでありました。

ちなみにクロアチアの隣国チェコには『大人のオモチャ博物館』という、とても当サイトでは扱えない内容の博物館があるぞ。世界はただただ広い。みんなも旅先でGoogleマップに “museum” と入力してみよう!


執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.