北海道旭川と言えばラーメン。あんまり詳しくない私(中澤)でもそういうイメージがあるので、旭川に来るたびにラーメン屋に行っている。まだ、『蜂屋』と『天金』しか行ったことないけど、2店舗とも素朴な醤油ラーメンなのに他と違う独自のコクがあった。旭川ラーメンと言えば醤油ラーメンだよな。

と思いきや、四川味噌ラーメンが名物の名店があるらしい。人呼んで「もうひとつの旭川ラーメン」。その名も『春夏冬』である。晩飯時に歩いていたらちょうどオープンしていたので入ってみた。

・地元民が行列を作る店

中はカウンター主体で定員10人くらいかな? そんなに広くはないが、もろ地元民が通う店という感じの雰囲気は旅行者的にはむしろ嬉しい。

ラーメンは四川味噌ラーメン(税込み950円)以外に醤油ラーメン(税込み900円)と塩ラーメン(税込み900円)もあるが、まずは四川味噌ラーメンを食べてみたい。普通・中辛・激辛と辛さも選べるけど、とりあえず普通で、トッピングにバター(+100円)をつけてみた。

・バランスが良い

厨房は若いお兄さんが回している感じ。ニッチな雰囲気と「四川」という言葉から本場的な尖った味かと思いきや、食べてみると意外に現代的でバランスが良い味だ。特に本場至上主義でもないため、丸さを持っていながら味噌もちゃんと濃いスープがとても美味しかった。

そこで「自慢本格手作り」とメニューに記載されている餃子(税込み650円)も注文してみると、こちらもかなり好き。私は肉汁系があまり好みではないため、いわゆる餃子マニアみたいな人がオススメしている餃子はいまいちに感じることが多い。だが、ここの餃子は肉汁で派手さを出しているわけではなく、餡の味がしっかり感じられて皮もモチッとしているのだ。

何より羽根が大きく、口に放り込むとパリパリとモチモチと餡の味がハーモニーを奏でる。ラーメンも餃子も素朴ではあるのだが、また食べたくなる味だ。

名店と言われるのも分かる気がする。目からウロコの感動ではなく、生活に密着した癒し。それでいてやっぱりちょっとした感動もあるコスパの良さが心に残った。


──だがしかし、プロに言わせると、「それは春夏冬の真の姿ではない」という


・常連の話

そんな話をしてくれたのは旭川のライブハウス『モスキート』併設の酒場でカレーを売っていたCokeさんとバーカウンターをしていたおくちょうさん。ライブハウスの酒場で働くだけではなく、ヒップホップグループ・36CHAMBERSとしても活動している2人はただの地元民ではない。言わば、旭川の夜のプロと言える。

もちろん、『春夏冬』についても常連なわけだが、そんな2人が言うには「春夏冬は明け方に真の姿を現す」とのこと。一体どういうことなのか?


Cokeさん「春夏冬は、お兄ちゃんが作ってる時とババアが作ってる時があって、お兄ちゃんの時はラーメンの完成度が高いんスよね。一方で、ババアの時は味のバランスが悪い。味が濃すぎたりバラツキが凄い。図形で言うなら、お兄ちゃんは円でババアはひし形っス!」

おくちょうさん「しかも、普通盛り頼んでるのに、ラーメンがやたら大盛になるパターンがあったりするっス。サービスとか言って。ババアは自己判断で様々なサービスをつけてきます。餃子が2倍になったり」

Cokeさん・おくちょうさん「そのババアが回してることが比較的多いのが明け方なんです!」


──いや、なんであえてその時狙うんですか! 味がひし形なんですよね? 各方面に尖り散らしてるじゃないですか。


Cokeさん「それが慣れると、ババアの味じゃないと物足りなくなってくるんスよね」


おくちょうさん「あのサービスのむちゃくちゃさも春夏冬って感じがして良いよな」


Cokeさん「あのババアなしに春夏冬は語れない」


Cokeさん・おくちょうさんババアにはこれからも頑張ってもらいたいっス!」

──とのこと。ババアと連呼しすぎだが、それも愛ゆえかと感じたためそのまま記載させていただいた。常連のみが知るその味は確かに真の姿と言えなくもないだろう。

というわけで、王道の名店かと思いきや、破天荒な側面も持ち合わせているらしい春夏冬。もうひとつの旭川ラーメンには、さらにもうひとつの顔があるのかもしれない。信じるか信じないかはあなた次第。

・今回紹介した店舗の情報

店名 春夏冬
住所 北海道旭川市三条通6
営業時間 20:30~翌4:00
定休日 不定休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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