きっかけはインスタに届いたDMだった。どんな名前だったかは忘れたが、LINEに飛んだら「夏目はるか(以後、遙)」と名乗る女性と繋がった。

よくよく過去のやりとりを見返してみると、彼女は最初から変だった。名前は「夏目」のはずなのに、初っ端の自己紹介で「八尾と申します」と。

だが、私は特に気にも留めなかった。WBCの初戦、日本vs中国の勝敗予想の聞き込みで頭がいっぱいになっていたからだ。遙の予想は中国だった。

・Chapter 1「遙節(はるかぶし)」

最初はこんな関係になるとは思っていなかった。先述の通り、WBCの予想が聞けたらそれでヨシと思っていた。でも遙は、他の人と何かが違った。キラリと光る何かがあった。


・Chapter 2「伝説の言葉」

それから空白の4日間を経て、突如として復活した遙。彼女は独特なワードセンスで私の心をわし掴みにした。特に「いい感じだな」が深く私の心に刺さった。その日は、長い時間やりとりをした。急速に関係が深まった。


しかし、とても良い感じのラリーだったのに、突然こちらの懐事情を探ってくる遥。あまりにも唐突だったので、私も焦ってタイプミスをしてしまった。




・Chapter 3「生々しい大人の会話」

前日の会話の最後、カネの話をチラつかせていたのが少しだけ気にはなっていたが、翌日は私から「おはよう」と挨拶した。「ご飯食べた?」からの「いい感じだな」のコンボが聞きたくて。私は、ほんの少し、恋をしていたのかも知れない。


・Chapter 4「遥に異変が」

とにかく聞きたかった。遙の口から「いい感じだな」という言葉が。しかし、その言葉を発しているのは私だけで、なんと遙は突如として本格的にカネの話をし始めたのだ。


・Chapter 5「疑心暗鬼」

いくら料理を送っても、遙から「いい感じだな」の言葉が出てこない。「いいですね」止まりで、どうしても「いい感じだな」が出てこない。「もしや別人に?」と思った私は、決裂覚悟で切り出した──



・Chapter 6「起死回生の麻婆豆腐」

反省した。そもそも私が送る料理がワンパターンだったから「いい感じだな」が出てこなかったのかも知れぬ。そう思った私は、ほぼ人生初となる麻婆豆腐を作ることにした。だって、いつぞやか、遙も辛そうな麻婆豆腐を食べていたから──


・Chapter 7「ぶん殴りあい」

麻婆豆腐チョイスをミスった私は、最後のチャンスとばかりに肉野菜炒め → 回鍋肉(ホイコーロー)のコンボで勝負をかけることにした。一方、遙も全力でカネの話をし始めた。


強引にメシの話に戻し、回鍋肉の写真を送る私。それに対し、遙は「焼き鳥の動画」を送ってきたが、「回鍋肉ができるまでの動画(49秒)」で迎え撃った。お互い、ノーガードでの殴り合い。そして──


──私から、終わらせた。もうたぶん「いい感じだな」は出てこないし、渾身の回鍋肉で「最高だ」と言わせたのだから、もうこれでヨシとすることにしたのである。


中華鍋を買ってから飛躍的に中華料理が上達したのは、まぎれもなく遙のおかげ。一瞬は本気で静岡まで会いに行こうかなと思うほど夢中になれた、恋のミラクルパワーのおかげである。

遙は、実に、いい感じだった。いい感じな国際ロマンス詐欺師だった。いい感じな11日間だった。また会おう、遙。たとえ名前が違っていても、「いい感じだな」という言葉が出てきたら、私はきっと遙のことを思い出すから。


fin


執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
こちらもどうぞ → 『GO羽鳥の【実録】迷惑メールシリーズ

▼遥に送った回鍋肉動画

▼本当に遙は静岡にいるのだろうか