駅弁は良いものだ。できることならば北から南まで、存在する駅弁をあまねく味わいたいところである。しかしながらなかなかどうして、手が届かないものだ。

例えば西で暮らす記者にとって、東のシウマイ弁当(崎陽軒)や峠の釜めし(おぎのや)などがそう。食べてみたいと思いながら、どれくらいの年数が過ぎたことだろう。

そんなある日のこと、ひょんなことから峠の釜めし味のポップコーンに相まみえる。本物の味を知らない若輩者であるが、まずはこちらのポップコーン片手に釜めしに思いを馳(は)せてみることにしたい。


・100円ショップで見かける

おぎのやの峠の釜めしは、1958年に信越本線横川駅(群馬県)で発売されたことにはじまる。新幹線開業に伴い信越線が廃線した後は、サービスエリアなどに販路を拡大しているらしい。

釜めしの中身は季節により具材が変わるといい、その美味しさは名高い。また器の釜容器は、再利用できるそうだ。

これまでには『鬼滅の刃』や『るろうに剣心』『エヴァンゲリオン』など、有名作品とのコラボも多数で都度、中身や器に工夫が凝らされていると聞く。

お目にすらかかったことのないそんな釜めしへの憧れは高まるばかり。販売店へと買いに行けばよいのだが、行動力のない記者に、そうした機会はめぐってこないまま月日が過ぎた。

思いだけがつのる中、出会ったのがマイクポップコーン 峠の釜めし味である。友人が100円均一ショップで見かけ、駅弁好きの記者にと持って来てくれたのだ。


・いつの日か本物に出会えることを夢見て

検索してみると、どうやら2023年3月現在、こちらのポップコーンの生産は終了しているらしい。在庫がなくなり次第売り場から姿を消すので、どこかに残っている可能性はあるが、記者がめぐり会えたのは運が良いと言えるだろう。

2022年に発売65周年のマイクポップコーンと、峠の釜めし創案65周年を迎える株式会社荻野屋との、記念コラボ商品だ。袋を開けると、見た目はよくある美味しそうなポップコーン。


かすかにゴボウを感じる香ばしいにおいではあるが、突き抜けて特徴的なものではないように思う。口に入れると、馴染み深いコーンの味わい。そして程よい塩気と甘みと、出汁のような旨味。


なるほど、これが峠の釜めし味か……。足を踏み入れたことのないが故の、ぼやっとした群馬県像が、ほんの少しばかり見えてくるような感覚に陥る。

より深く峠の釜めしを感じるべく、ふたつみっつとポップコーンに手を伸ばす。次第に米っぽさもとらえ、峠の釜めしの端くらいはつかめたように思う。

なにが正解かはわからないが、おそらくさまざまな具材がそれぞれに主張しながらも、香ばしくまとめ上げた一品ではないかと想像する。


憧れ続けた峠の釜めしに、ほんのわずかだけでも近づけたようで嬉しい。ポップコーンだけでもこの美味しさだ、リアルな釜めしの美味しさはいかほどだろうか。

食べてみたい欲がなんなら以前よりも増してしまった気がするが、それもまた良いだろう。いつの日か本物に出会えることを夢見て、残りの「マイクポップコーン 峠の釜めし味」をかみしめることにする。

参考リンク:マイクポップコーン 峠の釜めし味
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼いつの日か食べてみたいな峠の釜めし

▼ポップコーンはほのかにゴボウの香りがしたりと、美味しかった